第26話

きずをいやす。
375
2021/10/13 15:50
「そんな彼氏、別れちゃえよー😆」

俺の耳に入ってきた、俺が知らない人が言った言葉。
そばには、俺の彼女が居る。

仕事、時間通りに終わったし、もしかしたら少し会えるかな…とか気を利かせたつもりが、学校から帰ってくる途中の彼女と一緒にいた友達らしき人がこんなことを言ってた。
聞こえてしまった。

そのまま、彼女たちが通り過ぎるのを、隠れてやり過ごすしかなかった。

そのあと、
少ししてから、彼女にメッセージを送った。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今、話せる?
(なまえ)
あなた
お疲れ様!
いま、ちょうど電車乗っちゃったとこ!
なに?
どうしたの?
お仕事の合間?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ううん、移動中ならいいんだ。
気にしないで。
少し話せたらと思っただけだから。
(なまえ)
あなた
電車降りてから、私が電話掛けても遅い?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ううん、遅くないよ。
あとで電話くれる?
(なまえ)
あなた
うん、分かった。
あと10分くらいで乗り換えだから、そのタイミングで電話するね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、待ってる。
逢いたいから近くまで来たこと、言えなかった。友達に「別れちゃえよ」って俺のこと言われて、何て答えたんだろ…。
ていうか、どんな話から「別れちゃえよ」にたどり着いたんだろう。

考えてる間に、電話が鳴った。
(なまえ)
あなた
ごめんね、さっき。
どうしたの?なんかあった?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ううん、いや、仕事さぁ、いつも押すのに、今日はオンタイムで終わったから電話した。
(なまえ)
あなた
えーーーー!
さっきメッセージの時に言ってよー!(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え………?
( ̄▽ ̄;)
(なまえ)
あなた
もう乗り換えるとこまで帰って来ちゃったのにー!蒼弥今どこ?
俺は、正直に、
あなたの下の名前の学校のある駅にいたこと打ち明けた。
ちょっと言うの怖かったけど。
(なまえ)
あなた
学校の近くに来てくれてるって早く教えてくれたら逢えたのに。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
(なまえ)
あなた
なんで後出しなの。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
なんとなく言いづらくて。
(なまえ)
あなた
言いづらい…?
え、待って、どうして?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
…て、話してる間に、待ち合わせ、出来る?
スケジュール的に無理だったら諦めるけど。
(なまえ)
あなた
ほんとだね(笑)。
私ちょっと戻ろうかなー♪
急遽逢えることになったのが嬉しくて、俺は心の中でガッツポーズ。せっかく逢いに来たんだし。
彼女には申し訳ないけど少しだけ戻って来てもらって、俺も少し移動することにして、待ち合わせることにした。


待ち合わせは、なんなくスムーズに出来て、
ちょっと久しぶりに逢ったあなたの下の名前は、俺が言うのも何だけど嬉しそうだった。
(なまえ)
あなた
ねー、なんで?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え?
(なまえ)
あなた
なんで急に逢おうと思ったのー?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんで、って…だって最近あんまり都合が合わなかったしさ。
(なまえ)
あなた
うんうん(*'▽'*)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
仕事、思ったより早く終わって、
思い立って………みたいな?
(なまえ)
あなた
来る時に、ひと言メッセージくれれば良かったのに。そしたら、すぐ待ち合わせ出来たのに。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
そうだね。
(なまえ)
あなた
なんで?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんでって………💧
(なまえ)
あなた
なんで先に言ってくれなかったの?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんとなく、今日終わるのこれくらいの時間って聞いてたから、行ったら逢えるかなとか。まあそれでタイミング合わなくて逢えなかったらそれはそれで仕方ないか急だしって思ってたからさ。
(なまえ)
あなた
そーゆーとこだよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え。
(なまえ)
あなた
なんか変なとこで意地悪するんだよ、蒼弥って(●´・з・)σ
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
意地悪じゃねーよ別に(笑)。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
約束してないのにタイミングが合って逢えたら、嬉しいじゃん😊
(なまえ)
あなた
でも事前に言ってくれなかったから逢えなかったじゃん!(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
…逢えてたよ。
学校から駅までの間にあなたの下の名前のこと見かけてた、俺。
(なまえ)
あなた
えー?!
なんで?!
それこそなんで?!
おかしいおかしい(笑)!
本当なら、見かけた時点で連絡しようと思ってたけど、友達との会話聞いちゃって、こんな俺でも少し怖くなっちゃった。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
友達と話してたの聞こえちゃって。
(なまえ)
あなた
話?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
…そんな彼氏別れちゃえよって。
(なまえ)
あなた
あ。
あー………それか……。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ちょっと弱気になって、連絡できなくなっちゃった。
この話を打ち明けて、
自分が思ってた以上に、傷ついたんだと感じた。彼女の顔見て話してるけど、俺が居ないとこで俺に対する不満とか友達に話してるのかなって考えたら、こうして逢って話してても、だんだんしんどくなったりして。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺に不満ある?不満っていうか…なんだろうなー…なんでも、思ってることとかある?
(なまえ)
あなた
不満は無いよ。
あの話の時は、デートが不定期だとかそういう話をしてたから、土日休みの人と付き合ってる友達があんな風に言っちゃっただけ。
蒼弥の悪口とかじゃないんだよ😊。
(なまえ)
あなた
嫌なフレーズだけ、蒼弥に聞こえちゃったね。
言いたいことは俺もあったけど、
なんでか、すごく、言いづらかった。
負い目があったのかも。

猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
最近ちゃんとゆっくり逢えてもいなかったし、なんとなく………元々俺も考えることあったから。
(なまえ)
あなた
元々?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
もし学生の彼氏とか、普通に会社員の彼氏とかだったら、休みも決まってたりするかもだし、先の予定もある程度分かってて、逢う約束もしやすいだろうなーとか。
(なまえ)
あなた
まあ、それはそうかも。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
でもね、だから、予想より早く仕事終わったから来てみたんだよ。
(なまえ)
あなた
うん、逢えてよかったー😃💕
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え?
(なまえ)
あなた
え。なに?
(なまえ)
あなた
逢えてよかったよね?(笑)
(なまえ)
あなた
え、待って、私だけ?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そうじゃない(笑)。
逢いたくて来たんだから俺も。
でも、
うん、
でも、やっぱり、さっきの友達が言ったフレーズの破壊力は俺にとっては凄かったわ。
なんとなくまだ落ち込み気味な雰囲気の俺のことを、ずーっとニコニコしながら見てる。
何でそんなにニコニコしてんだろ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ダッセェなーとか思ってる?
(なまえ)
あなた
ううん。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺、まだあなたの下の名前と居ていいんかな。
(なまえ)
あなた
何言ってんの?
(なまえ)
あなた
冗談は顔だけにしてよ。
(なまえ)
あなた
怒るよ?
だって、幸せに出来てないかもしれない。
逢いたい時に逢えないこともあるし。
仕事始める時間も終わる時間も決まっていなくて……約束しにくくて。
俺なんかと居るより、もっとちゃんとした相手っていうか………なんていうか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ほんと、なんか、弱気になっちゃって。
(なまえ)
あなた
愛想尽かしてたら、今日みたいなタイミングの時にわざわざ蒼弥に合わせて戻ってこないよ。
彼女は俺の頭に手を伸ばして、俺の髪をくしゅっと触る。
(なまえ)
あなた
最近は髪くしゅくしゅしてんだね。
かわいー。似合ってる。
満足そうに俺の髪に触れる彼女はとても幸せそうに見えた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
もし、今後、こいつダメだなってなったら言ってね、ちゃんと。
(なまえ)
あなた
怒るよ。ほんとに。
今度は俺の頬をむにゅって指で優しくつねってくる。
(なまえ)
あなた
じゃー、私が蒼弥にわがまま言って困らせて、もー勘弁してくれ無理〜ってなった時もちゃんと言ってね?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ならねーわ、そんなん。
(なまえ)
あなた
じゃ、私もならない。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
これ。いつまでつねってんの………
そう、さっきからずっと俺の頬をつねってる。
もちろん全然痛くはないんだけど。
(なまえ)
あなた
蒼弥が、
私に対して、
俺から離れるわけないよなーってドヤるまで。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いや…だとしたら今日中には無理(笑)
(なまえ)
あなた
もー、なんか調子狂っちゃうなー。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
申し訳ない💧
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あのさ。
(なまえ)
あなた
うん。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
中途半端な時間だけどさ。
(なまえ)
あなた
うん、なになに。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ごはん。
(なまえ)
あなた
ごはん??
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ごはん、付き合って。
(なまえ)
あなた
ごはん食べたら元の蒼弥に戻る?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
多分戻る!
快く、一緒に食事に行くと言ってくれる。
こんな変な時間帯なのに。
ものすごく空腹だったわけでもないけど、
いつものように一緒に居たら、気分も変わるかなと思った。
