〜隆弘side〜
今、あなたは酔っています。
ついさっきまで普通に話していたのに、いつのまにか酔ってました。
ほら。こんな調子。
ほんのり桃色に染まった頰、ぷるんとした唇、とろんとした瞳。
少し胸元まではだけてるし。
俺は必死に理性を抑えるしかない。
俺の腕に自分の腕を絡めてくるあなた。
こんなことにいちいち照れてしまう自分が恥ずかしい。
俺は、あなたの大きな瞳にたまる涙を拭う。
ボソボソと口にした俺の気持ちは、酔っているあなたには聞こえてなくて。
でも、今日はそれでいいやって思う。
真司郎もあなたのことが好きだけど、俺の方がずっと好きな自信はあるし…何倍もあなたを愛してるから。
それだけで、その事実だけで、今はなんだか満足だ。
とか言いながら、まともに歩けもしないあなたの肩を支え、お金は“もちろん”俺が支払って、店を出た。
帰り道は、案外長くて、あなたの肩を支えるのが少ししんどくなってきた。
これは、あなたが酔ってなかったら拒否られるだろうから、酔ってる時の特権として、俺は、お姫様抱っこをした。
あなたは、あまり状況が分かっていないながらも、お姫様抱っこをされたことだけは理解したんだろう。
少し悲鳴をあげた。
あなたは、敬礼のポーズをとった。
それに、すごくきゅんとした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。