佐野「あなた、こいつは九井一。」
九井「よろしく」
佐野「そこの二人は、でかい方が灰谷蘭、ちっちゃいほうが灰谷竜胆だ。」
蘭「よろしく」
竜胆「…。」
よろしくなんていえるわけ無いじゃん。
誘拐されて、換金されて、脅されて。
佐野「あなた、今逃げようとしてたんだろ?」
ハイライトのない、真っ黒な闇のような瞳に見据えられる。
『………。』
蘭「答えないと全身縛って身動きできなくすんぞー。」
『っ………。はい。』
佐野「そっか。………三途、あれ持ってきて。」
三途「おー!猿轡いるー?」
佐野「いや、いらねぇ。」
三途「つーまんねぇ。」
しばらくして三途が持ってきたのは、
首輪だった。
蘭「手枷はお前の手首が細すぎて抜けちまったからなぁ。」
竜胆「もっと食えよ」
“梵天”の幹部たちが何やら行っているのを横目に、マイキーは首輪を私の首につけた。
そして______
ヂュ、
『痛っ、!!!』
首輪についている鎖を引っ張り、私の肩に強く吸い付いた。
何が起きたのだろう。
その後も、私の肩に強く噛み付いたり、吸い付いたりを繰り返していた。
“次やったらこんなんじゃすまねえぞ”
そう言われ、ようやく自分が“犯罪組織”の“梵天”に
生死を握られていることを理解した。
同時に、もう逃げられない、と思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!