今日は僕が楽しみにしていた日だ。
何かというと。そう、この世界でしか味わえないファンタジーなあれをようやく僕はこの目で見れるのだ。
つまりだな。今日はレーナさんに懇願してやっと許可をもらえた、「宮廷魔法士」と会える日なのだ。
この世界は前世とは違い魔法が存在する世界。
とは言ってもこの世界の住人全員が魔法を使えるわけではない。
人間は大抵「魔法士」の素質を持ったものと「武闘士」の素質を持ったものでわけられ、「魔法士」は魔法を、「武闘士」は武道に優れている。
これは生まれながらの素質であり、変えることはできない。
「魔法士」は魔法が使える代わりに体を動かして一般以上に武道の道を極めようとしても一般より少し筋肉がつく程度で、決してそれ以上は強くなれない。
「武闘士」はそもそも魔法自体が使えない。
稀にどちらの性質も持たない「非所持者」が産まれることがあるが、そうやって産まれた子はそれが発覚した時点で殺されるか、生き残っても酷い差別等で満足に暮らせやしない。
因みにその性質を調べるためには、2つの性質を司る「武闘神アラム」と「魔法神シフカ」という二柱の神に聞く必要があるらしい。
まぁ大抵は産まれた瞬間に母体と子供にお告げが下されるそうだ。
しかも母体が命を落とすか何かで性質が分からなくなっても、教会で神に祈りを捧げれば簡単に教えてもらえる特典付きである。
ちなみに僕は「魔法士」の性質を持っている。
いつお告げが下されたかは覚えていないが、レーナさんに聞けばすぐに教えてもらえた。
ちなみにここだけの話、所詮この2つの性質は『どちらが扱えるか』と言うだけのものなので、「魔法士」だからといって魔法が得意なわけでもないし、「武闘士」だからって運動が得意なわけでもない。
だから僕も魔法を自由自在に扱えるかは分からないのだが。
…と、長くなったが。「宮廷魔法士」というのは、大量にいる「魔法士」達の中から更に特筆した才能を持ち、且つそれを帝国の為に扱う「魔法士」のことである。
今回はその人と会って魔法を見せてもらうのだ。
因みに魔法は流石に室内じゃ危なそうだから今は特別に皇女宮の庭の中の開けた砂場で見せてもらうことにしている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!