(なまえ)
あなた
蒼弥が行きたいお店でいいよ。
(なまえ)
あなた
てか、お仕事の合間に食べれなかったの?
食べに行ったり、買って食べたり…お弁当とかさ…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
食ったよ。
(なまえ)
あなた
食べたの?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、お弁当2個食った。
(なまえ)
あなた
なのにまた今から食べるの?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今から食べるのは、
ごはんっていう名のおやつね。
半分呆れて半分笑って、
俺の「おやつ」に付き合ってくれた。
彼女は食べないで飲み物頼んで飲んでた。
俺がもぐもぐ食べてるのを、面白そうに見てて、色んなことお喋りしてくれて。
少し久々に逢ったってのもあって、通ってる学校の話とか、俺の仕事の話とか、沢山話してるうちに、俺も調子が戻って来て。
(なまえ)
あなた
少し元気出た?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え?
うん。ありがと。
(なまえ)
あなた
あんな彼氏別れちゃえって聞こえても、そんなことないって思えてる?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、だいぶね。
あんな彼氏ってどんな彼氏だよ…てかこんな彼氏だけどなに?ってくらいには思い始めてる。
(なまえ)
あなた
お腹空いて弱ってただけじゃん(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
まー、あなたの下の名前が俺と別れるわけないとか偉そうなことは言えないけど、でも、
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
さっきも話したけど、今までも俺なりに考えたこともあったからね。
(なまえ)
あなた
なにを?もっとちゃんとした人と付き合ってたら〜とかそういうやつ?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そう。
全然違ったと思うんだよ。
(なまえ)
あなた
でも蒼弥みたいな人のことが良いって思う人も居るわけじゃん?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、まぁ、そりゃぁそうかもだけど…
(なまえ)
あなた
会社員とか、サラリーマンしてる人とかは、あんまり合わないなぁって感じる人も世の中には居ると思うよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あなたの下の名前はそうなの?
(なまえ)
あなた
私は、んー、会社勤めは全然尊敬する、でも私がまだ世間知らずで子供だからかもしれないけど、毎朝同じ時間に出勤して同じ人たちと仕事して同じ場所で…とかお給料貰えるから言うこと聞いてるのかなぁーって思って見てる。楽しいのかなぁって。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
辛口………💦
(なまえ)
あなた
怒られちゃうね、こんなこと言ってたら(笑)。私も社会に出たら変わるかもしれない、考え方とか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺はあなたの下の名前から見てどんなふうに映ってる?
(なまえ)
あなた
蒼弥は、自由な人。
自由で、でもざっくり計画性があって、やりたいこととか好きなことを色々極めちゃう感じ。何でも屋さん!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
もっと安定した決まった仕事みたいなのしててくれたらなぁーとか、無い?
(なまえ)
あなた
え?蒼弥に対して?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
(なまえ)
あなた
全然無い。
本当は聞くの少し怖かったんだけど、
なんとなく話の流れで。
彼女から、不満があまり出てこなくて、ホッとしてた。

ホッとしたら、食欲また出てきた。
(なまえ)
あなた
ねー、もうやめときなよ
食べるの(笑)。
繊細なハートは復活した?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あなたの下の名前のことで傷ついてたのに、いつもあなたの下の名前に助けてもらったり癒してもらってんね、俺。
なんか、あなたの下の名前の話聞いたら、ちょっと安心して、なかなかお腹いっぱいになんない。
急遽逢いにきて良かったな。

関係ない誰かの言葉を信じて傷ついたり落ち込んだりして、一番好きな子に心配かけたり迷惑かけたりするの、やっぱ良くない。

約束してなくてもこうして逢えるのって、
感覚が似通ってないと出来ない気がするから、今日はおやつも含めて満足がいく日になった。


プリ小説オーディオドラマ