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第53話

カールは昔話を語りました(第二部)
さて、先程僕は言ったね。「妹は皇宮に入ると聞いて安堵した」と。

だがもうその時点で僕は僕ではなくなっていた。

そうだな、ここから少しややこしい話になる。

聞いたことが無いだろうか。「子供は六歳までは悪しきものに憑かれやすい」と。

多くのものが迷信だと言いつつ厳守するそれは、あながち間違いでも無かった。

正しくはこうだ。「人間は『特別な式典』を行うまでは人ならざるものに魅入られやすい」

この特別な式典こそがあの6歳記念の式典なのだ。

どこからか現れた6歳の式典の噂。

あの工程が『特別な式典』と酷似していたのだ。

途中で言う神への言葉。あれには「6歳になった」ということを報告する目的があるのだが、別にそれは何歳でもいい。

10歳が式典に参加して「10歳になった」と報告するも良し、50過ぎの大人が同様のことをしても良し。

大事なのは「式典最中の自分の年齢を報告すること」なのだ。

そうすることで神はやっとその人間の存在を認知し、特別な加護を与える。

この加護こそが「人ならざるもの」に魅入られないためにするものであり、その式典を行えば加護さえあれば僕のように妖精に変化してしまう人間も居なくなる。

だからか捕獲される妖精は皆幼い子供の容姿をしており、「妖精は何歳に変化したかには関わらず皆一様に幼児の姿をしている」という誤った情報さえ流出した。

もちろん妖精にそんなバフはないので、たまに老人の姿や大人の姿をした妖精が見つかると勝手に『落ちこぼれ』のレッテルを人間に貼られてしまう。

だが平民の中には金銭不足やらなにやらで『式典』に参加できない者も多い。

僕もその一人だった。

僕の家は決して金持ちとは言えず、僕や妹の学費や生活費でやっとだという状態だった。

『式典』に参加するためには安いとはお世辞にも言い難い金額を教会に寄付する必要があり、僕らのような低所得民にはとてもじゃないが参加なんてできない。

僕はその頃勿論『式典』の真実など知りはしなかったし、別に神に祈る必要もないと考えていた。

──まぁ結局、それが災いして妖精になってしまったのだが。

ここで妹の問題が浮上してくる。

僕が妖精になったとき妹はまだ五歳になったばかり。

つまり式典など行っていないし、妹の式典も金欠で行えないものだと言われていた。

僕は妖精の中でも風の精霊様に気に入られたため風の魔力が段違いに強かった。

もとより精霊様はまだしも精霊様の部下である僕ら『妖精』はいくら気に入られていても精霊様には遠く及ばない。



この世には三神の他に、魔神と呼ばれるものが存在する。

その部下である『悪魔』と呼ばれるものがいた。

彼らはその昔人間の町を襲い、呆気なく魔神が封印されてからは人間に隠れてひっそり生活していたのだが、やはりそこは悪魔と言うべきか、三神や精霊様にかなり強い敵対心を抱いていた。

