第2話

そつぎょうしき。
1,719
2021/08/21 06:36
もうすぐ先輩たちの卒業式がある。
先輩たちが学校から去っていくのは寂しいけど、新しい門出でもあるから、お祝いの日。

と同時に、卒業にあたって、みんなソワソワし始める。

卒業式に、好きな人に想いを伝えようとか、記念の品を貰いたいとか。
うちの学校は、いつからか知らないけど、1番は名札や校章と連絡先をセットで貰えること、となっている。
お母さんに言ったら、お母さんの時代も学ランの第二ボタンを貰うとかそういうのあったらしい。古い習慣がうちの学校にもなんとなく残ってるってことか。
(なまえ)
あなた
あっ、蒼弥先輩!
こんにちは!お疲れ様です!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
おう、おつかれ。
何やってんの。
(なまえ)
あなた
なにって💢
教室戻るところです。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そうなんだ。じゃ。
(なまえ)
あなた
ちょ、ちょ、ちょちょちょ、待ってくださいよ!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんだよー(笑)
(なまえ)
あなた
先輩が部活引退されてから会う機会減ったから、嬉しくて挨拶してるのに、なんでそんなに迷惑そうなんですか(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前こそなんでそんなに偉そーなんだよ、しかもなんでそんないつも元気いっぱいなんだよ💦
(なまえ)
あなた
いつもどんよりしてるよりいいじゃないですか。あの、蒼弥先輩、お願いがあるんです、私!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
やだ( ̄ー ̄)
(なまえ)
あなた
なんでですか、ちょっと待ってくださいよ(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前のお願いロクなことじゃねーだろ。
(なまえ)
あなた
重大なお願いですってば。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
はいはい、わかったわかった。
なに?言ってみな。
(なまえ)
あなた
卒業式終わったら、名札か校章と連絡先セットで私にください!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
寝言は寝て言え。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
つーか、俺の連絡先知ってんだろーが(笑)
(なまえ)
あなた
知ってますけど、あれは、部活の連絡とかのためで………普段蒼弥先輩に個人的に連絡していいってことじゃなくないですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
当たり前。
(なまえ)
あなた
だーかーらー💦
卒業したら、学校では逢えなくなりますし、「いつでも連絡して来いよ」みたいな❤️
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
やーだ。
(なまえ)
あなた
なんで!(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だって、いつでも連絡してこいよって1ミリも思ってねーもん。まあ………そうだなー、じゃあ、何か残ってたらやるよ。
(なまえ)
あなた
ちがーう!残ってたらじゃなくて〜〜〜残ってないかもしれないから今言ってるんです!分かります?予約です予約!先行予約!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前に先行予約する権利はない。
一般で頑張ってくださーい。
(なまえ)
あなた
もう!冗談は顔だけにしてくださいよっ!私のこと見えてます?!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ふざけんなよ(笑)目開いてるわ!💢
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
マジお前いつもいつもうるさすぎ、勘弁してくれよもう………ほらチャイム鳴ったぞ、じゃな。
蒼弥先輩は、
私の部活の先輩で、前から仲良くしてもらってる先輩です。
決めるときは決めるカッコいい先輩だけど、時々びっくりするタイミングで間抜けな一面を披露してくれる可愛いとこもあって、憧れとは少し違うけど、大好きな先輩。
なんだかんだ文句言いながら、相手してくれて、面倒見てくれる。

まー、分かりやすく言うなら、
私が懐いてるって感じかな。
(なまえ)
あなた
先輩!
蒼弥先輩!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
まーたお前かよ。
(なまえ)
あなた
またって何ですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いや、だって、まただろ。
(なまえ)
あなた
名札か校章どっちかと、連絡先、卒業式終わったらください!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
やだ。
(なまえ)
あなた
蒼弥先輩、あの、卒業式の先行予約………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うるせー(笑)。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
先行予約制度はお前には適用されませーん😝
まあ最後尾に並んでもらって、余ってたらなんかやるって言ってんじゃん。
(なまえ)
あなた
あーーーそーですか!そーですか!
じゃあ最後尾に並んで身包み剥がしてやりますよ!服着て帰れるといーですねっ💢
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え、お、俺…高校生活最後の日にそんな目に遭うの…:(;゙゚'ω゚'):
(なまえ)
あなた
多めに着込んでおいた方がいーんじゃないですかー
(なまえ)
あなた
って、そうじゃなくて!
ほんとにほんとに、欲しいんです、お願いします、私に名札と連絡先を〜それか校章と連絡先を〜それか名札と校章と連絡先をください〜〜〜〜(T ^ T)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前、必死だな。
(なまえ)
あなた
はいっ(*`・ω・´)ノ
だから是非とも先行予約を!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いーやーでーすー
何度頼んでも、
やだ!無理!って言われて終わるんだけど、
めげないで頑張った。

