第17話

episode①「がんばる。」
489
2021/09/21 07:19
いつもは仕事の合間に外に出ることなんてあまりないのに、今日は話の流れで仲間と一緒に近くのお店にテイクアウトしに来た。
俺は別に…わざわざ買いに来なくても良かったんだけどね。

まあ、仲間の付き合い。
高橋優斗
高橋優斗
お前、もっと楽しみそうにしろよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
えー、だって俺は別に…
仲間の優斗。
なにかと一緒に居る。

優斗の好きなお店らしい。
高橋優斗
高橋優斗
お願いしまーす!
優斗がオーダーカウンターで馴れ馴れしく注文を告げる。
(なまえ)
あなた
はい♪かしこまりました、優斗さん(笑)。
女性店員さんが優斗のこと見ながら笑って名前を呼ぶ。

なんか、ドキッとした。
よく分からないけど。
優斗のことを店員さんが名前で呼んだから?
店員さんがこういう接し方するのが珍しいから?
高橋優斗
高橋優斗
いつも名前呼ぶのなんなんすか(笑)
その女性店員さんは笑いながら飲み物を用意していた。
(なまえ)
あなた
だって、一緒に来られる方々があまりにも皆さん優斗優斗って呼んでらっしゃるから、優斗さんなんだなーって(笑)
高橋優斗
高橋優斗
もうそれ完全に馬鹿にしてるじゃないですか💦
(なまえ)
あなた
はい!お待たせしました!
優斗さん、またお待ちしております😃
高橋優斗
高橋優斗
あーもう(笑)。あ、ありがとうございます、ちょっと猪狩これ持ってて。
あ、お前ちゃんと真っ直ぐ待てよ?!
頼まれた分も買ったから、持ち帰るの多め。
(なまえ)
あなた
後輩さんですか?
高橋優斗
高橋優斗
いえ、こいつは先輩です。
(なまえ)
あなた
え?!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前ややこしーこと言うなよ、混乱させてるだろ(笑)すいませんなんかもう、僕が年下の先輩で、こっちが年上の後輩なんですよ。
(なまえ)
あなた
あ〜(≧▽≦)だからそういうバランスになっちゃうんですね!
いいですね仲良くて😄
俺と優斗は顔を見合わせて文句言い合いながら笑った。
(なまえ)
あなた
また一緒にいらしてくださいね。
お待ちしております。
ドタバタして店を出たけど、
なんか俺は落ち着かなくて、鼓動が……
店員さんと話したからかな。
優斗があんなふざけたこと言ったからかな。

とにかく仕事場に戻って、ほかのみんなの分も買って来たから、ちゃんと渡さなきゃ。
高橋優斗
高橋優斗
瑞稀くん、これ!
井上瑞稀
井上瑞稀
はーい、ありがとー。うわ、超うまそう。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
これは、はしもっちゃんで…
橋本涼
橋本涼
あ、貰う貰う。サンキュー♪
高橋優斗
高橋優斗
これと、これが、作間ね。
作間龍斗
作間龍斗
やった。嬉しい。久しぶり。
作間龍斗
作間龍斗
今日も優斗さんって言われた?
高橋優斗
高橋優斗
言われたわ💢当たり前だろ(笑)
作間龍斗
作間龍斗
めっちゃ可愛がられてるよね。店員さんに。
そんな会話を横で聞きながら、
ふーん…お店の人と仲良いんだー…
なんて思った。

あれ、なんか気になってる。
お店に行ってから、お店を出ても、仕事場に戻って来ても、なんか、こう、落ち着かなくて。
そんな何か変わったことあったかな。



翌日も同じ場所で仕事で、
そのお店の前を通って向かう道。
(なまえ)
あなた
あ…………おはようございます!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
( ̄∀ ̄)❗️
(なまえ)
あなた
昨日はありがとうございました😊
またお待ちしてますね!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ…おはようございます……はい…
昨日接客してくれたあの女性店員さんがお店の出入り口にたまたま居て、挨拶してくれた。

