クラス替えで今は別クラスになってしまったけど、仲良くしてくれてる作間。
俺は、暇さえあればちょっかい出しに来てる。
なんかニコニコして俺を見るんだ。
作間は、明らか地味に取り乱してる俺を見て、おとなしく爆笑してた。
もごもごしちゃう俺。
俺が気になってる子。
作間のクラスの子。
話したこともないし、直接関わりもない。
同じクラスになったこともない。
作間にも言ってなかった。
ただ、クラスが別々になって作間と喋りに来て、わりと早い段階で気になり始めた。
今まで、その子と作間が仲良くしてるの見たこと無かったから、家が近所で連絡取り合える関係だなんて、今更知って…………。
だってさ、だって、
幼馴染から恋に発展するとか、あるじゃんか。
小さい頃から知ってて近すぎて気付かずに来たけどある日突然異性として見ちゃうみたいな。
作間はさ、俺と違って、スラッと長身で美形だし、穏やかで優しいし、器用だし、頑張り屋だし。
あ、いや、俺だって別にカッコ悪くはないとは……思うんだけど……種類が違うってゆーかさ。
佐久間の言葉と同時に次の授業開始のチャイムが鳴って、俺は自分の教室に戻った。
授業中、ずっと考えてて、
珍しくぼーっとしてたかも。
幼馴染って、お互いのこと既によく知ってるから、安心して付き合えたりすんのかな……新しい出会いよりも落ち着いて付き合えたりするよなー……なんて。
想像してみたら、作間と彼女、お似合いなんだよな………身長差もめっちゃいいし。
あ〜〜〜〜ダメダメ!
イメージしたらその通りになっちゃう!
放課後。
作間が俺のとこに来て、
彼女に持っていくノートをまとめるの手伝えって言ってきた。
一教科なら普通にコピーして終わりでいいけど、何個か教科あるから、それを一つにまとめたいんだってさ。
俺と作間は、
今日の授業の順番通りに、作間のノートをコピーしたやつを並べて、一冊にまとめて綴じて、準備を終えた。
作間が途中何か買っていくって言うから、コンビニに寄った。
俺は、淡々と、良さそうなものを選んで、作間が持ってるカゴに放り込む。
そして2人で彼女にノートとお見舞いの品を届けに行った。本当に作間の家と近くて笑っちゃったんだけど、当たり前のようにインターホンを押して「あ、龍斗ですー♪」なんてゆるーく言ってる作間はやっぱり彼女の幼馴染で俺なんかよりも一段も二段も彼女の近くに居るんだなって感じてた。
玄関を開けてくれたのは彼女のお母さん。
お母さんは申し訳なさそうに、でも嬉しそうに、俺たちを歓迎してくれて、家の中に上がっていってと言ってくれた。
作間のことも、龍ちゃんって呼んでる。
聞けば、彼女は、熱は薬飲んで少し下がって、普通に家の中ではうろうろ出来てるそうなので、回復はしてるみたいだ。
自室で横になってるという彼女を呼びに行こうとしてくれるお母さんに作間は、
と、遠慮して言ったけど、
お母さんはお構いなしに彼女に声をかけにいった。
お母さんの後からやってきた彼女は、俺らに気を使ってかマスクをして、部屋着で。
と、俺を見る。俺は、小さく、どうも…と頭を下げた。
制服の時の雰囲気とは全然違って、
なんて言っていいか分かんないけど、普通の女の子なんだなって…。
今起きましたみたいな感じで出て来てくれるのも(笑)。
俺と作間は、彼女と、彼女のお母さんに挨拶をして、帰った。
分かってるよ。
さっきから、堂々巡りの会話してるって。
授業中から俺の頭ん中ずっとそうだったもん。
作間と彼女は、特別な関係なんだってことは、分かった。
翌日も、彼女は、学校に来なかった。
そして今日も、2人で、ノートをまとめたものを作った。
作間が黙々と作業してるのを見てて、
ほんとはコイツが彼女のこと好きなんじゃないか?って思えてきた。
だって、いくら病欠した幼馴染の為って言ったって、こんなに親身になるって…
にわかには信じがたい。
大丈夫なのかなぁ………とブツブツ言いながらも、作間に言われるままに、俺は連絡先と名前を書いた。
急展開に、俺は、動揺を隠しきれてなかった。
こんなこと突然言われても〜〜〜…
でも、作間の話しぶりから
何か奴なりの考えがあるっぽくて、それで俺は乗ることにしたんだ。
ドキドキしながら
昨日も訪れた彼女の家に到着。
インターホンを押すにも、勇気がいる。
何度も押せなくて、勇気を振り絞り、インターホンを押すと、すぐに彼女のお母さんが出てくれた。
お母さんは、優しい声で「あー、ありがとう!待ってね今開けますね」と言ってくれて、すぐに玄関が開いた。
俺は、ここに来る途中で買ってきたものも一緒に、お母さんに渡そうとした。
渡してすぐ帰るつもりで居たのに、お母さんはノートを受け取らずに、やっぱり「上がっていって」と………一応流石に俺1人で来て女の子の家に上がるわけには…と断ったんだけど………それに、俺と彼女は全然親しくもないし……。
玄関までなら、とお言葉に甘えて家の中に入れて頂いたら、お母さんが彼女の部屋に声をかけに行ってくれた。
大丈夫かな。
俺のこと、あんまり知らないのに。
巻き込んでる………?
てことはやっぱり。
作間のこと好きなのか。
聞いてみたいけど、奥にお母さんがいらっしゃる状況では聞きにくい。まあ玄関で話してるだけじゃ、聞こえないだろうけど。
俺は、
彼女に渡したノートのコピーに貼った連絡先の付箋を後悔してた。無神経だったんだよ、やっぱり。って。
外に出て、彼女の家の玄関ドアを閉めたら、急に心臓バクバクした。
話してるときはわりと落ち着いて喋ってたのに。
しかも、龍斗のことまで聞き出せちゃったくらい、俺にしちゃ攻めたなって感じ。
今更すごくドキドキしてる。
帰り道、作間に連絡を入れた。
作間が根拠なく言うことが不思議でならなかったけど、そこが作間の不思議なところで、何故か本当に大丈夫な気がしてた。
夜、自分の家で、
風呂上がりにスマホをチェックすると、
見慣れないアイコンでメッセージが来てた。
作間が言ってた通り、ちゃんと連絡来た。
気になるなーってだけだったのに、
あっという間にこんなことに。
やっぱり作間の話………。
作間が言ってたことを思い出す。
連絡取れたらさっさと告れ、って言ってた。
作間が、水面下で根回ししまくってくれてたってことだ。
俺に言ったのと同じようなこと、彼女にも言ってたんだ、作間。
少し、微妙な空気が流れて、
じゃあここからどうすんだよって短い時間にすごく考えた。
作間が言ってた、作間が作間がって、俺らはずっと作間のせいにして(笑)あーだこーだ話してるだけで………
でももう、それこそ作間の言葉を借りるなら、さっさと決めるしかない気がしてた。
そうじゃないと、周りも噂するようになるし、余計に決められなくなっていくように思えたし。
作間は全部分かってて言ってたんだなーと思うと、笑えてきちゃって。
スマホの画面見ながらニヤニヤしてた。
明日以降、彼女が学校に来たら、真っ直ぐ彼女のとこに行って、伝えなきゃと思う。
ここまで話せてて、
お互いもう想い合ってることが分かったんだから、早く直接言わなくちゃ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。