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2021/09/01

第7話

この感情は一体なんですか!
日和
日和
花梨ちゃん
しばらく走ったところで、日和先輩に手を引っ張られた。
走っていた足を止めれば、日和先輩が一つの乗り物を指さす。
日和
日和
今? って思うかもだけど。
最後に、あれ乗って行かない?
日和先輩が指さしたのは観覧車。デートでは一番の定番。
そうだ! あれに乗らなきゃデートって締まらないイメージ!
花梨
花梨
いいですよ! 定番ですもんね! 私も調べてました!
あんな出来事があったのに、日和先輩はいつもと変わらなかった。
笑顔で私の手を引いて、観覧車へと向かう。

乗り込んだ観覧車は、ゆっくりと登っていった。
花梨
花梨
うわぁ……見てください!
人がどんどん小さくなっていきますよ!
日和
日和
花梨ちゃん
少しだけ小さな声に、私は振り向いた。
日和先輩の元気がないように見える。
きっと、さっきのことでも考えてるのかな。
花梨
花梨
……日和先輩も大変なんですね
今まで話には聞いてたけど、日和先輩の周りにはああいう女の人ってたくさんいるのかな……。
零先輩もなんだか訳ありみたいだったし、イケメンはイケメンなりに大変そう……。
日和
日和
怖くなかったの?
花梨
花梨
え? 怖かったですよ!
でも、それよりも腹が立ちました。日和先輩は日和先輩です!
誰と歩いてても、どこにいても、日和先輩の価値は変わりません!
日和
日和
……そっか
少しだけ泣きそうに笑った先輩の顔。
初めて見たその顔は、今まで見たどの表情よりも人間味があって、どこか可愛く思えた。
花梨
花梨
ああいう人にでも優しいんですね
日和
日和
だから清香さんにもメンヘラ製造機って言われるんだけどね
花梨
花梨
あ、久しぶりに聞きました!
でもほんと、言動は考え直した方がいいですよ!
先輩はかっこいい台詞とか似合っちゃうんで。
その気になっちゃう子とかたくさんいます
日和
日和
あはは、花梨ちゃんには通用しないけどね
花梨
花梨
ちょっと現実離れしすぎてて……
イケメンは何をしても似合ってしまう。
似合ってしまうからなんだか現実味がなくて、まるでドラマを見てるみたいに思ってしまうんだよね……。

花梨
花梨
零先輩も大変そうでしたもんね……
こういうことがあるから、零先輩も恋人作らないんですか?
日和
日和
うーん、零はトラウマかもしれない
『恋人はもうつくらない』と話していた零先輩。
そのことを思わず口にすると、日和先輩は首を横に振った。
日和
日和
信頼してた彼女から本当に好かれてたわけじゃないって、零は知っちゃったんだよ
花梨
花梨
え……?
日和
日和
『イケメンと付き合ってる』って肩書が欲しかっただけみたい。
それから、零は恋人を作らなくなった
見た目だけじゃなく、本当の零先輩を見てくれる恋人がいなかったのかもしれない。
信じてた恋人に裏切られた傷って、きっと、相当深いよね……。
恋愛自体が嫌いになっても不思議じゃないのに、なんで部活なんて立ち上げたんだろう。
花梨
花梨
どうして恋愛研究部なんて……
そう聞こうとした私の手を、日和先輩がつかんだ。
さっきまでの表情じゃなくて、どこか拗ねたような顔。
日和
日和
これ以上、零の話したくない
そう言った日和先輩は、身を乗り出してこちらに近付いてくる。
前髪を避けられ、おでこに柔らかいものが当たった。
それが日和先輩の唇だなんてことはすぐにわかる。
花梨
花梨
え、え……?
日和
日和
ふふ、みて、頂点
でこちゅーをしてきた日和先輩は、いたずらが成功した子供の様に笑っていた。
先輩の言う通り、観覧車はちょうどてっぺんを通過するところだった。



