ふーい、よく寝た…
…ん?何だここは。
寝心地悪い…しかも木が腐ったみたいなにおいする…
ってまじで腐ってんじゃん!
待ってここどこなんで僕はこんなところに…
寝る前は確か皇宮のベビーベッドにいたはず…
ガタンッ
なんだ!?すごい揺れたぞ…
なんか小刻みに揺れてるな…
馬車か何かか?
とりあえず周りを…あっ
今気付いた…僕の右腕が頑丈そうな木の柱に縄で繋がれている。
蹴ったら柱折れたりしないかな…
ゲシッ
……うーんやっぱそうだよな…
腐っているとはいえこんなでかい柱、赤ちゃんの力じゃ絶対に折れるわけがない。
ましてや生後七ヶ月の。
!そうだよ!僕生後七ヶ月だよ!?
こんないつ死ぬかも分からないような幼気な赤子を縄で縛って放置するか普通!?
はっ落ち着こう落ち着こう…
とにかく、このシチュはあれだな、僕誘拐されてるな。
全く僕なんかを誘拐してなんのメリットが…
…そうだ。僕第三皇女じゃん。
皇族じゃん。
それにしても誘拐犯はよく僕を誘拐できたな。
皇宮の警備はそれほどまでに緩いのか…?
…とにかく、現状を突破する方法を考えないと。
大方誘拐犯の狙いは身代金か何かだろう。
僕が皇太子だとかならば単に継承争いとかも考えられたが。
僕は第三皇女だから、余程のことがなければ皇位継承権は回ってこない。
それに殺すのが目的ならば、わざわざ攫わずに向こうで殺せば良かっただろう。
…となると、誘拐犯は僕を傷つけるような事はしないだろう。
いや、僕の右腕は縄がキツめに縛られているので少し痣になりかけているが。
今僕にできることは、できるだけ無事に生還することだ。
皇宮の兵士が僕がいないことに気付いて居場所を特定するのにどれだけかかるかな…
僕は結構熟睡してたから、今頃は多分「第三皇女がいない!」って騒ぎになってる頃だろう。
とにかくこの縄解けないかな…
おっあそこにいい感じに尖った木の棒が!
…あー……
えー、只今を持って、僕の「無事に生還」の目標は消え去りました。
クッソ、もっと警戒するべきだった。
ただの木の棒とはいえ、赤子の肌を切り裂くのは簡単にできる。
しかも途中木が割れて破片が飛び出していた。
そこを鷲掴みになんてしたら、手から血が出ないはずがない。
僕がボタボタと滴る自分の血を眺めながら呆然としていると、どこからか話し声が聞こえてきた。
…はぁ…
やっぱり身代金目当てか…
それにしてもリタルとは何だろうか。
会話から察するにこの世界の金の単位なのかな?
やべっ誘拐犯の一人が来る…!
なんとか傷を隠して寝たふりをしないと…
やばいまた来る!
しかも僕を移動させるだって!?
そんなのでどうやって怪我を隠せと!
…ふぅ…
バレはしたけどなんとかなったな。
ってまだ安心するのは早い!
僕今から敵の巣窟に運び込まれるんだぞ!?
はぁ…早く来てよ兵士達…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。