「そんな彼氏、別れちゃえよー😆」
俺の耳に入ってきた、俺が知らない人が言った言葉。
そばには、俺の彼女が居る。
仕事、時間通りに終わったし、もしかしたら少し会えるかな…とか気を利かせたつもりが、学校から帰ってくる途中の彼女と一緒にいた友達らしき人がこんなことを言ってた。
聞こえてしまった。
そのまま、彼女たちが通り過ぎるのを、隠れてやり過ごすしかなかった。
そのあと、
少ししてから、彼女にメッセージを送った。
逢いたいから近くまで来たこと、言えなかった。友達に「別れちゃえよ」って俺のこと言われて、何て答えたんだろ…。
ていうか、どんな話から「別れちゃえよ」にたどり着いたんだろう。
考えてる間に、電話が鳴った。
俺は、正直に、
あなたの下の名前の学校のある駅にいたこと打ち明けた。
ちょっと言うの怖かったけど。
急遽逢えることになったのが嬉しくて、俺は心の中でガッツポーズ。せっかく逢いに来たんだし。
彼女には申し訳ないけど少しだけ戻って来てもらって、俺も少し移動することにして、待ち合わせることにした。
待ち合わせは、なんなくスムーズに出来て、
ちょっと久しぶりに逢ったあなたの下の名前は、俺が言うのも何だけど嬉しそうだった。
本当なら、見かけた時点で連絡しようと思ってたけど、友達との会話聞いちゃって、こんな俺でも少し怖くなっちゃった。
この話を打ち明けて、
自分が思ってた以上に、傷ついたんだと感じた。彼女の顔見て話してるけど、俺が居ないとこで俺に対する不満とか友達に話してるのかなって考えたら、こうして逢って話してても、だんだんしんどくなったりして。
言いたいことは俺もあったけど、
なんでか、すごく、言いづらかった。
負い目があったのかも。
なんとなくまだ落ち込み気味な雰囲気の俺のことを、ずーっとニコニコしながら見てる。
何でそんなにニコニコしてんだろ。
だって、幸せに出来てないかもしれない。
逢いたい時に逢えないこともあるし。
仕事始める時間も終わる時間も決まっていなくて……約束しにくくて。
俺なんかと居るより、もっとちゃんとした相手っていうか………なんていうか。
彼女は俺の頭に手を伸ばして、俺の髪をくしゅっと触る。
満足そうに俺の髪に触れる彼女はとても幸せそうに見えた。
今度は俺の頬をむにゅって指で優しくつねってくる。
そう、さっきからずっと俺の頬をつねってる。
もちろん全然痛くはないんだけど。
快く、一緒に食事に行くと言ってくれる。
こんな変な時間帯なのに。
ものすごく空腹だったわけでもないけど、
いつものように一緒に居たら、気分も変わるかなと思った。
半分呆れて半分笑って、
俺の「おやつ」に付き合ってくれた。
彼女は食べないで飲み物頼んで飲んでた。
俺がもぐもぐ食べてるのを、面白そうに見てて、色んなことお喋りしてくれて。
少し久々に逢ったってのもあって、通ってる学校の話とか、俺の仕事の話とか、沢山話してるうちに、俺も調子が戻って来て。
本当は聞くの少し怖かったんだけど、
なんとなく話の流れで。
彼女から、不満があまり出てこなくて、ホッとしてた。
ホッとしたら、食欲また出てきた。
急遽逢いにきて良かったな。
関係ない誰かの言葉を信じて傷ついたり落ち込んだりして、一番好きな子に心配かけたり迷惑かけたりするの、やっぱ良くない。
約束してなくてもこうして逢えるのって、
感覚が似通ってないと出来ない気がするから、今日はおやつも含めて満足がいく日になった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。