今日はついに日和先輩と二人で、実践デート!
あらかじめ、零先輩にはいろんなことを聞いておいた。零先輩がいなくても、ちゃんとやらなくちゃ!
待ち合わせ場所の近くにあるビルのガラスで、再度自分の格好を確認。
サスペンダー付きのデニムワイドパンツに白のシャツ。
動きやすさを重視した服は、自分も好きな格好。気分が上がってしまう。
突然後ろから声を掛けられ、私は思わず飛び跳ねる。
後ろを振り向けば、日和先輩がひらひら手を振っていた。
そう言って笑う日和先輩の服装は、当たり前だけど制服じゃない。
丈の長めな白いパーカーに、黒のスキニーパンツ。
日和先輩のあざとさが全面に出されたファッションだった。
拍手を送る私に、日和先輩はまたも軽く笑って見せた。
そう言って、日和先輩に一枚の紙を見せた。
そこには、零先輩からもらった本日のミッション項目。
元気よく決定した私に、日和先輩は終始楽しそうに笑ってくれていた。
うんうん、滑り出しは上々!
紙を確認しようとした私の手を、日和先輩がつかんだ。
手首をつかんでいたその手がそのまま手の甲を撫でて、流れるように指を絡められる。
前に言っていた『恋人繋ぎ』だ!
慌てて手を離せば、日和先輩が首を傾げていた。
日和先輩は上を見ながら悩んだ後、私を見て微笑んだ。
そう言って再び恋人つなぎをしてくる。
初めてのデートで恋人つなぎをできないのはあくまでも私の考え。
ここは日和先輩に合わせても問題ないでしょう!
やってきた遊園地は、自然の中に溶け込むようにある。
大きな敷地内には、それはそれはたくさんのアトラクションがあった。
浮かれすぎて思わず普通に遊ぶところだった!
いけない、これはデート実習! ちゃんと実習しなくちゃ!
すぐにそう答えると、日和先輩が嬉しそうに笑った。
日和先輩は私の手を引いて歩き始めた。
その先は、ジェットコースターのある場所。
先輩の言葉に、私は思わず目を輝かせた。
諦めていたジェットコースターに乗れる……!
日和先輩は嬉しそうに笑ってお化け屋敷のある場所へと進んでいった。
もちろん、手は繋いだまま。
日和先輩と一緒にした検証はどれも楽しかった!
初めてのデートで遊園地はあまりお勧めしないって調べて出てきたときはどうしようって思ったけど……これは一緒に行く人との問題かもしれない!
日和先輩の言う通り、遊園地はすでに夕日でオレンジ色に照らされていた。
突然、知らない人に声を掛けられた。
立ってたのは、大人っぽくてすっごい美人さん。
でも、清香先輩と比べたらちょっと派手な雰囲気の人。
怖い顔で近付いてくる女の人。す、鋭い目が怖い……。
お、お友達にしてはちょっと……怖すぎる気もするんですが……。
でも、日和先輩は怖がることなくその女の人と笑顔で話してる。
服が新しい、とか、髪の毛切ったとか、すっごい細かいことに気が付く日和先輩……いったい何者……?
急に腕を引っ張られて女の人の前に出る。
大人な女の人って言う感じでちゃんとお化粧してて、すっごいいい匂いで……。
おこちゃまなんて初めていわれた!
確かに! この人みたいに大人っぽくはないけど! ちょっとむかつく!
心配そうに声をかけてくる日和先輩に、目を合わせる。
目を見開いた日和先輩に、私は思わず笑ってしまった。
女の人を振り払い、私は日和先輩の腕を掴んで走り出す。
ハイヒールのあの人は、きっと私たちに追いつけない。
なんで遊園地に来てたか知らないけど、ハイヒールはやめた方がいいですよ!!
なんて心の中で吐き出したら、イライラした気分が少しおさまった。
日和先輩の腕をつかんだはずなのに、気が付いたらまた恋人繋ぎにされてた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。