仕事を終えて、蒼弥にメッセージを送る。
「終わったよー。蒼弥、今どこにいる?」
すると間髪入れず電話がかかって来る。
帰り支度をして、職場を出て、もう一度蒼弥に電話。
蒼弥は、近くの大型書店で時間潰しながら待っててくれたみたい。
蒼弥もだけど、私も本が好きだから、本屋さんに寄るのは大好き。
蒼弥を見たことある同僚は
「猪狩君って落ち着いてますよね」
「いつもクールな感じだよね」
「大人っぽい」
とか言う。
まあ、そう見えるんだろうね。
蒼弥の落ち着きは、私も認めてる。
私の職場から一緒に帰る時は特にだけど、職場の近くにいる間はしっかり者の大人な感じで居るんだけど、もうあんまり関係ないエリアに来ると、途端に、、、
手を繋いできて指を絡めてきたり、私の髪を撫でたり、とにかく距離ゼロになる。
喋り方も少しだけ子供っぽくなったり、声色も柔らかくなるんだ。
そして、お店に入った途端、再び………
私は、グラスワインをお願いした。
店員さんも、蒼弥のテキパキ頼む感じに、きちんと対応してくれてた。
普段はもうちょっと子供っぽいのに。
公の場に出ると、違う人格が憑依すんのかな。
唇を尖らせて拗ねるんだけど、
店員さんが私が頼んだワインを持ってきてくれると、サッと振る舞いを切り替えるの。
私は、蒼弥に小さく「じゃ、いただきます」と言って、ワインをひと口。(最高🍷💕)
で、店員さんが居なくなると、またちょっと幼い感じが出るというか。
だいたい、こういうお店で私と一緒にいる時とかは、基本、色んな蒼弥が混ざって出て来る。
お店から私の家に帰るのに、数駅電車に乗るんだけど、お出かけの時に電車に乗ったりしても、いつも蒼弥は私のことを守ろうとしてくれる。
混雑してたりすると、私がバッグを持ってない方の腕を自分の腰に回させて、蒼弥は私がグラつかないように抱き寄せててくれて「ちゃんと捕まってて」と言う。
最寄駅から私の家まではほんの5分くらい歩くだけなのに、その間も距離ゼロ。
手を繋いでる時は、何となく気持ち繋いだ手をブンブン振ってる感じ(笑)。露骨にブンブンはしないけど、多分気持ちの上では結構振ってんだろうなって(笑)。
私の家に到着するやいなや、、、
玄関の段階で後ろからぎゅーーーってして来てくれる。
私はもう慣れっこでその状態でも靴を脱いで部屋に上がれるようになっちゃった。
大きいぬいぐるみ背負ってるみたいになる(笑)。
何十回目?このやり取り。
くっついたまんま拗ねちゃう。
聞こえないふりしてる(笑)。
私はくっついてる蒼弥の背中をポンポンして。
蒼弥の腕を離そうとしても、全然離れてくれない。早くさっさとシャワー終えてゆっくりしたいのに。
早くシャワー浴びたくてとりあえずチュって軽くキスしたら、
って(笑)。
ほんとにもうシャワー行くから離して、って口調で、蒼弥のほっぺを優しくむにゅってつまんだ。
すごい悲しい顔で見るから可笑しくなっちゃって(笑)、私は蒼弥の頬に手を当ててさっきよりもゆっくりキスした。
蒼弥の髪をくしゃくしゃと撫でて、私はバスルームへ行った。
早く帰ってきてねって言われたけど、私がシャワー終えたら次は蒼弥がシャワー浴びる番なんだけど分かってるのかな………と不安になった(笑)。
暫くすると、声が聞こえて来る。
もう、笑いながらシャワー浴びてる。
シャワー終えて歯磨きしてたら、また……
もう部屋着を着てたし、歯磨きしながらドアを開けた。
蒼弥も歯磨きし始めると、私の方は歯磨きを終えてうがいをして、歯磨きしている蒼弥を残して部屋に戻る。
蒼弥が歯磨き終える前に着替えを用意し、
「ここ置いとくね」とドアを閉めた(笑)。
歯磨きを終えると蒼弥はせっかく私が閉めたドアを開けてくる。
戻ってきそうだったので、私はバスルームへ駆け寄って、蒼弥をドアの向こうに押し込む。
タオルで髪をくしゅくしゅ拭きながら、私は冷たいお水を飲んで、蒼弥を待ってた。
少しすると、もうシャワーから出てきたかな…って気配で分かったんだけど、
(笑)
ドアを開けると、服を着てる途中の蒼弥。
蒼弥の、時々見せる照れ笑いみたいなのが可愛くて、手がかかるところも結局全部許してしまう。
交代で、髪を乾かして、ちょっとお喋りして、あとは寝るだけ。
やっと落ち着いて(拘束されずにw)ゆっくり過ごせる。
だいたい、もう全部やるべきこと終えたら、
ベッドでお話ししてることが多い。
いつ寝ちゃってもいいように、って。
そう言ってぎゅーって抱きついて来た。
私はこらえきれずクスクス笑い出した。
あまりにジタバタ子供みたいに癇癪起こすみたいに暴れたから、可愛いやら可笑しいやらで。
大人と子供を行ったり来たり。
毎日大忙しな蒼弥、
私が寝そうなのを、ヤダーーー!って飛び起きちゃった蒼弥はほんとに子供。
笑いながら私も起きて蒼弥を抱きしめた。
照れ臭そうに笑ってる。
意地張りたいけど嬉しいみたいな。
甘えたり、甘えられたり。
大人になったり、子供になったり。
微妙なバランスで一緒に居る2人。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!