俺はなんだか照れ臭くて、
覚えてくださってたことも驚いたし、こんな風に声をかけてくれたことにも………
(なまえ)
あなた
行ってらっしゃいませ(*^^*)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ……ぇと、
行ってきます( ̄▽ ̄;)
緊張した。
なんかドキドキするー。
俺そんなに人見知りだったっけ。

それからというもの、
ここで仕事の時に優斗がこのお店に買いに行くって言うと、いつも気持ちがざわついた。
ほんのたまに「ガリさんついて来て。」って言うから、一緒に行くこともあって、ただそれだけだし俺は荷物持ちなんだけどさ。

でも、
だんだん、それじゃ満たされなくなってて、
この場所で仕事の日、仕事場に行く途中ひとりでお店に寄って飲み物だけ買ったりするようになった。

あの女性店員さんが居ない日もあったし、
居る時は俺に気付くと軽く会釈してくれたり、接客してくれる時には少し言葉を交わしてくれたりしてた。
(なまえ)
あなた
優斗さんにもよろしくお伝えください。ありがとうございました😊。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はい( ̄▽ ̄)
このあと会うんで言っときます。
ありがとうございます。
ある日の仕事帰り………

珍しく、仲間であのお店に寄って、軽いミーティングすることになった。
仕事の話だけど、まぁ、似たような世代の仲間だから、ガヤガヤと話し合ってあーでもないこーでもないと意見を交わす。

俺はもう少しここで本を読みたくて、
みんなは帰るって言ったけど残って本を読んでた。
高橋優斗
高橋優斗
ご馳走様でした!
(なまえ)
あなた
あら、年下の先輩をひとりにして置いてっちゃうんですか?(笑)
高橋優斗
高橋優斗
(笑)だから、年下の先輩は間違ってはないんですけどなんかな〜〜…それ言ったら全員年下の先輩なんですけどね。
(なまえ)
あなた
ええええ?そうなんですか?!
高橋優斗
高橋優斗
そうなんですよ。
俺が一番年上なのに、俺がぶっちぎりで一番後輩なんで。
(なまえ)
あなた
そうだったんですね(^-^)
高橋優斗
高橋優斗
置いてくあいつは、歳だけで言うと末っ子ですよ。
作間龍斗
作間龍斗
僕と2人末っ子なんです。
(なまえ)
あなた
えー、そうだったんですか。
私も皆さんと歳変わらないと思いますけど、そんな私から見てもちょっとまだ可愛い感じするなーとは思ってました、年下の先輩さん。
(なまえ)
あなた
じゃあ、末っ子さんが本読み終えるまで、ちゃんと見守っておきますね(笑)
高橋優斗
高橋優斗
じゃあまた来ます。ご馳走様でした!
(なまえ)
あなた
お疲れ様です。またお待ちしております。お気をつけてお帰りください♪
なんとなく聞こえてた優斗と店員さんのやりとり。仲良いなあ。って、思っちゃった自分に、やっぱり…って気持ち。
今も、みんなと一緒に帰らずに、俺だけ残って本読んでるのも、正直、口実。
なんとなくまだ居たかっただけ。
あの店員さんが居るから。

もう少し
話したいな。

こんな気持ちにも、少し前から気付いてた。
(なまえ)
あなた
…お飲み物、よかったらこちらで追加承りますよ?🙂
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
( ・∇・)❗️
俺のテーブルの空いたカップをトレーに回収して彼女は笑顔で言った。
(なまえ)
あなた
ドギマギして何も言わない俺が、何か言うのを優しく待っててくれる感じ。
(なまえ)
あなた
お飲み物、もう大丈夫ですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ………ぇーーー……と。
(なまえ)
あなた
同じもの、おかわりされますか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ…あ、はい。お願いしま…す、てか買いに行きます。
俺が立ち上がってオーダーカウンターへ行こうとすると、それを止めて、
(なまえ)
あなた
こちらで大丈夫です。少しお待ちくださいね、今、お持ちします。
と言って、カウンターに戻っていった。
今、一生懸命読んでる本があって、集中して読んでたら、気がついたら店内は人もまばらになってた。

