前の話
一覧へ
次の話

第1話

1話
82
2019/08/07 07:42
上司
上司
これ、もう1度やり直して
遥
はい…すみません…
また上司に怒られた。
これで何度目何だろうか。
上司が握ったせいでクシャクシャになった資料を受け取り、俺は自分の仕事机に戻った。
遥
はぁ……
思わず溜息が漏れる。
カラカラと椅子を引いて腰を下ろすと、隣から声を掛けられた。
軽井沢
軽井沢
先輩…またあの上司っすか?
椅子をカラカラと俺の方に持ってきては、周りの目を気にしながらこそこそと俺に話しかけてくる。
俺は苦笑混じりに答えた。
遥
あー……うん…まぁそんなとこ…
軽井沢
軽井沢
ったく、あの上司も自己中すぎじゃねぇっすか?大体、自分が一番働いてねぇっつーのに
上司をちらりと見てはそんなことを吐き出し、「めんどくせぇっすね」と付け足した。
この仕事をやってもう何年も経つが、あの上司はずっと変わらない。
慣れてる俺も俺だけど。
すると軽井沢は俺の肩を叩くとそう言った。
軽井沢
軽井沢
ま、なんかあったら手伝うんで、遠慮なく言ってくださいね
そういうと、椅子を引いて素の自分の場所に戻る。
俺は暫く後輩の頼もしい後ろ姿を見た後、上司から言われた仕事を続けた。

ーーーーーーーーーーー

カチカチカチ
パソコンのキーボードを打つ音がやけに響いて、俺は辺りを見渡す。
窓の外は暗くなっており、他の同僚も全員帰っていた。
隣を見ると軽井沢が寝ていて、時刻はとっくに2時を回っていた。
もうそんな時間なのか…と思い、俺は席から立つと軽井沢の肩を叩く。
遥
おーい、起きろ軽井沢。もう帰るぞ
軽井沢
軽井沢
ん…?…あれ…先輩まだいたんすか…?
遥
色々やることやったし、準備して帰ろっか
俺は背もたれにかけてあったジャケットと、机の下に置いてあった鞄をとる。
軽井沢も同じように荷物をまとめると、俺達は仕事場を後にした。

プリ小説オーディオドラマ