第2話

2話
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2019/08/07 07:59
帰り道、いつもは人通りが多い道も夜中となるとサラリーマンのおっさんしかいない。
軽井沢は大きな欠伸をしてゆっくりと歩いている。
そろそろ眠気が俺にも襲ってきて、ふるふると頭を振る。
すると、その行動に軽井沢は口を開けた。
軽井沢
軽井沢
はは、先輩眠いっすか?
遥
あー……まぁ…今日は凄い疲れた…
苦笑混じりに答えると、「俺もっす」ともう1度欠伸をする。
家まで後少し、俺は時計を見ながら歩いていた。
遥
(それにしてももうすぐ3時か…)
そんなことを考えていると、反対方向に歩いてくる相手に気付かず、相手とぶつかってしまった。
遥
っ……ご、ごめんなさい…!
相手の鞄が落ちて、謝りながら拾おうとしゃがみこむ。
するとその相手は俺の手をパシッと掴んだ。
ぶつかった相手
ぶつかった相手
あぁ、構わない。自分で拾うよ。
すると、俺の手を握ったまま片方の手で鞄を拾う。
暗くて顔はよく見えないが、俺と同じサラリーマンっぽい。
立ち上がると、尚も相手は俺の心配をしてきた。
ぶつかった相手
ぶつかった相手
大丈夫かい?暗くてよく見えなかったんだ。本当に済まない。
遥
あ、いえ、大丈夫ですけど……あの……手を…
握ったまま話をされてそっちにしか集中が向かなくて。
相手は「あぁ、済まないね」と俺の手をパッと離すと、「またね」といって去ってしまった。
声からして三十代前半だろうか…?
腕時計がやけにキラキラしてて高級品っぽかったし、どっかの偉い業者の人か?
そんなことを考えながら去ってしまった相手の後姿をみると、今まで黙って様子を見ていた軽井沢が口を開けた。
軽井沢
軽井沢
あの人、やけに先輩の手離さなかったっすね。変な人もいるもんっすよ
軽井沢の言葉に返事はできなかった。
いやらしい握り方だったし…
夜中には変なサラリーマンもいるもんだな、なんて思いながら俺達はそれぞれ別れを告げて、それぞれ別の道へと歩いていって、家に帰った。

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