(なまえ)
あなた
お待たせしました。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あの、もう閉店時間ですか?
ごめんなさい俺、夢中で読んでて。
(なまえ)
あなた
ラストオーダーだったので、伺いました。あ、でもまだ閉店じゃないので、あと30分くらいはゆっくりされててください。
あと、優斗さんと約束したので。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え、優斗と約束?
(なまえ)
あなた
はい😊
年下の先輩さんを見守っておきますね、って約束したので(笑)。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そんなこと、話してたんですね(⌒▽⌒)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あっ、お金、用意します。すいません、もたもたしちゃって。
俺は急いで1000円札を彼女に手渡した。
なんか俺ばっかりあたふたしてる。
(なまえ)
あなた
大丈夫です、ゆっくりで。
ありがとうございます。ではお預かりします。少しお待ちくださいね。
すぐにお釣りとレシートを持って来てくれた。
店内が閑散として来て、カウンター内も、片付けっぽい音が聞こえる。
(なまえ)
あなた
お釣り、お確かめください。
ごゆっくり…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あの。
(なまえ)
あなた
はい。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
このあと、お店終わってから、少しお話出来ませんか。
(なまえ)
あなた
…………私?とですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はい。少しだけ。
僕、近くで待ってるんで。
あー、勿論、急いで帰らなきゃいけなかったら、いいんですけど、少し………
(なまえ)
あなた
お店閉める間お待たせしてしまっても良ければ、いいですよ😊
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ほんとですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
じゃあ…すぐそこの……じゃあまずいですよね、同僚の人たちの手前……えっとー…
まさか、いいよって言ってくれると思ってなかった。なにも考えてなかった俺は、大人ぶって早口で待ってると言ったものの、スマートに場所の指定を出来ずに。

そんな俺を見て、クスクス笑ってる彼女。

あー、カッコ悪い、俺〜…💦
(なまえ)
あなた
大丈夫ですけどね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
へ?…大丈夫………?
(なまえ)
あなた
適当に友達ですとか言えば大丈夫ですけど、でも、そしたら、ここから真っ直ぐ行ったところの一番近い駅の階段あるじゃないですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はい。
(なまえ)
あなた
そこじゃなくてもっと真っ直ぐ行くともう一つ駅に降りる階段あるの分かります?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はい、勿論、分かります。
(なまえ)
あなた
その階段で待っててください。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
わ…かりました。はい。
(なまえ)
あなた
閉店から30分くらいお待たせしてしまうと思うんですが…それでも大丈夫なら待っててください。
(なまえ)
あなた
コーヒー冷めちゃいますよ😊
そう言って何事も無かったように仕事に戻って行った。
あと少し、追加したコーヒー飲み終えるまで、本の続きを………無理〜〜〜〜💦
活字追ってるだけで全然中身入ってこねぇ。

なんで俺こんな、
緊張?
なにこれ?
カップ持つ手が微妙に震えてた。
閉店直前まで俺はお店に居て………まあ迷惑だろうなって思いつつも、なんとなく、ギリギリまで居たかった。
でも、他の数人のお客さんも閉店まで居たから、少しは気が楽だったかな。
飲み終えたコーヒーのカップをカウンターに返却して、俺はカウンターに居た店員さんにご馳走様でしたを言ってお店を出た。
その時、特に彼女とやりとりする事もなく、
彼女はフロアを片付けていたし、目を合わせる事もなかった。
あとは信じるだけだった。

いつも使う階段よりも少し先にある階段までゆっくりゆっくり歩いた。
階段に到着して、時計を見る。
言ってる間にあと20分くらいだ。
仕事帰りの人が沢山利用する駅で、人通りが多い。俺は邪魔にならないように、階段の外で待った。
(なまえ)
あなた
お待たせし………っ…💦
彼女の姿が見えて、声をかけてくれようとした時、駅から上がって来た大勢の人達が、俺と彼女の間を通る。