校内で見かけるたびに声を掛けて。
またお前かと言われても、うるさいと言われても、お互い憎まれ口叩いてても、どこかで少しは伝わってると信じるしか無かったし信じたかった。
そして、ついにこの日がやって来た。
蒼弥先輩たちの卒業式。

学校行事としての卒業式が終わり、
各クラス、教室で最後のホームルームがあり、
私たち後輩も、帰る子は帰って、親しい先輩方を待つ子もいて、勿論好きな先輩を待つ子もいて……。

私は勿論、蒼弥先輩を待ちたかった。
というか、最後の悪あがきをさせてくれと思ってた(笑)。

中庭から校門に繋がるちょっと広いところに、先輩方は友達同士でおしゃべりしたり、仲間で集まったりしてて、後輩連中はまばらに、その様子を見ていて、多分、タイミングを見計らってる感じ。

しばらくして蒼弥先輩が校舎から友達何人かと出て来て、喋ってたから、私はそれがひと段落ついた時に声を掛けようと思って見てた。
蒼弥先輩が居た集団がゆるっとひとまず解散みたいになった雰囲気の時に私がそこに向かおうとしたら………
作間龍斗
作間龍斗
あの。
あなたの下の名前ちゃん、ちょっといい?
振り向くとそこには作間先輩。
作間先輩は、あんまりじっくり話したことがない先輩だけど、機会があって話す時は凄く優しくて誠実で人当たりの柔らかな人。
(なまえ)
あなた
作間先輩………あ、えと、ご卒業おめでとうございます。
作間龍斗
作間龍斗
お、おう…ありがと。
いや、あのさ、なんか突然ぽくなっちゃって………申し訳ないというか、なんだけど……これーーーー…あなたの下の名前ちゃんが貰ってくれない?
周りに、作間先輩を待ってた子達もちらほら居たのにお構いなしに、こういうことする(笑)。
作間先輩は、小さなメッセージカードと名札を私に手渡してくれた。メッセージカードには連絡先が書いてあった。

