あの後、ナルトくんと帰宅した。
サスケくんが、ナルトを見るなり睨みつけ、2人は慌てて朝食を取ると、嵐のように外に出て行った。
サクラちゃんは、サスケくんが気になるからと、着いて行った。
私は1人、家で過ごそうとしていると、ツナミさんが私に話かけてきた。
少し困った顔をして手に顔を当てた。
ツナミさんは、タズナさんの娘で、息子のイナリくんと3人で暮らしている。
ガトーの事もあり、家を開ける訳にはいかないのだと察して、私は快く買い物を引き受けた。
寝ているカカシ先生からグッとサインをもらい、街中へと歩いて行く。
昨日も、サクラちゃんと甘味処に来たが、やはりガトーが、タズナさんの橋作りを阻止しているせいか、物価がどれも高く品質も悪い。
何よりも、街の人達の人相が悪く、治安が悪くなっていた。
グッと拳を握る手は、ガトーへの怒りと、タズナさんの他人への思いやりが身に染みていた。
買い物を済ませ、少しだけ休もうと、誰も居ない、海の見える崖付近に来る。
ちょうどいい岩に腰をかけた。
ウツラ、ウツラと眠そうに頭を揺らしていると、後ろから聞覚えのある声が聞こえ目が覚めた。
深みのある声に、私の心拍数が早くなる。
後ろをゆっくり振り返ると、目の前には、私を自由にする為、封印を解いた張本人が立っていた。
相変わらずフードを被り、橙色の渦巻きの面。
他の者が彼の姿を見れば、不気味だとも言える、その出で立ちと圧迫感。
そんな事は言われたくたって、分かっていた。
彼は私の事を利用する為に、自由にしたのだろう。
でなければ、わざわざ私のことを調べあげ、厳重な警備を抜けることなんて出来ない。
だけど...マダラが現れなかったら私は、私は…。
立ち上がり、ゆっくりと彼の元に行く。
彼の体に手を回し、まるで親に甘える子供の様に抱きしめ顔を埋めた。
ずっとずっと、会いたかった。
貴方が悪者でも構わない…
貴方は私を助けてくれた恩人。
マダラは少し躊躇いながらも、私の頭を無言で撫で、同じように抱きしめてくれた。
その腕は…暖かく、切ない匂いが広がっていた。
何か事情があるんだろう…私は困らせないように、それ以上の追求はしなかった。
手を離し、他の人には見せた事のない、太陽の様に暖かな笑顔を月夜はマダラに見せた。
頭をポンポン、撫でられ、その一言を置いて何処かへ消えてしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。