僕は、74歳になってやっと見つけた。
“緋い惑星”
そして、名前を付けた。
世間は知らない彼女のドラマ。
僕だけが知る世界。
緋依が死んだ後、届いた緋依からの手紙。
「拝啓
桜が咲く季節となり始めた頃でしょうか。
この手紙が届いたということは、私はもういないということでしょう。
裕真、待ってるよ。
貴方の笑顔がここから見えます。
優しい貴方ならきっとなんでもできます。
メロンパン食べようね。セブンのがいいな。
ネックレス、まだ付けてるよ。キラキラしてる。
車椅子、こっちでも押して貰おっかな?笑
貴方の幸せは私の幸せでもあります。
辛いときも背中をさすってくれた。
温かい手。忘れませんよ。
こっちは裕真がいつでも帰ってこれるように温かいご飯をつくっておきます。
迷子にならないでね。
緋い惑星が私のいる世界です。
見つけてくれたでしょうか?笑
見つからなくても待っています。
貴方のことが好きです。
あんな中途半端に伝えてごめんね。
ありがとう。伝えきれないくらい言いたいことがあります。
でもそれは、裕真が帰ってきてくれたときに話します。
早くなくて良いよ。時間は買えないから。
今を楽しんで下さい!!
敬具
by緋依」
拙い字。でも、自然と笑顔が出来る。
緋依とのモノガタリは終わらない。
ずっと、続く物語だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。