スゥゥゥゥ…
助けが来ない!
あれからどれだけ経った?一日…はまだ経ってないにしろ半日は確実に経ってるぞ
僕はあれからボロッボロの家屋とも呼べないような建物の中に運び込まれ、今は縄は解かれたが代わりに樽のようなものに入れられている。
もちろん手の傷は治療なんてされていない。
それに右腕も痣になっているから少し痛む。
扱い悪すぎるだろ。赤ちゃんの扱い方一から学んできたらどうなんだ
さっき樽から出ようともがいてはみたものの、さっきの誘拐犯共が座っているのかどれだけ押してもうんともすんとも言わない。
はぁ〜…暇だな…
誘拐犯共はもう皇宮に身代金を要求する手紙を送りつけているようだ。
頑張れ皇宮。お前らなら僕を救い出せる。
ハァァァァァァ…………
泣いたら何とかなるかな…
いや、やめとくか。泣いて体力消費するのはごめんだ。
というかこの手の傷。もしかしてあと残ったりしないかな
レディの体に傷がついてるんだ。誘拐犯はもれなく極刑に処されるだろう。
とりあえずこの出れもしない環境で僕ができること、それは。
寝ることだ。
仕方ないよな、寝る以外やることないし。
寝て起きる頃には近衛隊も来てるだろ。
──数時間後──
ふぁぁぁぁ…
あ〜、よく寝た。
…あれ。景色が変わってない。
まだ来てないのか、兵士は。
は〜全く、誘拐されたのが第三皇女だからって手抜いてんじゃないよ…
…バァン!
うわっなんだよ一体
…あ〜…やっと来たのか近衛隊
何はともあれ助けてくれるのならいいか。
パカッ
うわ眩しっ急に開けないでよ、びっくりするなぁ。
うおぉ…なんかすごいブチ切れてる。
それにしても「シャンドール帝国」か…
僕の名前が確か「オルガリネ・シューニ・シャンドール」だから…やっぱ名字と同じなのか。
というか兵士、ブチ切れてる暇があるなら僕を助けろよ。
うわぁ!
この兵士抱き上げ方雑すぎだろ!
お前の方こそ第三皇女だと知ってこんな雑く抱き上げるなよ!
あ〜クソ…
…あっ、今思い出したけど…
この前かけてもらった保護魔法、結局なんの役にも立っていないな。
ほんとにあれ意味あるのか?僕怪我してるのに…
あ〜、帰ったらさんざん泣き喚いてやる。
とにかく今は、僕が助かったことを喜ぶか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!