作間先輩越しに、ほんの一瞬だったけど蒼弥先輩と目が合った………気がした。お互いすぐそらしたんだけど。


次に蒼弥先輩を見た時にはもう、蒼弥先輩の周りには数人の女の子たちが居て順番に何か貰ってるみたいだった。名札は、校舎の外に出る時に外すから、誰かにあげたのかどうかは分からなかったけど、遠目にも校章は既に取り外されてるのは分かった。
作間龍斗
作間龍斗
連絡……よかったら連絡して。
(なまえ)
あなた
作間先輩、あの、これは…頂けません。
作間龍斗
作間龍斗
え……どうして。
(なまえ)
あなた
貰いたい人が居て、私………
その人のしか、欲しくないんです。
私は、蒼弥先輩のことが気になりつつも、目の前の作間先輩から条件反射で受け取っちゃった名札と連絡先を丁寧にお返しした。
作間龍斗
作間龍斗
じゃあ、あの、連絡先のカードだけでも………
普通に、お互い連絡先は知ってるけど、もう部活での付き合いは無いし………何かあったら連絡くれて良いし、協力出来ることもあるかもしんないから。
(なまえ)
あなた
あ……はい。分かりました。でも、協力って………
私が作間先輩と話している途中に、向こうから蒼弥先輩の声が聞こえて来る。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あー、はいはい、もう無いよ!終わり終わりーっ!おつかれさーん!
なんか、胸が苦しくなっちゃって。
悲しいのを堪えた。
作間龍斗
作間龍斗
ガリさんのことなんでしょ?
さっき言ってた人って。
(なまえ)
あなた
はい。でももう貰えないみたいです。
頑張ったんだけどな……だいぶ前から欲しいって言い続けて……もっとちゃんと………お願いしたらよかったかもしれないです。
作間龍斗
作間龍斗
俺が邪魔しちゃった……?ごめん…
(なまえ)
あなた
いえ、そんな!そんなことないです。
作間先輩がいらっしゃらなくても、きっと貰えなかったので。
いつも、欲しいってお願いしてもヤダって言われてましたし、作間先輩みたいに名前で呼んでくれなくていつもお前とかでしたしね……
私はもう蒼弥先輩の方を見れずにいたけど、友達に呼ばれて蒼弥先輩は
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
おうよ!帰るか!
と威勢よく大きな声で言ったから、
待っててくれないの?って思ってしまって、一度だけチラッと目線を向けたら校門を出て行く蒼弥先輩と目が合った…………けど無表情でさっと目を逸らして行ってしまった。
(なまえ)
あなた
貰えなくても、蒼弥先輩のじゃないと嫌なんです。生意気ですいません。どうせ貰えないのに諦め悪くてアホですよね私(笑)。
でも、
ありがとうございます。
びっくりしました、作間先輩がこんな、私なんかに。
作間龍斗
作間龍斗
いやいやこちらこそありがとうよ。
ちゃんと話してくれて。
ていうか、ガリさん、ヤダって言ってたの?!何様(笑)。
(なまえ)
あなた
あの、作間先輩、もう皆さんお待ちかねだから……私、もう失礼しますね。ありがとうございました。
作間龍斗
作間龍斗
あっ、そうね、うん、こちらこそありがと。ガリさんのことでなんかあったら俺からも連絡するからそんなに悲観的に考えないで安心して。協力出来ることはするから、俺。じゃあね。
作間先輩の名札を受け取らなかったくせに連絡先だけもらっちゃったから、帰り道こりゃ刺されるな…とか思いながら、友達にだいぶ話を聞いてもらい沢山泣いて、まあでも友達にもこれ以上終わりのない話をし続けられないから、一人でトボトボと歩いて帰ってたけど、全然家に帰りたい気持ちじゃ無かった。
いつもの通学路からちょっと路地を入ったところの小さな公園の1番奥の隅っこのベンチを見つけて座った。

