相手役の女優が近づいてくる。
俺は、テーブルに置いてあるお菓子や飲み物などをいくつか手に取って楽屋へ向かった。
ガチャ
ドカッ
楽屋のドアを開け、早々にソファに座る。
ったく、どいつもこいつも媚び売っりやがって。あの女優の演技、下手くそすぎだろ。スタッフもどっちも女性で、俺以外には声すらかけてなかったし。
ガサッ
手になにかあたった。
ん?そーいや、菓子もらったんだっけ。俺甘いもん苦手なのにマジでメーワク。どうすっかな、これ…。
ガチャ
楽屋のドアが開いた。
俺は梨花にお菓子を差し出す。
ぶつぶつ言いながらも梨花はお菓子をもらってくれる。
今までの流れで分かるとは思うけど、俺、宮前唯斗は人気若手俳優だ。芸能人と聞いて羨ましがる人もいるけど、実際は愛想を振りまかなきゃなんないから毎日うんざりしてる。
そして、さっき話してた楠原梨花は俺のマネージャー。歳が近く、なんでも気軽に話せる。俺が今1番心を開いている人。
梨花の鬼の形相に負けてつい学校に行くと決めてしまった。
梨花は怒らせるとめんどくせーんだよな。
それと…迷惑かけたくないし。
梨花は俺の"恩人"だから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。