起きない………ほんとに起きない…。
いつものことだけど、なんでこんなに起きないのか。
蒼弥の部屋に時々泊まるようになってから分かったこと。
この人は、自分の家だと本当に起きない。
私の部屋に泊まった時は私に合わせて起きてくれたり、自分がまだ寝ていられる時でも私と一緒に家を出たりして、決して私の家に自分だけで勝手に居るみたいなことはしない人。だから合鍵も渡してない。合鍵を持ち合うとそれが当たり前になってお互いの生活エリアが曖昧になってお互いズカズカ踏み込んでなあなあになりかねないからいらない、って予め言ってくれてる。
でも自分の家の時は私が蒼弥の家を出る時も寝てる。
起こしてって言われてるから起こすけど起きない(笑)。
いつも私は、蒼弥の頭をぽんぽんしてこの部屋を出る。
そして
私がランチタイムのことを考え始める頃になって……
と、定型文みたいに同じようなメッセージが入る。
私と蒼弥は、
稼働してる時間帯が違ったりするし、
蒼弥は私よりも不規則な仕事をしていたりするから、これも仕方ない。
こうしてちゃんと連絡くれるのがありがたい。
夜。
私の方が少し早く仕事が終わったので、蒼弥に合わせて待ち合わせ。
仕事終わりの時間帯が似てる日は大抵こうして外で待ち合わせをして、一緒に食事をしたり、少しお買い物したり。
休みも基本合わないから、
貴重なデートの時間。
どっちかが極端に帰りが遅い日は無理して会わないようにしてる。
どっちかの家にダラダラ居付くみたいなことも、私たちは極力気を付けて避けている。
相手の暮らしにお邪魔してるっていう感覚を失いたくないねって、結構最初の頃に話し合って決めたこと。
安定して、長く一緒に居るための、
なんとなくの、2人の匙加減みたいなのがあるんだよね。
さりげなく私の頭を撫でて、
さりげなくキュッと自分の方へ寄せる。
二度寝確定なんだな(笑)。
こんな風に、お互いのペースを乱すことなく、付き合ってる。
一緒に外食の時も、好きなものをお互い食べて、それぞれ満足して帰る。
身体をゆさゆさしてもダメ。
頭ポンポンしてもダメ。
ほっぺをペシペシしてもダメ。
腕を引っ張って起こそうとしてもダメ。
なんかちょっぴり優越感。
私だけ、得した気分。
もう可愛いから、
本当はあんまり起こさなくてもいいかなって思ってる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。