雨が降って来て、もう、余計に惨めな気持ち。


あーーー。

終わっちゃったな。

あんなに、「くださいください」お願いしていて結果貰えませんでした残念〜おしまい〜なんてさ。

何時間経っただろ。
いま何時かな。
だいぶ悲しみに暮れて(笑)泣き続けて、スッキリしたかも。

(なまえ)
あなた
よし、帰ろ!大丈夫、大丈夫!
雨で色々洗い流しながら帰ろ!
意外と軽やかな気持ちで公園の外へ出て帰り道に戻ろうとした時。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前おせーんだよ。
(なまえ)
あなた
………なんで?!蒼弥先輩なんで?!
え、え、え、混乱………ほんとに…どうして…ですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ふふっ、お前さあーー。
相変わらずうるせーな。
(なまえ)
あなた
いやだから、なんで?!って聞いてるんですよ💦
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
は?なんでって、お前の友達の…なんだっけ名前…いつも一緒にいる子いんじゃん?あの子から連絡来て。
(なまえ)
あなた
へ?!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だーかーらーうるせーっての。
(なまえ)
あなた
あ、えと、ちょっと落ち着きますねっ。
深呼吸、深呼吸。びっくりするじゃないですかもう!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
つか、全然帰って来ねーと思ってたら、なにこんなとこで寄り道してんだよ。寄り道長すぎだろ(笑)。
(なまえ)
あなた
帰って来ないって何ですか?どこに?誰が?え?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
深呼吸の効果全然無いな、お前。
(なまえ)
あなた
だって……
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
話せなかったから。
(なまえ)
あなた
はい。話せなかったから…???
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だから!
んー、そのさ、だから
(なまえ)
あなた
落ち着いてください!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前に言われたくねー💧
(なまえ)
あなた
まあまあ、そう言わずに。
はい、落ち着いて、どうぞ。(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だからー!
………まさかの…先越されたから。
その………作間に( ̄^ ̄)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
でも、話せなかったなーと思ったからさ。
待っててやったんだよ、お前の家の近くで。
(なまえ)
あなた
え。嘘…。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ぜんっぜん帰って来ねーし。
俺の知らないとこでもう家の中にいんのかなって思ったりしたけど、さっき言ったお前の友達さん?から連絡来て色々聞いた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ここにまだ居るかもってことも聞いて。
仕方ないから迎えに来てやった。
(なまえ)
あなた
色々ってなにを、どこまで聞いたんですか?!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
どこまで、かな。
友達から後で聞いたと思うけど、名札も校章もとっくに無くなったって。
(なまえ)
あなた
あーーー………そう、ですね。聞きました。
作間先輩に捕まっちゃった……言い方悪いですね(笑)作間先輩と話してる間に……なんかその、蒼弥先輩の色々ボタンとか欲しがる子達に「名札と校章はもう無いよ」ってずっと言ってたって聞いたので。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
作間にもさっき連絡取って話したわ。
(なまえ)
あなた
えっ。作間先輩と話したんですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、聞いた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前の友達に作間のことも聞いてみたんだけど、それは作間先輩に直接聞いてくださいってさ。
ったく、紛らわしいんだから……俺、早とちりしてて、全然帰って来ないのは作間と居るのかなって。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
まー、作間と居るし、俺の名札とかもうどっちみちいらなくなったよなーって思ったりしてて。
(なまえ)
あなた
えっ、待って。待ってください、それは違…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、だから作間に全部聞いてびっくりしたわ。びっくりしたし怒られたし色々とショッキングだったね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
てか、傘入るか?
今更感満載だけど(笑)
(なまえ)
あなた
いえ、いいんですいいんです!
今時間をかけて私の中から蒼弥先輩を洗い流す作業中だったんで。だいぶ身軽になったから帰りながらラストスパート綺麗さっぱり洗い流して終わるぞーって思ってたのに、何でこのタイミングで流れてたやつ押し戻してくるみたいな(笑)逆流させるのやめてもらえます?どーゆーことですか🤣
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
洗い流す?
(なまえ)
あなた
はい!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
身軽?
(なまえ)
あなた
はい!体重減ったかもです!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
サラッと俺の体重ディスるなよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
しかも終わるって何。
(なまえ)
あなた
だって、無いものは出せませんしー、グズグズ拗ねてても貰えないものは貰えないじゃないですか。あんなに先行予約しといてくださいって言ったのに!!💢
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だからお前に先行予約権はねぇって言ってんだろ(笑)
(なまえ)
あなた
ほんとに先行予約出来てなかったんだなぁって…………ほんとに嫌だったんだなぁって。なのに勝手にもしかしたら貰えるかもとか。痛いなー私!って反省してました。でももう平気です。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そか。
(なまえ)
あなた
はい!
蒼弥先輩は、私の切り替えの早さを褒めてくれて(だから何様w)、さっきよりももっとちゃんと傘に入れてくれた。
(なまえ)
あなた
すごーい。蒼弥先輩とこの距離初めてかもですね!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前なー………
(なまえ)
あなた
なんですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
いや、なんつーか、雨の日にちょっと雨に濡れちゃって困ってる女の子のレベルを大幅に越えすぎだろ。どんだけずぶ濡れなんだよ。もはや傘の意味ねーわ。タオルとかハンカチないの?
(なまえ)
あなた
あっ、ありますよ!(*'▽'*)
(なまえ)
あなた
でも。
長い時間、雨に濡れたバッグから出て来たタオルは、当たり前だけど洗濯直後状態💧
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だよな……( ̄▽ ̄)
まあそーなるわな。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
つか、お前。
(なまえ)
あなた
なんですか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
こんなずぶ濡れじゃ、どっか店にも行けないし、何とかしろよ。みすぼらしい(笑)。
(なまえ)
あなた
はいはい、なんとでもー😛
私、この数時間で、蒼弥先輩に何言われてもダメージくらわない体質に成長したんでー♪
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ダメージなんかくらったことねーだろ。
(なまえ)
あなた
何で知ってるんですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だってお前、俺がどんだけ無理ヤダって言っても、全然めげずに向かって来てたじゃん。鋼のメンタルだなって感心してたわマジ。
(なまえ)
あなた
でも今日のはなにもかもゼロになるくらいの救いようの無い悲しい最終回みたいな感じでしたよ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
最終回。か。
(なまえ)
あなた
今まで蒼弥先輩と色々憎まれ口言い合って、あーでもないこーでもない、ああ言えばこう言うみたいな喧嘩?(笑)そう喧嘩みたいなのばっかりでしたけど、面白かったですし、私は結構楽しみにしてたんですよねー。でも今日でぜーんぶ終わって、この先の展開も何もなくて、何も残っていないから、逆に清々しくて良かったかもです!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あのさ。
私がこれ以上雨に濡れないようにしながら、蒼弥先輩はポケットに手を突っ込んだ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
悪い。ちょっと傘持ってて。
ポケットから、何かを取り出すと
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ありがと。
と、傘をまた蒼弥先輩が持ってくれた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
散々色々と最終回の話聞いといて、どう考えても遅すぎるんだけど。
実は、お前の先行予約、偶然うまいこと取れちゃってたんだよね。
私に手渡してくれたのは
蒼弥先輩の名札と校章だった。

