第3話

運命 2
653
2019/09/20 09:09
teoside

「はぁい?」
と返事した、藤枝、仁くんは
こてんと首を傾げた。
「…あ、じんくん?ですか?」
誰だ?とでも言うようにあからさまに表情を曇らせるじんくん。
「俺、寺島桜太って言うんだけど、」
「寺島くん?ってずっと学校来てなかった子だよね」
また、首を傾げて言う。
「ぅ、そうだよ」
「俺、同じクラスだよ」
ニコッと笑うじんくん。

「同じ病室の人が同級生でよかったー」
目をきらきらさせたじんくん。

「そう言えば、なんで入院するの?」
「ぁ、えっと…ごめん、今は言えない…」
悲しそうな顔でごめんと繰り返すじんくん。
「ぁ、ごめんな、言いたくないよな」
もう少し、考えてあげれば良かった。
「ううん、大丈夫!寺島くん、これからよろしくね」とにこやかに話すじんくんのさっきの悲しそうな表情は消えていた。

それからはじんくんの言葉通り仲良くなった俺らは、いつも一緒に時間を過ごした。お互いにあだ名を付けて、
テオくん、じんたんと呼ぶようになった。

毎日一緒に時間を過ごして、
ご飯食べて、
屋上で空を見上げながら、沢山話をした。2人で病院を抜け出そうとして、
お説教を食らったりもした。
その度に俺らに笑顔が溢れた。

「テオくーん!」
と、笑うじんたん。

「テオくんっ!」
と、頬を膨らませたじんたん。

「テオくん…」
と、涙目になるじんたん。

たくさんの表情を俺にみせてくれるじんたんに、いつしか俺は、好きという感情を抱くようになっていた。
「はぁ…」
「…テオくん?」
ため息なんかついてどうしたの?と聞かれて俺が最近ため息ばかりついていることに気づいた。
今まで人を好きになったことなんてない。ましてや相手は男。
叶うわけがなくて、でも、諦められなくて。

気持ち、伝えたらどんな反応するのかな。
嫌がるかな、
気持ち悪いって言われるかな、
それとも、俺も、って言ってくれるかな、

「ねぇ、じんたんはさ、好きな人、いる?」
「どしたの急に」
じんたんは笑いながらも
「んー、いる…かな」
と、遠くを見ながら答えた。
いるんだ。やっぱり。
叶うわけないよなぁ…

やばい、泣きそう…
「…そっ、か、じんたんなら大丈夫だよっ!頑張れ!応援する…から」
涙をこらえながら笑顔で言う。
「…うん、でもさ多分、その恋叶わないんだぁ」
ベッドで寝転がって天井を見つめたまま、でじんたんは言った。
「っ大丈夫だよっ!じんたんなら!」
「そう、かな?」
「うん!」
どうせ叶わないのだから、せめて、好きな人の幸せを願っていたい。
「…じゃぁ、言う」
「へ?」
「テオくん、好き」
今、今、じんたんが俺の事…
「俺、テオくんのこと、好き」
「っ俺も!…好き」
「っほんと?」
起き上がって俺の顔を覗き込む、じんたん。
「やったぁぁ!!」
ガッツポーズなんかしちゃって可愛いなぁ。
「じんたん、こっち来て?」
はてなマークを浮かべたじんたんが俺のベッドの端に座る。
そっとじんたんの頬に手を伸ばす。目を閉じて、じんたんのピンク色の唇に自分の唇を重ねる。

次に目を開けた時に視界に入ったのは、真っ赤になったじんたんの顔。
「顔、真っ赤じゃんー」
だって…と、俯くじんたんが可愛くて、前を向かせてもう一度キスする。
今度は深くて甘いキス。

「…ふぁ…んんっ、」
唾液の音に混じって聞こえるじんたんの可愛い声。
口を離すと、じんたんの口の端から唾液が少したれていて、とろんとした顔をしていた。
「…俺、キスしたのテオくんが初めて…」
初めて。それだけでも俺に余裕を無くすには十分すぎる言葉。
なのに、
「ね、もっとちゅーしよ?」
うっとりしたようにじんたんが言うから。
「…俺、止まんなくなっちゃうよ?」
「ん、いいよ」
また、口付けをして、押し倒す。
ぶかぶかのじんたんのパーカーの中に手を滑らせる。
「ぅぁ、んっ、なんか、変な感じする、ぁ」
「じんたん、パーカー脱いで」
「えっ、やだ、恥ずいよっ」
恥ずかしがるじんたん。
「…早く、」
そう言うと、じんたんがパーカーを脱いだ。
じんたんの首筋に吸い付く。
「…っはぁ…ぁ、」
唇を、首、胸、お腹まで滑らせる。
「…ここ、触るよ?」
こくんと頷いて、手で顔を隠してしまった。

ズボンを下ろして、じんたんのを軽く握って、上下に動かしてみると、直ぐに甘い声が聞こえる。
「あっぁ、んぁっ♡」
「ね、じんたん、声抑えなきゃダメだよ?」
という注意だけして、手の動きを速める。

「んっ、ふ、ぁぁっ♡んんっ、んぁっ♡」
ビクッとはねて、絶頂をむかえたじんたん。
「声、抑えなきゃって言ったじゃん」
だって、気持ちよかったんだもん…
と呟くじんたんが可愛くて仕方なかった。
「…テオくんも、きもち、よくなって?」
上目遣いでじんたんは言うと、俺のズボンを下ろして、固くなった俺のを咥えた。
「…はぁ、じん、たっん」
舌で先っぽをグリグリしたり、
はむはむってされたり。
じんたん、フェラ上手すぎる…
やばい、早漏じゃないけどいきそう…
コトン、とドアの外で物音がした。