少しの間、人の流れが阻んだ感じがしたけど、
駅から出てくる人達がひと段落すると、
途端にその場は静かになって、
彼女は、改めて俺に、声を掛けた。
(なまえ)
あなた
お待たせしました(・∀・)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
大丈夫でしたか?
無理言ってすみません。ありがとうございます。
お店のユニフォームじゃなくて、私服の彼女はちょっとイメージが違って、意外とカジュアル。仕事してる時って大人っぽく見えてたんだな。
(なまえ)
あなた
あ、すいません、こんな私服で(笑)。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いえ、そんなこと。
いつもはお店の制服ですもんね。
(なまえ)
あなた
ユニフォーム着て接客してるとちゃんとしたお姉さんに見えるみたいで………でもただの専門学校生です、私。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え…………学生さんだったんですか?でも結構お店に出てらっしゃいますよね……
彼女が笑い出したから、俺、なにか変なこと言っちゃったかなって…
(なまえ)
あなた
今、最後の春休みなんです(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ……あぁーーーそうですよね!確かに。あ、えと、てことは、あの、歳近いですかね、僕らと。
(なまえ)
あなた
20歳です。
カフェ系の学校に通ってて、もう卒業です。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
僕、19です。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そっか、そうなんですね。
卒業…最後の春休みって、そうか……。
ちょっと会話に詰まる。
正直、もしかしたらもう少し年上かなって思ってた。期待はずれとかじゃなくて。
すごい、きちんとして、しっかりしてるんだなって……。

あと、卒業って聞いて、
就職決まってたりしたら、会えなくなるかな、なんてことが心をよぎる。
(なまえ)
あなた
あの、で、お話って。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ〜〜そうでした!
そうだ。
この場であれこれ話してたら時間ばかり取らせてしまうところだった。

とはいえ……
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ぁ、でも、実は、特に…
(なまえ)
あなた
え?
(꒪⌓꒪)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いやその、ただ、少し、
もうちょっと話したかったってゆーか。
(なまえ)
あなた
(´ー`)
そうですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
変な意味じゃないんですけど、仲良くなれないかなーとか。
(なまえ)
あなた
私?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はい。
一番は、もう少し話したいっていう感じだったんですけどー。ほんとは、立ち話なんてするつもりはなくて、一度ちゃんと話したくて、電話かメッセージで話せたらって。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
連絡先、交換して頂けたら、それだけで今日はもう……そのことをお話したくて。お店じゃ流石に聞けませんでしたし………
頑張って正直に伝えた。
(なまえ)
あなた
私で良ければ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え…いいんですか?
(なまえ)
あなた
ダメですかね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いやいやいやいや💦ダメじゃないですダメなわけがないです💦
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あの、もし、僕が変なこと言ったりうざいことしたり嫌な感じだったりしたらその時はそっこー削除いやブロックして着拒して全無視してもらっていいんで!
(なまえ)
あなた
(笑)そんなことしそうに見えないですけどね( ・◡・ )
俺のこと、そこまで警戒してはいないんだ。
とりあえず、伝えたいことは伝えることが出来た気がする。
(なまえ)
あなた
どうします?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え。えっとー……
(なまえ)
あなた
電話番号。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え?
(なまえ)
あなた
電話番号、おっしゃってください。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
僕のですか。
(なまえ)
あなた
はい(笑)
他の人の番号はいりません🤣
きちんと突っ込んでくれたから、
俺も思わず笑っちゃって、
彼女もスマホをスタンバイしたまま笑ってくれてた。

