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第60話

奴隷販売店に行ってみました(後編)
???
???
おや、お客様ですか?
唐突に後ろから声をかけられて一気に振り向く。

するとそこにはコバルトブルーの褪せたフードを眼深にかぶった、若いスラリとした体躯の男がいる。

フードを深くかぶっているせいで表情が伺えないが、フードの隙間から覗く緑の髪になんとなく既視感を覚えた。
レーナ
レーナ
…どちら様でしょう?この店の従業員の方でいらっしゃいますか?
???
???
ええ、まぁ。そんなところですかね。して、お客様方は何用で?見学ですか?購入ですか?
赤ずきん
赤ずきん
俺らはただ見学に来ただけだ。この店の奴隷がどんなものか、少し気になってな。
???
???
ほう、それはそれは…良いことです。どうせならば気に入った奴隷があれば是非ご購入を。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
残念だけど私達は奴隷の購入目的で来たんじゃないの。ごめんなさいね。
???
???
いえいえ!結構結構。只今お客様方が出てこられたのは『不良品』の倉庫でございます。売り物にもならない役立たずの保管庫でしかありませんので、奴隷の見学であればこちらにどうぞ。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
だからあんな環境が劣悪だったのね。いいわ、それならその『正規品』のところへ案内してちょうだい。
???
???
ええ、ええ!もちろんですとも!さぁさ、こちらへどうぞ。
少しだけ浮いたフードの隙間から、ルビーのように赤く染まった瞳が覗いた。
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???
???
ささ、こちらでございます。
男は他より一際豪奢な扉を手のひらで指し示す。

そのまま恭しく扉を開けると、中には先程とは違う、檻ではなく鉄格子のようなもので区切られ、さながら囚人をつなぐ牢の様な内装が見て取れた。

牢の中には一人一人右手首を等間隔に壁に鎖で繋がれている。

その殆どは以前ボロ切れを纏って薄汚れているものの、体は健康的そのもので大きな怪我などはないようだ。

種族も皆種類別に分けられており、牢にはそれぞれの種族名と詳細が書き記された看板が貼られている。

奥の方には水槽もあり、水槽の中には綺麗な尾鰭を縛られた人魚がプカプカと浮かんでいる。だが出血はない。少なくとも先程の牢にいた人魚より良い暮らしをしていることは明白だった。

一人のエルフがこちらに気付いて縋るような目を向けてきた。金髪緑眼の美少年。まだ僕と同い年のようにも見える。

彼は僕にはわからない言語で何か叫んでいる。よく見るとすべての奴隷に鎖とは違う、ほんのり魔力を帯びて淡く青く光る首輪がついていた。

なるほど、あれが噂に聞く『魔力制御装置』と言うものか。

たしかその名の通り魔法を使用できないようにする装置だったはずだ。

結構高値だったはずだが…あれは簡素な出来のものだな。

それでも衰弱気味の奴隷をつなぐには十分なのだろう。何人か抵抗したような引っかき傷が喉にあるが、血の筋を残すだけで破壊には至っていない。

少年が苦しみ始めた。首輪が少年の首を絞めつけている。

見れば、横にいるフードの男が手を向けて何やら呟いている。手には首輪と同じ、淡い光が輝いていた。

奴隷が許可なく主たるものに意見するのはご法度。どこかでそう聞いた覚えがある。あの少年は許可なく僕らに何か叫んだから罰として首を絞められているのだ。

…あ、泡を吹いた。倒れた。

周りの大人がチラチラと少年を見ているが、誰一人助けることはしない。あぁ、薄情だな。

倒れて少ししたあとでフードの男が手を降ろした。それと同時に束縛も弱まる。苦しかったろうに。まぁ、自業自得だろう。だって僕らに話しかけなければこんな苦しい目には合わなかったのに。ご愁傷さま。

もう特に見るものもないだろう。レーナと赤ずきんに少し声掛けして、部屋を出ようと後ろを向いた。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
…!?
目の前に振り下ろされる、細長い棒。

それを知覚すると同時に僕の頭に鋭く、鈍い痛みが走った。

同じタイミングでレーナと赤ずきんもやられたのだろう。両隣から呻くような声が一瞬聞こえる。

最後に見るのは、フードから覗く緑の短髪とルビーの瞳。見事なクリスマスカラーだな。

どこかで見たことのあるその顔に僕は考える間もなく意識を手放した。
























目が覚めた。

周りは青々とした、澄んだ空気の澄み渡る草原。

先程までいたはずの奴隷販売店はない。

奥の方に、来るとき見たスラムが見える。

先程いた通りと同じところが見えた。居る人も同じだ。

ただ、ひと際目だったあの建物は目をいくら凝らしても見えない。

レーナも赤ずきんも、頭に?を浮かべながらキョロキョロしている。

それにしても、なぜ僕らは奴隷販売店なんかにいたのだろうか?

あそこで一体何をしたんだっけ。見学?そうだ、見学に行ったんだっけ。

で、何を見た?何を聞いた?思い出せない。

思い出せるのは『僕らが奴隷販売店に行った』という事実だけ。

レーナ達はそもそも奴隷販売店に行ったという事すらも覚えてないようだ。

まぁいいか。

普通なら流してはいけない重要なことだが、その時ばかりはどうでもいいことのように思えて、僕らは帰路に着く。

皇宮に戻ると僕らを探していたらしいリアドネとセストにこっぴどく叱られた。

レーナが『気付いたら三人で郊外の草原にいた』と事実じゃない事実を述べて、なんとかその場は丸く収まった。

僕らが城を出たのを誰一人気付いていなかったのも幸運だったようだ。

それでも二人の怒りは収まらないで、1ヶ月外出禁止と言われてしまった。心外だ。




頭にこびりつく緑と赤には知らないふりをした。