嵐の楽屋にて_
私は今までのことを全て話した。
もちろんいじめのことも。
翔くんが珍しくキレてる。
バタン_
よし、決めた。
明日、会見を開こう_。
翔side
あいつから脱退すると聞いた。
本当に頭が真っ白になった。
実は、俺と心菜はいとこだ。
だからあいつは嵐にはタメ口で話している。
小さい頃ずっと面倒見てたからな。
あいつがジャニーズに入った理由も、いとこである俺の影響だった。
さっきリーダーが言ってた"あの時"について少しだけ説明しよう。
実は嵐には12年前まで、橘星菜という女子メンバーがいた。
まだ入所して間もない心菜の、お姉ちゃん的存在だった。
心菜は星菜が大好きだった。
だが、現実はそう上手くはいかなかった。
星菜が正真正銘のジャニーズ初の女子だった。
それを機に、ファンが星菜をいじめ始めた。ファンだけじゃなく、他のジャニーズのメンバーまで。
「橘星菜は男目当て」
「大して可愛くもないくせに」
「調子に乗ってんじゃねーよ」
「絶対親の権力で入ったよね」
こういう批判が絶えなかった。
ついに星菜は精神的に病んでしまい、ジャニーズを辞めた。
心菜はそれを聞いてショックを受け、しばらく仕事に来なくなってしまった。
完全に復帰できたのは1年後、Hey!Say!JUMPとしてデビューする時だった。
デビュー当時、まだ8歳だった心菜にJUMPのメンバーはとても優しくしてくれた。11人で頑張ろうって言っていた。
だが、世間はまだ星菜の事を覚えていた。
当然心菜にも同じような批判が飛び交った。
まだ8歳だった心菜に耐えられるような言葉ではなかった。
そんな中でもJUMPが支えてくれた。
あいつは一人じゃなかった。
そのおかげでJUMPはもうデビュー10周年を迎えられ、あいつにも俺に負けないくらいファンができた。
順風満帆な人生を送るはずだったのに。
JUMPに新メンバーが入ってから全てが変わってしまった。
明るい性格だったあいつから笑顔が消え、あまり喋らなくなってしまった。
だからこそ俺はあいつらを許せなかった。
俺は絶対心菜に心からの笑顔を取り戻してみせる。
長くなっちゃったけど、これが俺らの過去。
一言で言うと壮絶だった。
俺には心菜を守る責任がある。
すぐ元の心菜に戻してみせるから
待っててね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。