ということで半ば強引に『レメルン』という街の領主にされました、僕です。
え??なんで???我皇女ぞ???皇女に街を治めさせるか普通
やっぱこの世界おかしいわ、感覚が狂ってやがる…
とりあえず下見でもしてみようか。
レメルンはここから…近いな、皇都の隣辺りか。
なんで皇都の隣の街に領主がいないんだ?おかげで僕が領主押し付けられたじゃんか。
まぁ近いに超したことはないよな。郊外とかだったら僕行くのやだもん。
今が午前11時…着くのは午後1時辺りかな?昼食は馬車の中で食べるか。
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さて、ここがレメルン。何か…予想よりも寂れた感じだな。
辺りには身寄りのいないと思われる子どもたちが寄り添って震えている。
ガリガリにやせ細った大人たちも何人か。
…ん?あれは…獣人か?それに、エルフも。
皆一様にやせ細っているが、その特徴は奴隷として一級品の種族と同じだ。
なぜこんなところに?普通なら売り払われているだろうに。
…そうだ。よく見れば、周りにいるのは人間よりも人外のほうが多い。
僕の手元にあるのは5cmほどの厚さの書類たち。
めんどくさくて最後まで目を通していないが。流石にこの現状は知っておいたほうがいい。
適当にページを開きペラペラとめくる。
…お、あった。『レメルンの街の詳細』。
…なるほど?
どうやらこの街は、獣人やエルフの『居住区』らしい。
今までは目についた人外をところ構わず狩っていたため人外の数が著しく減っていた。
そこで損害を考えて上層部が、人外の『繁殖場』を作った。それがこの街、レメルン。
まぁ、今では魔法の発達により妊娠から出産の速度を早めたり、一度のお産で生まれる量を増やしたりと色々対策がされて、ここは今では死を待つ人外たちの溜まり場。
もちろん人外は結界によってここから出られない。
だが、最近奴隷がまた数を減らし始めたのでまたこの場所を再利用することに決めたそうだ。
…つまりは、都合の良い捨て駒。
今まではこの奴隷の蔓延る世界に慣れてしまっていたが、流石にこれは看過できないな。
よし、決めた。僕がこの街を立派な貿易街にする。
前世で耳にタコができるほど叫ばれてきた、『差別反対』。
僕一代でどれだけ出来るかはわからないが、それでもやるしか無いだろう。
いつか。いつか、この世界で人外も人間も楽しく笑って過ごせる未来を創りたい。
となれば、まずは…就職させる必要があるよな。
ただ、この寂れようは…まずはボランティア活動でもしてみたほうが良さそうだ。
それで信頼を稼ぎ、ある程度動ける体になったら大工などをさせて街を再建する。
おそらく途中で、上層部が介入してくるだろう。
だが、そちらが言ったのだ。『街の統治は一任する』と。
だったら僕の好きなようにさせてもらう。
僕だけの街。僕だけの箱庭。
─さぁ、早速取り掛かろうではないか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。