テントに入ると、ベットで暴れまわり掴み掛かる月夜が居た。
止めようとするが、その者の腕に噛み付いたり、まるで獣を相手ような様子だった。
医療用のメスを、突き刺そうとした瞬間。彼女の腕を掴み、ギリギリで止めた。
そして、我に返ったのか、俺の顔を見て大人しく座り一言「ごめんなさい……。」と謝罪をする。
そういうと大人しく治療をさせるようになった。
一通り傷の手当を終え、俺の寝泊まりするテントに連れていった。
すると、疲れていたのだろう。そのまま、食事をすること無く、寝てしまった。
そっと布団を上からかけると、少し身を捩り、寝息を立てている。そっと月夜の頭を撫で、ゆっくりと口を開いた。
医療班に、後から聞いた話だ。
凍傷の傷跡は、どうやら外敵損傷では無く、自信の体内で起こったものらしい。
そして、驚く事に、彼女の凍傷の傷はゆっくりではあるが、自然と自身で治癒しているとの事。
普通の人間では、ありえない事だ…ただ1人を除けばだが。
俺はそのまま、彼女の寝ている側で目を閉じた──────。
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火影様は目を細め、吸っていたキセルをテーブルに置く。そして、何か思い詰めた険しい表情を浮かべ、口を開いた。
事件が起こる前日の月ノ里━━━━━━━━━。
“”ゴゴゴゴゴッ━━━━━━━━━━!!!!“”
それは突如だった。
里全体が揺れ始め、皆、頭を守る形で地面に座り込む。
しばらくすると地響きは収まり、皆立ち上がる。
しかし、安堵の声とは裏腹に、里長が後ろから血相を変え、こちらに何か叫んでいた。
パキ……パキッ…パキパキ"ピシッ”!!
メリメリメリッ!メリメリメリッ﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏!!
「「””ドオオオオオォォォ━━━ン””!!!!」」
爆発音のようなものが鳴り、後ろを振り返る。
すると、里の中心地は巨大な穴が空き、中心から人々が叫び声を上げ消えて行く。
穴の中心地から、全体に亀裂が入ると共に、地面が割れ、傾き、皆、必死に建物に捕まる。
しかし、段々と地面の角度が上がるにつれ、建物も浮き上がり、耐えきれず、そのまま穴へと落ちて行く。
瓦礫の雨が降り注ぎ、次々としがみついていた人々は、まるで蟻地獄の如く、大穴に落ちていった。
そして、その穴からは不気味な獣の唸り声と共に、気温が一気に下がると共に
━━━━”ズシンッ”!!と里全体が平行に戻る。
数名の生き残った者が、身体を震わせ、その様子を見守っていた。
放心状態の里長は、ふらふらと大穴に近づく。すると、この天災を引き起こした化け物が穴の中から、ゆっくりと顔を出した。
夜空の月を覆い隠す程の十五本の尻尾。
天高く突き上げ、禍々しい唸り声と共に、大穴から真っ白な尖った耳に、恐ろしくも美しい琥珀色の瞳を、大きく見開いた。
里長は、あまりの恐ろしさに腰を抜かす。
十五本の尾を持つ化け物は、穴の縁に手をかけ、鼻の先を村長の体に付けるや否や、”ニタァァア”━━━━━━。と限界まで、口角を上げだ。
里長を見るや否や、琥珀色の瞳を更に大きく見開き、地面に爪を立てる。
_______________バッグンッ!!
里長は気づけば、十五尾に一瞬にして食い殺された。その後は、もうどうしようも出来なかった…。
ただ、この里が滅んでいくのを眺め、目を覚ました時には、十五尾の姿は消えている。
残ったのは氷漬けの里と、冷えきった体に植え付けられた"恐怖"のみになっていた。
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なんて事だ…そんな話すぐに信じられる訳が無い。
十五尾だと?あなたがその人柱力?月ノ里を滅ぼしたのはあの子だと……そんな……。
火影様は丁寧に俺に箱を渡すと、中を見るように促す。そっと開けると、中には、真っ黒な宝石のピアスが1つだけ入っていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!