_______________ドーン!
_______________ドーン!
夜空いっぱいに広がる花火は、今、中也さんの
異能によりどの観客より近い場所で観ている。
だが、きっと明日には宙に浮かぶ二人の人間のことでニュースになるだろう。幸い私達は逆光により顔も見えなければ距離的にも誰か判られることは無いから大丈夫だとは思うが・・・
考えながらも思った言葉を其の儘口に出す。
「綺麗ですね」
「嗚呼・・・なァ、」
横抱きにされている状態なので首だけ向けた。
彼の表情が花火によって照らされる。
「何ですか?」
「花火、来年も一緒に観ようぜ」
_______________ドーンッ
「来年も再来年もその先も一緒に観るのは・・・
俺は手前がいい。手前じゃ無きゃ御免だ。」
駄目か?と何とも言えない表情で聞いて来る彼。
_______________この人本当に判ってないんだから。
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ぶつけてみた本音。
実際伝えてみるとその後の表情は、何が正しいのか判らなくなり、俺は不器用な微笑みを貼り付けた。
「駄目か?」と言葉を付け足し羽那の様子を伺うものの何故か溜息を吐かれた。
「溜息吐くなよ」
「中也さん、全然判って無いんですもん」
羽那は一度、ゆっくりと瞬きをして俺を見た。
綺麗な瞳に俺だけが映り込む。
そして、心地よい声で
「私は貴方が一番大切な人です。そんな人からそんなこと言われて嫌な訳ないじゃないですか。
私も・・・貴方とずっと一緒が良いです」
と言うと優しく微笑えみながら俺を包み込んだ。
ふわりと羽那の香りが漂い、仄かな温かさ。
之を感じる様になったのは羽那と出会ってからだ。
・・・嗚呼、幸せだ。
大切な人が抱き締めてくれる。
俺のことを受け入れてくれる。
「愛してンぞ」
「私もです」
今は只願おう。
こんな毎日が続きますように、と。
【END】
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!