返事はない。
誰もいない部屋で、1人靴を脱いでリビングへ向かう。
ボフン
ふっかふかだぁ〜
ソファーの上にねっころがりながら、そっと瞼を閉じた。
今日は、楽しかったなぁ
最初の方は全然話せなくて、気まずかったけど……
春乃が会話に入れてくれて、久しぶりにいっぱい笑った。
鞄からスマホを出し、連絡先一覧を見る。
新しく花巻、松川と、連絡先を交換したのだ。
岩泉の時から、この画面を見るのが幸せでならない。
私……
スマホを見ながらニヤニヤ笑ってる、変なやつなんじゃー……?
いやいや、今は私しか家にはいないし、大丈b────────
お母さん「何してるのよ」
後ろから突然声をかけられ、心臓が飛び出るかと思った。
お母さん「ちょっと忘れ物取りに来ただけ。すぐまたいかなきゃいけないから。
家の事、頼んだわよ。」
そういうと、近くにあった茶色い封筒を手に取り、玄関に向かう。
途中、こちらを見ながら、聞いてきた。
お母さん「なに。あんた……彼氏でもできた?」
あからさまに顔を赤くして、慌てている自分に、
お母さんは、全てお見通しかのように笑った。
お母さん「親っていうのはね。子供のことならなんでも分かっちゃうんだから。
また今度、詳しく聞くから覚悟しときなさいよ!」
ふふふ、と悪っぽく笑いながら、お母さんは出ていってしまった。
お母さんはいつだってそうだ。
小学生の頃、いじめを受けていた時。
私は、少しでも心配をかけたくなくて、ずっと黙っていた。
なのに、すぐに知られてしまって、結局転校までさせてもらった。
きっと、高校でも、
私が友達少ないこととか、きずいてるんだろうな。
その事を深く聞いてこないことをありがたく思う。
誰かと遊びに行くことはあんまりしない私だから、
お母さんはどんな反応をするだろう。
あと1週間……
私にとって、忘れられない一日になるだろうなと、そう思いながら、
また、瞼を閉じた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。