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第12話

旧双黒
「あー気にくわねぇ」
「おチビは黙ってよ」
「煩ェよ女垂らし!」
「悪趣味な帽子だね」
「糞が!」
中也さんがQを抱えた状態で蹴りをかますが
太宰治さんはヒラリと避けてみせた。この二人はずっとこの調子で互いの嫌いな所を言い合っている。
・・・此の人、垂らしなのか。覚えておこう。
「短気な上司を持って羽那ちゃんが可哀想だねぇ!いっその事探偵社に来るかい?」
「俺の部下を勧誘するな!」
「太宰治さんの提案には遠慮します」
「・・・フルネームで呼ばれるとはね。」
「此奴の事は自殺マニアとでも呼んどけ」
「分かりました。」
「否、分からなくて良いから」
「では何と呼べば?」
「太宰さんとかで良いよ」
「了解です」
「ところで羽那ちゃん、私と心中し・・・痛い!」
彼の言葉を遮り中也さんは今度こそ蹴り飛ばす。
「死ぬなら手前一人で逝っとけ」
「其れは自殺であって心中じゃ無いんだよ」
「死んだら同じだ青鯖野郎」
「帽子の付属品に言われたく無いね」
「此の貧弱野郎!」
「ちびっこマフィア」
「社会不適合者!」
あぁ、またか。
此処までくると仲が良い気もするなぁ。
・・・口に出すとタダじゃ済まされないだろうから
黙っておくけど。














ヒュッと触手の様なものが見えた。
然して私の前に居た上司の姿が消える。
否、消えたのでは無く吹き飛ばされたのだ。
「中也さん!?」
「中也!」
視界の端に向かって来る触手が見え蹴り飛ばし
急いで中也さんの元に駆け寄る私達。
中也さんは口を拭いながらも
「来るぞ如何する?」と作戦の指示を求める。
「如何するも何も私の異能無効化で・・・」
――――パァン!――――
「太宰ィ!?」
今度は太宰さんが吹き飛ばされ、駆け寄って見ると
・・・中々の深手であった。
「困ったね異能無効化が通じない」
血を吐きながら太宰さんが言う。
「ンなの有り得んのかよ!?」
流石に想定外であった為だろう。
二人の表情に焦りが見える。
然しそんな間にも触手は此方に向かって来ており、話し合いをしながらも「邪魔だ!」と避けては殴り飛ばす中也さん。
――――之じゃまともに話し合いも出来ない
・・・私が時間を稼ごう。
「私が時間を稼ぎます」
其れだけを伝え、触手へと向かって走った。
『パーセント』
異能名を言葉に出し、グネグネと不規則に動く触手を殴った。途端殴られた箇所から切れる。
意外と脆い・・・
そんな事を考えながら触手を操る人物に迫って行くが・・・一本、私とは別の方向に向かって行くのが見えた。触手の先には双黒の二人。
「中也さ・・・!!」
危ないと伝えようとしたが途中で息が詰まった。
触手が私の首を掴んだのだ。
――――あ、しまっ――――























――――ドガッズガガガ!――――
木の幹にぶつかり、威力で幹をへし折り尚且つ己の骨を折る感触を味わいながら突き進む。
触手から解放された時には身体が動かず、何とか
しようとしたが力が入らなかった。
――――全身が痛い。


――――ドガンッ――――
私の近くに誰かが吹き飛ばされた音が響いた。
私は目線だけを向ける。
・・・太宰さん。
目線の先に居たのは太宰さんだったが・・・ギプスを付けた腕が無くなっていた。
「っ羽那!太宰!」
中也さんが此方に向かって来る。
――――背後の触手の存在に気付かずに。
















私は護身用のナイフで己の腹を割いた。
途端、異能が発動され身体が元通りになる。
然して、中也さんをギリギリのところで庇うことに成功したのだ。
「大丈夫ですか?!」
「手前こそだ!今自分の腹引き裂いたろ!?」
「そんな事より中也さんの方が・・・」
「俺より手前だ!」
「一瞬の痛みなので大丈夫ですから」
「そういう事じゃ・・・!!」
「長い!ストップ!」
太宰さんが制止に入った。
見ると無くなった筈の腕がある。
「あれ腕が・・・」
「簡単に腕なんか取らせないよ」
そう言って頭を掻いた太宰さん。
「手前心配させてくれたなァ?」
「中也が心配?明日は針の雨だね」
「丁度良い。刺されて死ね」
「あの、解決策は・・・」
「無理無理!一つしか無いし諦めて死のう!」
あ、諦めて死ぬって嘘でしょ!?
私が抗議の言葉を発しようとした時、中也さんが驚いた顔で尋ねた。
「真逆・・・『汚濁』をする気か?」
「援護が遅れれば中也が死ぬ。選択は任せるよ」
『汚濁』とは何だろうか。
援護が遅れれば死ぬとは如何いうことだろうか。
私は全く分からないまま中也さんが『汚濁』を
使うのをただ黙って見つめていた。