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2021/09/22

第10話

善意と悪意は紙一重
零
さて。時間になったし始めるか。今日は
花梨
花梨
あ、あの……!
零
なんだ?
花梨
花梨
今日も、日和先輩は休みなんですか……?
三人しかいない部室。部活動を開始しようとした零先輩に、私は思わず挙手をした。
零
……あぁ。今日も休みだと連絡が入ってる
花梨
花梨
か、風邪……とかですか?
零
いや。学校には来てるぞ
花梨
花梨
そう……なん、ですか……
日和先輩はもう、一週間部活に来てない。
先輩を怒らせちゃって、変な感じになっちゃったまま。
謝ろうにも、あの日以来校舎内でも先輩を見かけることはなかった。
清香
清香
大丈夫?
花梨
花梨
え、あ、……はい
清香
清香
……私も詳しいことは聞いてないの
花梨
花梨
え、そうなんですか?
小さな声でフォローを入れてくれた清香先輩に、思わず顔をあげる。
なんで日和先輩が来なくなったか、清香先輩も知らないらしい。
花梨
花梨
……先輩が知らないなら、私が知らないのも当然ですよね……
清香
清香
あまり深く考えても、マイナスな感情のままだといい案は浮かばないわ。
少し肩の力抜きなさい
花梨
花梨
はい、ありがとうございます
そうだよね、考えても仕方ないことってたくさんある。今は部活に集中しないと。
花梨
花梨
今日は何やるんですか?
零
応用編の続きとして、『ストーカー』の話をしたいと思う
花梨
花梨
す、すとーかー……
清香
清香
前の嫉妬と同じで、恋には多かれ少なかれ存在する事例よ
零
ストーカーのイメージはあるか?
花梨
花梨
あれですよね、後ろから追ってくるっていう……
清香
清香
言い方が若干B級映画のゾンビみたいね
花梨
花梨
え! あれもストーカーなんですか!?
あ、でも、確かにしつこく付きまとってくる……
零
想像はどうであれ、まぁ……まぁ、そうだな。ああいう感じだ
花梨
花梨
ぅえ!? ほんとに!?
零
しつこいくらいに追いかけてきて、
精神的肉体的に苦痛を負わせることがストーカーの定義ともいえる
清香
清香
最終的に殺してしまうことだってあるのよ
ゾンビも、生存者が嫌ってなるほど追いかけてきて、精神的にも肉体的にも苦痛を負わせてくる。
……しかも、時には逃げ切れなくて……
花梨
花梨
ぞ、ぞんびだぁ……
清香
清香
ここまで当てはまると気持ちいいわね
零
……そうだな……
清々しい顔をしている清香先輩に、零先輩が頭を抱えている。
零
……ほかにも、待ち伏せをしたり無言電話をかけてきたり、なんてこともあるな
清香
清香
でも、大抵のストーカーは善意でやってると思ってるのよ
花梨
花梨
え? 善意?
零
あぁ。ほとんどの場合が無意識にストーカーすることの方が多い
零
守ってやってる、傍にいなくちゃダメになってしまう、みたいな感じだな
花梨
花梨
それって普通にやめてくださいって言っちゃダメなんですか?
零
やめてくださいでやめられるならストーカーなんて生まれないだろうな
花梨
花梨
……それもそうか……
自分の中でストーカーって、好意が転じて独占したいがための行動って思ってたけど……
実のところ厄介なのは自覚がない善意ってところなんだろうなぁ。



花梨
花梨
じゃあ、お疲れ様でした
零
あ、花梨
花梨
花梨
はい?
零
家まで送ろう
花梨
花梨
え?
零
清香は迎えが来るんだったな?
清香
清香
えぇ。そうしろって誰かさんがしつこいから
零
それでいい。家に着いたら連絡をくれ。
面倒かもしれないが、説明は必ずする
真剣な表情の零先輩に首を傾げる。
清香先輩も、呆れながらどこか心配そう。
清香
清香
わかったわ。花梨、ここは零に送ってもらいなさい。
きっと嫌と言ってもついてくるわ
零
ストーカーみたいな言い方やめろ
結局、校門で迎えを待たせているという清香先輩と別れ、零先輩と一緒に帰る。
な、なんかちょっと緊張……。
花梨
花梨
あの……
零
日和のこと、心配か?
花梨
花梨
! それはもう!
……日和先輩、大丈夫なんですか?
零
あぁ。今はまだな
花梨
花梨
まだ……?
零
単刀直入に言う。
あいつは今ストーカー被害に遭ってる
花梨
花梨
え!?
ストーカーって、今の今まで部活で学んでたやつ!?
花梨
花梨
それって大丈夫なんですか!?
さ、刺されちゃったり……!
零
今はまだそこまでには至ってない。
付きまとい行為くらいだ
花梨
花梨
でも……
零
さっきの話を覚えているか?
零先輩に聞かれ、小さくうなずく。
ストーカー被害に遭ったら、まずは証拠を集めなくちゃいけない。
……きっと、いま日和先輩はその段階。
零
あいつももう慣れたものだ。
そこまで心配はしていない
花梨
花梨
そうなんですか?
零
あいつの性格を見てわかるだろう。
今までも、何度か同じ目に遭ってる
花梨
花梨
え!?
ストーカー初めてじゃないんですか!?
零
言っただろう。
あいつは『メンヘラ製造機』だ
花梨
花梨
あ……メンヘラ製造機……
そうだ、入部したときから聞いたことのあった名前。
零
あいつはどんな女性に対しても平等で優しい。
……その気はなくともな
花梨
花梨
……だから、勘違いする人が増えちゃうんですね
零
言葉だけならまだしも、行動にも移すのがあいつの悪いところだ
日和先輩は優しい。そう、優しすぎるのだ。
花梨
花梨
……でも、それと部活にこれない理由って何か関係があるんですか?
零
あいつのストーカー相手は、日和に部活に行ってほしくないと言っているらしい
花梨
花梨
な、なんで……?
零先輩が立ち止まって、まっすぐこちらを見てくる。
強くて真剣な目に見つめられて、思わず息をのんでしまう。
零
女性がいるからだ
花梨
花梨
え?
零
日和に女性のいる空間にいてほしくないと。
……最悪の場合、花梨たちに被害が及ぶ
花梨
花梨
え!?
零
口頭で言われたらしい。
手紙なら証拠としてすぐにでも動けたんだがな……
だから、零先輩は清香先輩に迎えを強制して私をこうして送ってくれてるんだ……。
零
申し訳ないが、俺たちにはこうやって君たちを守ることしか出来ない
零先輩は頭を下げた。
零
怖いと思うが、必ず守ると誓おう
零
それが、俺と日和の役目だ
顔をあげた零先輩は本当に真剣な目をしていた。