俺が自分の電話番号を口頭で伝えると、
彼女は自分のスマホをポチポチしてて、
すぐに俺のスマホが鳴った……。
(なまえ)
あなた
それが私の番号です😊
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ、ありがとうございます!
登録画面にして登録しようとして、気付いた。
そうだ…まだ名前知らなかった。
俺の手が止まったからか、
(なまえ)
あなた
あなたです。
と、名前を教えてくれて、
漢字も一文字ずつ説明してくれた。
俺は入力した画面を見せて、確認してもらった。
(なまえ)
あなた
はい、合ってます。
そして、彼女は、自分のスマホを操作し始めるや否や…
(なまえ)
あなた
じゃあ、年下の先輩さんのお名前を教えて頂けますか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
……猪狩……蒼弥、です。
猪を狩ると書いて猪狩。
蒼弥は、草冠に倉、あおいって字と、
弓へんの、えっと…弥生のやです。
えーと、これです!
自分のフルネームを表示させたスマホ画面を見せた。
(なまえ)
あなた
綺麗なお名前ですね。
ちょっと待ってくださいね………メッセージアプリ……番号検索で出て来ますかね………あっ、これですか?
彼女はテキパキと俺のアカウントを特定し(笑)メッセージを早速送って来てくれた。
「あなたですよろしくお願いします」と。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え………ぁりがとうございます………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あの。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今日…あとでご連絡しても……
一瞬、
え?まだあるの?的な顔をされちゃったけど、繋がったタイミングって大事だと俺は信じてるから、ここで気を遣って引いたら今後も声かけづらくなってしまう気がして。
(なまえ)
あなた
あ、はい。
またあとでお話しますか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はい!( ̄∇ ̄)
お互い、ぎこちなく。
当たり前か。
こんな突然、仕事帰りに呼び出されて、話したいだの連絡先だのって言われて。
俺のこと、何者かもよく知らないだろうに。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
じゃあ……ひとまず、これで。
帰り、お気をつけて。
僕は少しあとで帰りますから。
(なまえ)
あなた
ありがとうございます。
でも私、ここから歩いて帰るんです(笑)。ですから、そんなにお気遣いなく。蒼弥さん…あー…蒼弥くん…?もお気を付けてお帰りください。またあとで。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お近くだったんですね。お家。
じゃあ、またあとで。
俺は深々と頭を下げた。
彼女が歩いて行くのを見送った。ずっと見ていたかったけど、ほどほどにして駅に降りた。

名前、覚えてくれた。

俺は、とてもじゃないけど、名前を呼ぶなんて出来なかった。第一、なんて呼んだらいいか分かんない。

家に帰るまで、
一人でただ帰っているだけなのになんとなくずっとソワソワして。
落ち着かなくて、まだ緊張してるみたいな。
とにかく、
1個目のミッションは完了したから、
次のミッション頑張らないと。

帰宅しても、まだソワソワしてた。
急いでご飯食べてお風呂入って…その間もずっと。
早く全部終えて、自分の部屋であとは眠るだけって状態で、彼女に連絡をしたかった。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今日はありがとうございました!
突然お声掛けしてしまって、すみませんでした。寝る前に少し、またお話が出来たら嬉しいです。疲れていたり眠かったら無理せずに。
暫く返信が無くて、
メッセージが来たら通知音鳴るのに、10秒ごとくらいにスマホチェックしてる俺。
なんでこんな気持ちなんだろ。
話したいとか、連絡したいとか……。
優斗について来ただけだったのに、最初は。
急激に思うようになったな。
最初のなんとなくドキドキ緊張してた感じも、不思議だった。

なかなか彼女からの返信は来なくて。

諦めてさっさと寝る事も出来ない。
だって、
気になるもん!

