また上司に怒られた。
これで何度目何だろうか。
上司が握ったせいでクシャクシャになった資料を受け取り、俺は自分の仕事机に戻った。
思わず溜息が漏れる。
カラカラと椅子を引いて腰を下ろすと、隣から声を掛けられた。
椅子をカラカラと俺の方に持ってきては、周りの目を気にしながらこそこそと俺に話しかけてくる。
俺は苦笑混じりに答えた。
上司をちらりと見てはそんなことを吐き出し、「めんどくせぇっすね」と付け足した。
この仕事をやってもう何年も経つが、あの上司はずっと変わらない。
慣れてる俺も俺だけど。
すると軽井沢は俺の肩を叩くとそう言った。
そういうと、椅子を引いて素の自分の場所に戻る。
俺は暫く後輩の頼もしい後ろ姿を見た後、上司から言われた仕事を続けた。
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カチカチカチ
パソコンのキーボードを打つ音がやけに響いて、俺は辺りを見渡す。
窓の外は暗くなっており、他の同僚も全員帰っていた。
隣を見ると軽井沢が寝ていて、時刻はとっくに2時を回っていた。
もうそんな時間なのか…と思い、俺は席から立つと軽井沢の肩を叩く。
俺は背もたれにかけてあったジャケットと、机の下に置いてあった鞄をとる。
軽井沢も同じように荷物をまとめると、俺達は仕事場を後にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。