私は、動揺しすぎて、何も言葉が出なくなっちゃった。

ただただ自分の手の中にある蒼弥先輩の名札と校章を見ていた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ、あと、これも………
クシャクシャになった紙。
蒼弥先輩はそれをそのまま私に渡したから、広げてみると、蒼弥先輩の連絡先と「いつでも連絡してこいよ」という言葉が綺麗な字で書いてあった。
(なまえ)
あなた
えっ………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんだよ。文句ある?
(なまえ)
あなた
何でこんなクシャクシャなんですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そこ(笑)。
だって……お前が作間と……
イラついて…あーそうかよ勝手にしろよって……それで…クシャッと………
(なまえ)
あなた
えええっ?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だからなに。
(なまえ)
あなた
蒼弥先輩…………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
だって普通お前が1番に来ると思うじゃん!作間に声かけられる前に俺んとこ来いよ、どんくさすぎんだろ。
(なまえ)
あなた
蒼弥先輩が…嫉妬…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
は?!💢
(なまえ)
あなた
これ、私が貰っていいんですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。当たり前。お前のだから。
(なまえ)
あなた
本当に?
(なまえ)
あなた
すごい………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
え?
(なまえ)
あなた
なんていうか………最終回のエンディング流れた後にまだちょっとだけオチあったみたいな…………
私は蒼弥先輩から貰った名札と校章と連絡先を大切に胸に当てて喜びを噛み締めた。
(なまえ)
あなた
あーー❤️超嬉しい………はっ、ヤバい!私ずぶ濡れだった!💦
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
(笑)じゃあ俺が持っててやろうか?明日まで。どうせバッグの中に入れても濡れちゃうんでしょ。
(なまえ)
あなた
あーー……もう、おっしゃる通りで…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん、じゃあ明日改めて渡すよ。
今日は俺が預かっといてやるから。
連絡先はもう知ってるだろ?まあでも、ちゃんと書き直すよ。
(なまえ)
あなた
それはダメです!!!
誰かが奪いに来るかもしれないから。
で、明日ってなんかありましたっけ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
誰も奪いに来ねぇし。
(なまえ)
あなた
でもー……心配だから今日このまま持って帰りたいです!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そうか。
んー、じゃあ、とりあえず今は俺が持っておくから、名札と校章は家の前で渡すよ。そしたら、濡らさずに済むでしょ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今日はこのままお前の家まで送るから。
(なまえ)
あなた
え…………ちょっと…蒼弥先輩、どうしたんですか。怖いんですけど!でも頂いた名札と校章は渡しません。もう返しませんよ。私が持ってます。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そんな俺信用ならない感じなの(笑)。まあ…じゃあ大事に持っててください。
てか、俺が優しいと怖いか?
(なまえ)
あなた
はい。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そんなことないって言え。
(なまえ)
あなた
言えません!ほんとに怖いから(笑)。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あと大事に持ちすぎ(笑)
両手で大事そうに名札と校章を持っている私を見て笑ってる。そんなに変かな。欲しかったものを貰えたら、みんな、嬉しくて大事に持ってるんじゃないのかな。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
優しく感じるのは……
(なまえ)
あなた
はい?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前の友達と作間から色々聞いちゃったから、かも。もう喧嘩しなくてもいいかな、とかも思ったし。
(なまえ)
あなた
喧嘩が通常運転でしたもんね。
(なまえ)
あなた
あっ、それで明日ですよ!
卒業式の次の日って何の日なんですか?!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺とデートする日に決まってんだろ。
(なまえ)
あなた
そんな日、初耳なんですけど(笑)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なんか買いに行く?
(なまえ)
あなた
なんか?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。なんか。
だって、俺から名札と校章貰ったって、別に一方的に貰っただけで、学校で使えるものでもないじゃん。
(なまえ)
あなた
それで?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ちょっと待て。
俺に興味持てよ。
(なまえ)
あなた
だって、お陰様で洗い流してしまいましたからねー
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
どの口が(笑)。
そんな大事に名札と校章持ちながらよく言うわ。
(なまえ)
あなた
ふふふっ(〃艸〃) ニヤける〜
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
明日からもう学校に俺は居ないから、
なんか持ち歩けるもの買いに行くか?お揃いとかペアのものとか。
(なまえ)
あなた
え………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
引くな。おい。
(なまえ)
あなた
蒼弥先輩、ひとつ聞いていいですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なに。
(なまえ)
あなた
作間先輩に、私のこと、何か言われたんですか?なんとなく、思ったんですけど。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
言われた。
(なまえ)
あなた
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
優しくしてやれよってめちゃくちゃ怒られた。
俺がいつも、うるせーなとか、またお前かよとか言ってたから、今日の俺を見て、本当に私のこと嫌いだったのかもって言ってたって………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あと………作間がいなくても、きっと俺からは何も貰えなかったと思うってしょんぼりしてたって…………頑張ったけどダメでしたって言ってたって………
あと、
作間の方から名札貰ってって言ったけど受け取って貰えなかったことも。
(なまえ)
あなた
あ………
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
勝手に、嫌われてるとか、どうせ貰えないとか、終わったとか。
好き勝手に言ってくれたもんだな。
(なまえ)
あなた
それは、すみません。でもそう思ったから。
蒼弥先輩は勘違いして、私は終わったと思い込んだ…?ってこと?ですかね。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺は、お前と作間がうまくいっちゃうのかなって思ってしまって。でもほんとはお前は俺の以外いらないって、俺のじゃないと嫌だと言って、作間の名札は受け取らなかった。
お前は、俺の名札や校章を貰えなかったし卒業式なのに俺がお前をスルーして帰ったと思ってしまって、でもほんとは俺はお前に渡したくて名札と校章と連絡先の紙を用意してたからみんなには無いって言ってた。
(なまえ)
あなた
蒼弥先輩。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ん?なんか俺喋りすぎた?
(なまえ)
あなた
そうじゃなくて。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なに、どしたの。
(なまえ)
あなた
これは………奇跡の両…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あーーーー待ってストップ!俺が言う!俺が言う!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
やべー、いきなり来るなよ、
焦ったぁぁ。
なに、もうここで今日決めちゃう感じ?
(なまえ)
あなた
決めるとか分からないですけど。
でも、俗に言う相思s…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あぁぁぁぁ〜〜〜!💦
分かった、分かったから。
蒼弥先輩は、慌てていて、私が確かめたいことを阻止してくる。
確かめたらいけないのかな。
まだなんとなくで居ないといけないのかな。