じんたんに布団をかぶせる。
俺はすわったまま。口から俺のを離そうとするじんたんを、抑える。
「んっ゛」
「じんたん、静かにしててね」

ドアが開いて、

「…寺島くん?大丈夫?寝れないの?」
俺ら2人の担当の看護師さんが、優しい声で話しかける。
「あ、大丈夫っすよ…」
「そう?藤枝くんは?もう寝ちゃった?」
看護師さんがじんたんのベットを覗こうとしたのをサラッと止める。
「じんたん、トイレ行ったみたいで…もう少しで…っ帰ってくると、思いま、す」
看護師さんが部屋を出た後、
じんたんが布団をめくった。
「…ておく、くるし、ん」
「…っ喋んないでっ…ぁ…」
「んぇっ?んぐっ…」
やばい、じんたんの口に出しちゃった。
「…はぁ、じんたん?飲んだ…の?」
「…ぁ、えへ、飲んじゃったぁ…」
飲みこみきれなかった俺の精液がじん
たんの顔についていた。それがえろすぎて。
「…挿れていい?」
「ん…」

じんたんの中にゆっくり入っていく。

「…はぁっ全部入ったよ」
「うん、ね、テオくん…手ぇ繋いで?」
じんたんの横についた手をじんたんの手に絡める。

「動くよ」
じんたんが返事の代わりに手を握る力を強くする。
「ぁぁっ、んっ、ておく、おっきぃ♡」
「じんたんっ」
「あっ、ぁ…ぁ♡」
じんたんを、起こして、俺の上に座らせるような形になる。
「ぁ、これぇっ、んっ、奥、届いてぇ、おかしく、なるっ♡」
「いいよ…おかしくなってもっ♡」

「…はぁ、んぁっ、ておく、しゅき♡」
「俺も、好きだよ…」
「あっ、あっ…♡…イくっ、
イっちゃうっ♡」

「っ〜〜♡♡」


「じんたん、大好き」
「うん、俺も大好き」

「…愛してる」
「…俺も」

「ずっと一緒にいようね」
俺がそう言うと、
じんたんは幸せそうに笑ってた。
……………………………………………

次の日じんたんが熱を出した。
「じんたん、大丈夫…?」
「…全然大丈夫だよ」
えへへっと、笑うじんたんがすごく弱々しくて。

次の日になっても、1週間が経っても、
じんたんの熱は引かなかった。

「ねぇ、じんたん、ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だってば、心配されるより、俺の隣で、笑っててよー」
心配しても冗談混じりで返されて終わり。

「テオくん、手繋いで?」
「もちろん!」
「ありがとう!」

「テオくん、ぎゅーってして?」
「当たり前じゃん」
「ありがとう」

「テオくん、ちゅーして?」
「うん」
「ありがと」

「ねぇ、テオくん、今日俺のベッドで一緒に寝て?」
「いいよー?」
「ありがとー」

一緒に寝た夜、
じんたんが手を繋ぎたがった。
俺は恋人繋ぎをした。

じんたんがぎゅーってしたがった。
俺は苦しいよって言われるくらい抱きしめた。

じんたんがキスしたがった。
俺はいつもより甘く、長い時間、キスした。

狭い一人用のベッドで、二人並んで恋人繋ぎをしたままで、じんたんが口を開いた。

「テオくん、大好き」
「俺も」

「…愛してる」
「…俺も」

「俺、世界一幸せだよ」
「俺もだよ」

「も1回キスして」
「ん、いいよ」
目を閉じて、唇を重ねる。
目を開けるとじんたんの目から涙が零れていた。

「じんたん?!どしたの?」

「嬉しいなぁって、大好きだなぁって、思って」



「…そっか」
安心したように俺がつぶやく。


「おやすみ」のちゅーをして、2人で眠りに落ちた。















次の朝、じんたんは息をしてなかった。

「…じん…たん?…なんで?なんでよっ、大好きって、愛してるって、
ずっと一緒にいようって…」

言ったじゃんか、

ううん、言ってない、

じんたんは、ずっと一緒にいようって俺が言った時、笑ってただけだった。

「…なんだよ、これ、じんたん、自分が今日死ぬの分かってたみたいじゃん」

昨日じんたんが言った、大好きだよって言葉が耳から離れない。

「なんでっ…っ」

その日から、俺はろくにご飯も食べられなかった。

担当の看護師さんが無理やり、俺に食べさせようとするから、
それを食べるだけ。





数年後、俺は奇跡的に退院することができた。
でも、
「…じんたんがいないのに、生きていく必要なんて、ないよ」

「…そんなこと、言うのやめなさい」

いつも優しかった看護師さんが真面目に言った。

担当だった看護師さんが、ぽつぽつとはなしてくれた。



じんたんが俺のことを好きだと、
よく看護師さんに相談してきていたこと。
テオくんと俺が付き合ったこと。

俺と付き合った日に、余命宣告をされたこと。


さすがに病室でヤったことは、知らなかったみたいだけど笑



「藤枝くんね、寺島くんのこと、ほんとに大好きだったの、俺がもし、居なくなっても、テオくんには絶対生きてて欲しい、絶対にまた、逢いに行くんだって…だから、死んじゃダメよ」







そうだったんだね、じんたん。


分かった。
俺、精一杯生きるから、
絶対逢いに来てね?



2人で過ごした病室の窓から優しい風が吹く。


まるで、じんたんが笑ったみたいな風が。


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