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第63話

魔法の掛かった◯◯
「はァ」と俺は羽那が見えなくなったコトを確認
すると溜息を吐いた。
「・・・結局彼奴誘えてねェ」
そう。誘えてない。
誘わなければ成らない、頭では解ってる。
けど言おうとすると無駄に意識して言えない。
「俺は餓鬼かよ・・・」
百歩譲って之が学生なら解る。
けど俺は学生を経験したコトの無い成人(22)だ。

取り敢えず、誘わねば。



意気込んで来た道を振り返った時、一台の屋台が
目に止まった。風車のみが売ってある奇妙な出店。
物珍しいので自然と脚が向く。


出店に行くと「いらっしゃい」と婆さんがしわしわの顔で愛想よく笑う。
「なァ此処って風車だけなのか?」
「そうだよ、坊ちゃんいるかい?」

・・・”坊ちゃん”という言葉は聞かなかったことにしておこう。とても感に触ったが。

「之くれよ。いくらだ?」

俺が聞くと婆さんは風車を手に取って
「此処の風車はね魔法が掛かっているんだよ。之を貰った人は皆ね、笑顔になれるんだ。だから坊ちゃんも誰かにあげたら笑顔が広がるねぇ。」
と和やかに話すもんだから”坊ちゃん”と呼ばれることに対しての苛立ちも消えた。

「そうなのか。」

ポツリと言った言葉が聴こえなかったのか、其の儘「はいどうぞ」と風車を手の上に乗せられる。
「婆さん金は?」
「そうだねぇ、坊ちゃんの笑顔が見たいねぇ」
「え。」
俺は悪い冗談かと思ったが婆さんは相変わらず
しわしわな笑顔の儘なので冗談じゃないらしい。
・・・仕方無ねェ。

「婆さん、有難うな」
俺は営業スマイルと感謝の言葉、其れから数万円を
婆さんの手に握らせた。
「おやまぁ、こんなに貰ってもアタシャ・・・」
「子供や孫に使えば良いじゃねェか」
「・・・そうだねぇ、そうするよ。有難うねぇ」
しわしわな顔を更にしわしわにさせた婆さんを見て
ふっ、と自然と頬が緩んだ。













___________あ、本当に風車貰ったら笑顔になった。



そんなことを思いながら俺は出店から離れた。