俺のほっぺが好きなんだって。
いつもあなたの下の名前が言う。
聞き飽きるくらいには言われてるんだけど、何回言われても、まぁ悪い気がしないよね。
明らかに何かある顔してるのに。
俺が黙って、自分の頬を指先でトントンってやると、首に腕回して来て俺のほっぺに唇を当てるんだ。
キスするとかじゃなくて、
ほんと、
唇を当てるって表現しか出来ない感じ。
なんだろ、唇でほっぺに触れたまんま暫くじっとしてるみたいな。
学校で何かあったか…バイト先で何かあったか……それとも家族と何かあったとか……友達関係かな…なんだろ。
俺は、事情がわからないなりに、あなたの下の名前の頭を撫でながら、暫くそのまま居た。
気が済むまでこうしていたらいい。
暫くすると、そっと俺から離れる彼女。
やっとあなたの下の名前の顔を見れた俺は、今の今まで俺のほっぺに触れてた唇に軽くキスをする。
クスッと伏し目がちに笑ってる。
満足そうに、愛おしそうに、俺のほっぺを手の甲で触りながらニコニコしてる彼女。
さっきまで少ししんどそうだったけど
今は優しい顔してるから、少しは楽になったかな。
結局、何があったのか、分からずじまいで、俺には何も出来なかった。
そんな嫌なことあった時でも、あなたの下の名前は、俺と逢って過ごしてくれるから、それでいいか。って思う。
あなたの下の名前が言う「手伝って」は、
隣に居て、時々味見してっていう意味(笑)。
途中で、ひと口、食べさせてくれるんだ。
もぐもぐ食べる俺のほっぺをまた指先で触ってくる。幸せそうな顔して。
喋ってる間にいつも、ご飯が出来ちゃうんだ。
俺、隣で時々食ってるだけなのに。
2人で、ご飯をテーブルに運んで、
一緒にいただきますして、食べる。
身を乗り出して俺がほっぺを差し出すと、
クスクス笑って、すごく優しく、もぐもぐしてる俺のほっぺに触れるんだ。
もぐもぐしながら、話を聞いてたんだけど、急にそんなこと言われたからびっくりしちゃって、止まってしまった。
俺が食べてる姿をただ見てるから、もういらないのかなって思って。
食べ終わった空いたお皿を洗って少しずつ片付け始めてる彼女をよそに、俺はお腹いっぱいになるまでご飯を食べた。
自分のお皿や器をキッチンに持っていく。
洗い物してるあなたの下の名前の肩に顎乗せたら、彼女はちょっとくすぐったそうに笑う。
食器を拭きながら、
やっぱり俺は、あなたの下の名前が言ってた「嫌な気持ちになった出来事」が気になって心配で。
改めて深刻に尋ねても話してくれなさそうだし、でも、2人で片付けしながらだったら、少しだけでも話してくれないかな…
俺は手にしてるお皿を一旦置いて、
洗い物を終えて手を拭いていたあなたの下の名前の肩を掴んで俺の方を向かせた。
俺、ついていかない…………感情が😱
あなたの下の名前は俺の顔見て笑い出す。
笑う話じゃないっ( ̄  ̄)
むーーーってなってる俺のほっぺを触ってニコッとしてごまかす。
サラリとそう言ってまだ俺のほっぺに手を当てる。
あまりにも当たり前みたいに話す彼女に何もしてあげられなくて、だんだん気持ちが落ちてくる。
よくわかんない奴に毎朝触られてるあなたの下の名前より、俺の方がどんよりしちゃってる。
いつも俺のほっぺにチューしたり触ったりして幸せそうにしてる彼女の、初めて聞く話が俺にはちょっとダメージでかくて。
そんなん俺のほっぺくらいで癒せるわけないじゃんって気持ちになった。
でも彼女は、
なんて笑ってるんだ。
俺は自分のほっぺを、あなたの下の名前の唇に当てるように、彼女の頭を手で優しく支えて少しかがんだ。
あなたの下の名前はまた俺のほっぺに触れてニコニコ。
いっちょ前に、いつかもうちょっと大人になった時に、あなたの下の名前が満員電車なんか乗らなくていいように、いつも俺のことだけ考えてニコニコしてられるように、俺がそう出来たらいいな…………
と思った。
ほんと触り心地良すぎ〜〜〜💕
って嬉しそうだし、いっか。
あなたの下の名前が好きって言ってくれるほっぺをキープする使命を心に刻んで、明日からまたご飯いっぱい食べようと思いました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!