やっぱ嫌だったかなー…いきなり夜話しましょうって言われてもなー……そうだよなぁ…あーーー…………しかも制服の時と帰る時の雰囲気結構違ったから俺が勝手に期待してたところもある気がするし…いや、雰囲気違ったっていまだに心臓ドキドキはしてんだけど、でも俺の方が一個歳下だったし……え?なに?歳下関係ある?何言ってんだ俺。

自室のベッドで自分が今日したことに大反省会しながらのたうち回っていた時、やっと俺のスマホが鳴った。

メッセージの受信音。

(なまえ)
あなた
遅くなって申し訳ありません!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いえ全然。
うそつけ(笑)
(なまえ)
あなた
何かしながらお話しするのは嫌だったので、ぜーんぶ終わらせて来ました😆
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
僕もです。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
唐突なんですけど、なんてお呼びしたらいいですか?
(なまえ)
あなた
それ、私も悩んでました(笑)
一応お客様ですし……うーん、って。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
因みに優斗は、なんて呼んでます?
(なまえ)
あなた
優斗さん………優斗さんに名前呼ばれたことないです、私。名前を聞かれたこともないですし………
意外な答えに驚いた。
凄く凄く仲良く見えていたから。
(なまえ)
あなた
なんて呼びたいですか?(笑)
多分最初だけ違和感あると思うんですけど慣れたらそれが普通になると思うので呼びたいように呼んでください😊
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
えーーー……難しい。。。
(なまえ)
あなた
この調子だと、なんて呼ぶかだけで朝になりますね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なりますね(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
一個提案なんですけど、なんて呼びたいかもこれに影響されちゃって分かんなくなってるとこあるなって思うんですけど……それに僕が言うのもそもそも失礼な話なんですけど、あの、僕お店に伺った時はちゃんとするんで、お店じゃない時は、敬語…はずしません…か…。
(なまえ)
あなた
それは、私もですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
もちろんです。
(なまえ)
あなた
どのタイミングで?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今。
(なまえ)
あなた
いま?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、このまま敬語やめて話そ。
(なまえ)
あなた
でも。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺、いまお客さんじゃないもん。
俺の中で、
もう一人の俺が「頑張れ!」って応援してくれている٩( ᐛ )و
怯むな俺。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
さっきまでは店員さんとお客さんだったけど、今もうお互いOFFでしょ?
(なまえ)
あなた
そーーーうだけ…ど………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。それでお店ではお互いちゃんとしようよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんか、お客さんのまんま仲良くなってくほうがヤバい気がして、俺。
(なまえ)
あなた
そんなに器用に出来るかな………私。
もしかして、ものすごくものすごく、気を遣ってくれてるような気がして来た。
それに、
店員さんとお客さんの時と違って、ちょっと敬語無くしただけで、途端に幼くなる感じ、女の子って感じになる。俺も多分お店では「お姉さんと喋ってる」感じだったのが、敬語じゃなくなると対等に話してる感じになってるだろうな。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お店の時は俺がちゃんとするから大丈夫。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
普通に喋って。
(なまえ)
あなた
うん。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
……………で?

( ̄▽ ̄;)

やばい、ここで全力尽くしすぎた。
(なまえ)
あなた
よし。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え?どしたの(笑)
(なまえ)
あなた
大丈夫です、もう敬語無しでいけます!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いや、敬語(≧▽≦)
(なまえ)
あなた
あ。
なにこれ、めっちゃ可愛くない?
やば………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あなたの下の名前ちゃんって、オンオフ激しいね。
(なまえ)
あなた
そう?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、違う人みたいになる。
(なまえ)
あなた
接客は、学校でも叩き込まれるからかも。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そっか、カフェ関連の学校って言ってたもんね。ちょっとお姉さんに見えてた。
名前、呼んでみたけど、何も言われなくてホッとしてた。
お店だとあなたの下の名前さんって感じだけど、今は絶対にあなたの下の名前さんではない。
(なまえ)
あなた
私は逆です。
(笑)また敬語………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いいよ、混ざってても。あんまり気にしないで話してって意味だから。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
逆って?
(なまえ)
あなた
まだちょっと可愛いっていうか幼さもあるかなって思ってたんだけど、お店では。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺?!
(なまえ)
あなた
うん。
でも今は全然印象変わった。
年上のお兄さんみたい。
(なまえ)
あなた
だから、お名前どう呼ぶか迷子になってるよ。普段なんて呼ばれてるの?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
猪狩〜!とか(笑)。
(なまえ)
あなた
全然参考にならないんだけど(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
(笑)
優斗は、猪狩とかガリさんとか呼ぶ。
今日一緒に居た他の人はガリさんって言うかなー。親は蒼弥って呼ぶよ。
(なまえ)
あなた
末っ子さんなのに、皆さんからさん呼びされてるんだね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
(なまえ)
あなた
正直に言うとね、
聡明そうだから、イメージは蒼弥さん、なの。でも、最初にそう呼んでしまうともうそこから抜け出せなくてそれも寂しいな…って思って。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
分かった!じゃあ、蒼弥「くん」で!
(なまえ)
あなた
なんか、さっきあなたの下の名前ちゃんって言われたから、幼稚園の友達みたい(笑)
なんだろう。
いちいち言うことが可愛い。