あまり人気のない道で
蒼弥先輩は、私の前に立つと、
なんの前触れもなくスラスラと早口で言ってくれた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前ばっかり頑張らせてごめん。ほんとは俺、ずっと好きでした。好きだったのに、いつも、またお前か…うるせーな…無理、ヤダ、とか言ってごめん。なのにいつも俺を見つけては話しかけてくれて嬉しかった。でも時々、言った後に落ち込むこともあった。なんであんなこと言っちゃったんだーとか……こんな口悪く喧嘩ばっかしてたらそのうちパッと居なくなっちゃうんじゃないかとかも考えた。そしたら今日作間と話しててショックで……お前が名札欲しいって何回も言ってくれてたのにいつもひどい返しばっかしてたから、もう俺から貰うことは諦めて作間にしたのかなとか。だったら最初から、あげるよ予約ねって約束してあげれば良かったって思った。お前はもう俺のこと洗い流したとかもう大丈夫みたいに言ってたけど、お互い卒業式の勘違いの時点では両想いで…。
名札や校章はまあ卒業の記念って感じだから、それを喜んでくれたからって好きとも限らないのかなとも思うけど………さっきもお揃いでなんか買う?って話してもあんまり………なのかなと。俺は今もお前のこと好きで明日も明後日もその次もデートしたいしするつもりでいる。お前は………もう俺のことなんとも思ってないかな………どう…かな。
私は、スラスラと流暢に話すほどに、蒼弥先輩が私を見なくなっていって、どんどん困った表情になっていったり、つらそうになっていくのが切なかった。