デート実習は多少の問題が発生したけど無事終わった。
勉強にもなったし、素直に楽しかった。
なのに、あの拗ねたような日和先輩の顔が頭から離れてくれない
日和
日和
花梨ちゃん?
花梨
花梨
わぁっ!
突然目の前に日和先輩の顔が現れて、思わず立ち上がってしまう。
清香
清香
花梨大丈夫?
零
どうした? 体調でも悪いのか?
心配そうな零先輩と清香先輩の視線を受けて、我に返る。
そうだ、今は部活動中だった。
花梨
花梨
大丈夫です! すみません! どうぞ!
慌てて座りなおして、続けて下さいと手で促す。
怪訝そうな顔をした零先輩は、それでも話を続けてくれた。
零
今日の議題は片思いについてだが……
零先輩の声を聞きながら、隣にいる日和先輩の顔を盗み見る。
ニコニコと零先輩の話を聞いていて、時折コントのような会話を繰り広げる。
そのどれもが楽しそうで、やっぱり穏やかだ……。
花梨
花梨
……幻覚……?
思わずそっとおでこに触れる。
あの柔らかい感じ、すっごく鮮明に残ってるのに……。
日和
日和
花梨ちゃん
心配そうな日和先輩に顔を覗き込まれ、思わず身を引いてしまった。
日和
日和
本当に大丈夫?
微かに動いた日和先輩に、思わず身構える。
今、……今触られてしまったら、ちょ、ちょっと怖いかも……!
花梨
花梨
……あれ?
でもいくら待てど、日和先輩からのスキンシップはなかった。
日和
日和
大丈夫? やっぱ体調悪い?
おでこに触られたりとか、あると思ったのに……。
もしかして、「付き合ってない女性に触るのはアウト」っていうのを守ってるのかな?
今まで散々スキンシップしてきた癖に……?
清香
清香
花梨、もう帰りましょう
花梨
花梨
え……
立ち上がった清香先輩に荷物を持たされ、半強制的に部室から出される。
清香
清香
心配だから送っていくわ
零
あぁ頼んだ。
花梨、あんまり無理はするなよ
日和
日和
お大事に。
ちゃんと休むんだよ~?
部室でひらひらと手を振る日和先輩は、いつも通りだった。



清香
清香
で? 何があったの?
花梨
花梨
へ?
帰り道、隣を歩く清香先輩から急に声をかけられた。
清香
清香
遊園地デートからなんか上の空って感じよ。
日和に何かされた?
花梨
花梨
な! 何も! 何もされてません!
デートは凄く楽しかった。
でも、その「楽しかった」を直接日和先輩には言えてない。
花梨
花梨
お、おかしいんです……
日和先輩の顔を見ると思わず体が避けちゃうんです……
清香
清香
避ける?
花梨
花梨
はい……うまく言葉も出てこないし……
清香
清香
日和の事嫌いになった?
花梨
花梨
それはないです!
嫌いだなんて思ったことは一度もありません!
清香
清香
そう
このままじゃいけないことは分かってる。
失礼な態度をとり続けてることだって分かってる。でも、いざ先輩の前になると、うまく話せなくなっちゃう。
花梨
花梨
わ、私もなんだかわからなくて……
『デート楽しかったです』も伝えられなかったし……
どうしよう、わたし……
こんなに落ち込んだの、久しぶりかも……。
清香
清香
花梨の今のその感情は悪いものではないわ
花梨
花梨
え……?
清香
清香
ちょっと混乱してるかもしれないけれど、その感情から逃げちゃだめよ
そっと寄り添ってくれた清香先輩の声は、すっごく優しい。
清香
清香
難しいし、苦しいかもしれないけど、絶対に逃げちゃダメ。
辛かったらいくらでもこうやって私が話を聞くから
花梨
花梨
せんぱい……
清香
清香
この部活にいれば、いずれわかるときが来るわ。だから大丈夫
そう言って頭を撫でてくれた清香先輩の手は、お母さんみたいに温かかった。


何が何だかわからないこの感情は、怖くてたまらない。
私が私でなくなっちゃうみたいでどうしていいかわからない。
だけど……。
花梨
花梨
逃げません! 絶対、逃げません!
いつかこの感情がわかるときまで、私は絶対に逃げない。
だって、ここで逃げたら恋愛マスターも遠のいちゃう気がする!


ちゃんと向き合おう。それで、ちゃんと日和先輩に「楽しかったです」って、伝えなきゃ!