つくづく、個人的に話す機会にこぎつけて良かった。ほんとに良かった。
(なまえ)
あなた
蒼弥くんって感じでもないんだけどなぁ………消去法で蒼弥くんかな、やっぱり。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
でも所詮まだ19歳っすよ。
それに、小生意気なこと言うと、
蒼弥さんだと俺もちょっと寂しいから、今のとこ蒼弥くんで大丈夫。
(なまえ)
あなた
うん、そうする。
じゃあ、蒼弥くんは何してる人?
優斗さんたちとよく一緒に居るってことだよね?なんのお友達?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
何してる人…んー…色々してる。
エンタメ業界の人、かな。
社会人だよ。
(なまえ)
あなた
それってどんなお仕事?
音楽とか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、音楽もだしー、ダンスとか芝居とかもだしー、色々。勉強しながらやってる。
(なまえ)
あなた
優斗さんたちも一緒にってこと?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そうそう。
(なまえ)
あなた
じゃあお友達というより、仕事仲間みたいなことなのかな。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そうだね。
同じチームみたいな。
今度見せてあげるよ。
(なまえ)
あなた
見せる。何を?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺らがやってる芝居とかダンスの映像。
(なまえ)
あなた
うん、見たい!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
多分……惚れますよ……
(´ー+`)キラ…
(なまえ)
あなた
え、誰に?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
この流れで優斗なわけないでしょ💦
(なまえ)
あなた
蒼弥くんに?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
(なまえ)
あなた
惚れたら相手にしてくれる?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
勿論。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だからなるべく俺が一番かっこいいやつ見せる(笑)。
(なまえ)
あなた
計算高いなあ………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
違うって、計画的って言ってよ計画的って。
気が付いたら、自然に普通に楽しく話せてた。
時間忘れるくらい。
変な緊張ももうあんまりなくて。
俺だけかな。
彼女もだといいな。
(なまえ)
あなた
楽しみにしてるよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。してて。
俺、今から超探すから。俺だけカッコいいやつ。
(なまえ)
あなた
うん。あるといいねー。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あるって!絶対に。
どっかに……
あるはず……💦
(なまえ)
あなた
今日は、ありがとうね。
え………そっか……もうこんな時間…

(´◦ω◦`)

猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
こちらこそ。
無理ばっかり言って、
全部叶えてくれてありがと。
(なまえ)
あなた
え?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だって…そうじゃん。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんかね、今、今日はありがとうって言われて、なんでか分かんないけど名残惜しくなった。
(なまえ)
あなた
うん、楽しかった。
ちょっとは普通に話せてたかな、私。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、無理しなくていいけど、敬語のままだったら絶対こんな話してないよ?
(なまえ)
あなた
そうかも。
(なまえ)
あなた
じゃあ、今夜はここまでで。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
(なまえ)
あなた
また明日ね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、また明日……え??
また明日?!
(なまえ)
あなた
じゃあ明後日?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ううん………
また明日。
おやすみ。
(なまえ)
あなた
おやすみなさい。
なんだよこれ。
なに。
もう。
これまでと違う意味で緊張してきた。

この数時間、
頑張った自分を全力で誉め讃えたい。

こんなキュンキュンしてて俺寝れるかな…

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