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第106話

神様刈りが始まりました。(戦闘編1)
僕の額から脂汗が一つ、滴り落ちる。

まだ儀式を始めてから一分と経っていないが、そもそも僕は魔法が得意分野な訳ではないためこの儀式は僕にとってクッッッッッソ苦行なのだ。早よ来い神共。

赤ずきんも転生神も、僕みたいに汗まみれじゃなくて涼しい顔で魔力を流している。そもそも転生神に汗とかの概念あるんだろうか。汗腺どこにあるんだろう。今度聞いてみようか。

そもそもこんな儀式する羽目になったのは僕のせいじゃない気がするんだ。悪いのは全部あの三神共だろ。僕完全とばっちりじゃん。

こんなにも善良な皇女だというのになんて殺されなきゃいけないのか。こちとら毎日ガクブルしてんだよふざけんな

体感時間一時間、ようやっと真ん中で目を瞑ってたレーナに光が宿り始めた。

魔法陣の中心に立つレーナからなんかヤバそうなオーラが漂ってくる。どす黒い、かと思えば純白で、その色を言語化しようとしても言語にならない、そんなはちゃめちゃなものなので早くも自分の眼球が瘴気にでも当てられたのかと錯覚する。

魔法陣はオーラと同じ形容しがたい色に包まれ、僕の魔力はほぼ全部乗っ取られてしまった。赤ずきんは3分の2、転生神は4分の3ほどぎりぎり残っている感じだ。やめてくれ、こういうの見ると自分の実力不足が見て取れちゃうから。

もはやレーナとも分からないそれが目を開けた。開けた目は僕を真っ直ぐに射抜いており、全身の毛が総毛立つのを覚える。

前世で内容の覚えていないホラー映画を見たときよりもずっと、自分の身に降りかかる恐怖がそこにあった。

怖がるのは僕の性に合わないのでさっさと倒してしまいたい。

レーナは、少なくともレーナの外見は全く変わっていなかった。金糸の長髪に輝くペリドットは彼女が人外だとひしひしと感じさせる。

だが内部が明らかに違うというのは一瞬で理解できた。レーナはあんな無機質な表情をしない。レーナはあんな無機質な声をしていない。レーナは…あんな凍てついた瞳で僕を見ない。

もとはといえば僕らの作戦だが、それでレーナの内部が汚されるのは本当に気持ちが悪いしぶん殴りたい。

レーナ、もとい神がこちらに一歩踏み出せば、中心を失った魔法陣は弾けて僕らの魔力とともに霧散した。両手の自由になった赤ずきんがまっすぐ神に向かっていく。僕はそそくさと転生神の方に逃げた。

殴りかかろうとする赤ずきんに向けて蚊でも見るような目で神は赤ずきんにまっすぐ手を伸ばす。

刹那、神の余裕たっぷりの無機質な顔は目が見開かれ、驚愕を全面に出した表情に打って変わった。

神が後ずさる。だが間に合わずに赤ずきんの拳を左頬にもろに受けた。神はその場に倒れ伏し、レーナの纏っていた美しい衣装を土煙に汚した。

赤ずきんはそれでも止まらず、仮にもレーナの顔をした神を間髪入れずに殴り続ける。その場には打撃の音と神のうめき声だけが響いた。

僕は転生神のそばから離れずに、その傍から見れば完全女性をリンチしているように見える激闘を間抜けな顔をして眺めていた。

弱らせているとはいえ神があんなにも簡単にされるがままにできて良いのだろうか。神が弱いのか、赤ずきんが主人公すぎるだけなのか。

赤ずきんは一通り殴れば一旦手を止め、見る影もなくなった神の顔を一瞥したあと腹部に全体重を乗せた打撃を食らわせた。

神が一際大きなうめき声を上げて唾液や胃液とともに白くほわほわした何かを吐き出す。それは直ぐに人の形になって、僕が夢で見た主神のシルエットを空に描いた。

赤ずきんはそれの首を折るようにつかみあげ、僕らの、正確には転生神の方に投げ渡す。

僕はそそくさとレーナの方に向かって簡単な治癒魔法を彼女の体にかける。その醜い顔はみるみるうちにもとの美しいかんばせへと戻ってゆく。僕将来医術士になれるかもしれないな。

ここまでは前置きも前置き。なんなら前菜のようなものだ。耐えられずレーナから飛び出した神をレーナを治癒しながら眺め、

「僕を狙ったのが運のつきだね。ご愁傷さま。」

と皮肉交じりに吐き捨てた。