時々、私の顔をチラチラ見ながら、様子を伺うように。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺は。
これまでも、今も、明日からも、
お前と居たいと思ってます。
お前は、俺のこと、今、どんなふうに思ってる………?
(なまえ)
あなた
大好きです!!!
多分、同じくらいの言葉の量で、私が自分の想いを語ると想像してたのかもしれないけど、蒼弥先輩は拍子抜けしたみたいな意表を突かれたみたいな驚いたような表情で私を見た。
(なまえ)
あなた
今日は、雨ですし、
私、今、蒼弥先輩から貰ったすっごく大事なものを両手で持っているし、何よりこの通り雨に濡れてひどいコンディションなんで(笑)これくらいで済んでますけど、晴れてて両手あいてたら抱きついてます。
蒼弥先輩は、力が抜けてほっとした感じで、今までで1番優しい目で私のことを見てたかも。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
今日は、情報量が多すぎたなー。
(なまえ)
あなた
蒼弥先輩と出逢ってから1番悲しくて1番嬉しい日でした。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
そうだな。
周りの助けがなかったらお互い誤解したままだったかも。
(なまえ)
あなた
悲しくて沢山泣いちゃいました。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
これから沢山安心させる。もう心配かけない。悪態もつかない。
私の頭を撫でてくれた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前、って言うのも減らす。
(なまえ)
あなた
え?なんでですか。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
作間が、あなたの下の名前ちゃんって呼んでるの聞いて、なんか、思った。
(なまえ)
あなた
えー、なんだか調子狂うなー
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
俺に、あなたの下の名前って呼ばれるの嫌か?
(なまえ)
あなた
えー悪くないですー😍
(なまえ)
あなた
あーもーニヤけちゃっていつまで経っても別れられないから、もうこの辺で帰ります。帰ってお風呂入ります(笑)。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
うん。
寝る前に俺に連絡して。
明日のこと話したいから。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
なに。ニヤニヤして。
(なまえ)
あなた
この感じ、いいなーって。
今日の卒業式、色んなことあったけど頑張って乗り越えて良かったです。こんなご褒美も貰えて。
私は相変わらず大事に手に持っていた蒼弥先輩の名札と校章を改めて見つめた。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
それがご褒美?
(なまえ)
あなた
はい。ずっと欲しいって思ってたから。
名札ください校章ください連絡先くださいって、蒼弥先輩を追いかけ回した甲斐がありました!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
ただの名札じゃん。
(なまえ)
あなた
でも私にとっては、大事な…
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
名札よりこっちの方が良くない?
蒼弥先輩は、私の唇にふわっとキスをしてくれた。
(なまえ)
あなた
ぇ。。。。?
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あ……ダメだっt……
蒼弥先輩はやたらと照れてた。
(なまえ)
あなた
やったぁ………ぁぁぁ…🥰
我慢したけど心の声めっちゃ漏れた(笑)。

あと少し、私の家まで相合い傘で歩いてる間も、どうしても嬉しくてニヤけちゃう。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
お前。
(なまえ)
あなた
え?(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾♡
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
前から思ってたけど………
分かりやすいな(笑)
(なまえ)
あなた
すいません色々隠しきれなくてー😍
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
隠す気ないだろ最初から。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
あの。
(なまえ)
あなた
はい!
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
口悪い俺に愛想尽かさず追いかけるの貫いてくれてありがと。
ううん、と首を横に振った。
家に着くまでの数分間、蒼弥先輩はちょっと口数少なめになってた。
隣で時々蒼弥先輩をチラチラ見ながら私はただただ幸せ。
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
着いちゃったね…。
もう暗くなってきたし、すぐお風呂入りな。
つか、さっきからニヤニヤ見てくんなよ!
(なまえ)
あなた
はいはーい、
ノーダメージでーす( *´艸`)
猪狩蒼弥
猪狩蒼弥
(笑)じゃあまたあとでな。
(なまえ)
あなた
はい。
また、あとで。

(〃艸〃) 
私が家のドアに入るまで、蒼弥先輩は見ててくれた。
波乱に満ちた卒業式。
雨に降られてみっともない状態で叶った恋だから、明日以降これからは逢うたびに「あの日よりは可愛いな」って思ってもらえるかな(笑)。

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