だが彼らは魔神が封印下にあるため精霊様や三神の力には遠く及ばない。

いつの時代も、上のものが倒れればその部下たちは力を弱めるのだ。

だから、その鬱憤を精霊様の部下である僕ら『妖精』に向けてくる。

同じ部下でも悪魔の力の最盛期は精霊様を凌ぐと言われていたのだ。僕ら一介の妖精がいくら弱っているとはいえそんな存在に勝てるはずもない。

だからこそ彼らは妖精のいるところへ寄ってくる。

どういうわけか彼らは妖精の気配を辿れるらしく、僕のところにも悪魔はやってきた。

──これは運命のいたずらか。僕を狙ってきた悪魔は知能が高く、そして歪んだ趣味嗜好を持っていた。

悪魔は僕のところへ来たが、僕はそんな存在知らなかったため悪魔に狙われていることにも気付かない。

悪魔の話は、魔神が封印され1000年、2000年が立つとともに人々から忘れ去られていたのだ。僕も例外ではない。

悪魔は僕を付け回していて気付いたのだろう、僕を単に殺すよりも妹に手を出したほうが余程ダメージが入る、と。

僕の大事な大事な宝物。その妹に取り憑き、長く苦しめ、辱めて殺すことで、僕は深く傷つき、壊れることに気付いたのだろう。

そしてそんな狂った僕をすべてを打ち明けて殺すとき、どんな顔をして絶望するのか。それが想像するだけで興味が湧いたのだろう。



悪魔は僕に気付かれないまま妹の魂の奥底に入り込んだ。

勿論妹の自我はそのままに、それでも妹の行動が悪魔の予想通りになるようにした。

そして敢え無く妹は誘拐され、辱められ、僕のところに転がり込み、また消えることで僕は悪魔の思うとおりに苦しんだ。

毎晩毎晩、また誘拐させてしまった妹に懺悔する僕を見て嘲笑っていたのか。



ここに来て、悪魔はもっと面白いことに気付いてしまった。

僕が初家庭教師として目をかけていた第三皇女。

今度はその皇女を壊すのではなく、皇女から嫌われるよう仕向けたらどうか、と。

僕にとっては、愛すべき妹が消えた時点で、皇女殿下はどこか心の支えにもなっていたのだ。

ところが皇女殿下には皇家の神聖な血が流れているため、悪魔は取り憑くことができない。

ならば僕自身を操ればいいと企んだのだ。

僕の魔力は土の魔力と比較的相性がいい。

あの時、宮廷魔法士が皇女殿下に土の壁を見せていた時。

僕はなぜかそれに興味を持って、近くでこっそりそれを見ていた。

思えばあの時から僕があそこに行くよう仕向けられていたのだ。なぜ気付かなかったのか。

悪魔は妹から離れ、魔法実演が行われている土に混じっていた。

僕が何かおかしいと思ったときにはもう遅かった。

宮廷魔法士が土の壁を作り上げた時に発現した土の魔力。それが僕の魔力と共鳴し繋がったのだ。

宮廷魔法士は悪魔などのことには疎い。気づかなかったのも無理はない。

悪魔は土から宮廷魔法士の魔力に乗り、そこから繋がった僕の魔力を通って僕に『入った。』

一瞬身体がふらついた。それ以外には何もない。

『僕だったモノ』は両手の拳を握り締めて、にやりと口角をあげた。



───────────────────────

どうだった?僕が乗っ取られた理由。これで分かるだろう?

勿論、僕には乗っ取られているときにも感覚がある。

本当は奴隷なんて嫌いだった。妹は奴隷にされたから。

悪魔はきっと、そこまで見越していたんだ。

僕が奴隷を厭わしく思っていることを知っていて、わざと『奴隷』と連呼した。

皇女殿下は僕と同じく奴隷に良い印象を持っていなかった。

僕が嫌がる言葉を僕の体で連呼し、それによって皇女殿下にも嫌わせる。一石二鳥とはよく言ったものだ。

ついに皇女殿下は僕の授業を休み始めた。

あぁ、もう嫌われた。もう、僕の信頼は地の底か。

考えただけで頭が痛くなる。妹の次は、皇女殿下。

僕の周りの『タカラモノ』達は、皆僕から離れていった。

怒りはない。悲しさもない。そこにあるのは、ただの孤独。喪失感。

心に大きな穴が空いた気がした。

悪魔は満足したのか、それとも妹の臨月
さて、先程僕は言ったね。「妹は皇宮に入ると聞いて安堵した」と。

だがもうその時点で僕は僕ではなくなっていた。

そうだな、ここから少しややこしい話になる。

聞いたことが無いだろうか。「子供は六歳までは悪しきものに憑かれやすい」と。

多くのものが迷信だと言いつつ厳守するそれは、あながち間違いでも無かった。

正しくはこうだ。「人間は『特別な式典』を行うまでは人ならざるものに魅入られやすい」

この特別な式典こそがあの6歳記念の式典なのだ。

どこからか現れた6歳の式典の噂。

あの工程が『特別な式典』と酷似していたのだ。

途中で言う神への言葉。あれには「6歳になった」ということを報告する目的があるのだが、別にそれは何歳でもいい。

10歳が式典に参加して「10歳になった」と報告するも良し、50過ぎの大人が同様のことをしても良し。

大事なのは「式典最中の自分の年齢を報告すること」なのだ。

そうすることで神はやっとその人間の存在を認知し、特別な加護を与える。

この加護こそが「人ならざるもの」に魅入られないためにするものであり、その式典を行えば加護さえあれば僕のように妖精に変化してしまう人間も居なくなる。

だからか捕獲される妖精は皆幼い子供の容姿をしており、「妖精は何歳に変化したかには関わらず皆一様に幼児の姿をしている」という誤った情報さえ流出した。

もちろん妖精にそんなバフはないので、たまに老人の姿や大人の姿をした妖精が見つかると勝手に『落ちこぼれ』のレッテルを人間に貼られてしまう。

だが平民の中には金銭不足やらなにやらで『式典』に参加できない者も多い。

僕もその一人だった。

僕の家は決して金持ちとは言えず、僕や妹の学費や生活費でやっとだという状態だった。

『式典』に参加するためには安いとはお世辞にも言い難い金額を教会に寄付する必要があり、僕らのような低所得民にはとてもじゃないが参加なんてできない。

僕はその頃勿論『式典』の真実など知りはしなかったし、別に神に祈る必要もないと考えていた。

──まぁ結局、それが災いして妖精になってしまったのだが。

ここで妹の問題が浮上してくる。

僕が妖精になったとき妹はまだ五歳になったばかり。

つまり式典など行っていないし、妹の式典も金欠で行えないものだと言われていた。

僕は妖精の中でも風の精霊様に気に入られたため風の魔力が段違いに強かった。

もとより精霊様はまだしも精霊様の部下である僕ら『妖精』はいくら気に入られていても精霊様には遠く及ばない。



この世には三神の他に、魔神と呼ばれるものが存在する。

その部下である『悪魔』と呼ばれるものがいた。

彼らはその昔人間の町を襲い、呆気なく魔神が封印されてからは人間に隠れてひっそり生活していたのだが、やはりそこは悪魔と言うべきか、三神や精霊様にかなり強い敵対心を抱いていた。

だが彼らは魔神が封印下にあるため精霊様や三神の力には遠く及ばない。

いつの時代も、上のものが倒れればその部下たちは力を弱めるのだ。

だから、その鬱憤を精霊様の部下である僕ら『妖精』に向けてくる。

同じ部下でも悪魔の力の最盛期は精霊様を凌ぐと言われていたのだ。僕ら一介の妖精がいくら弱っているとはいえそんな存在に勝てるはずもない。

だからこそ彼らは妖精のいるところへ寄ってくる。

どういうわけか彼らは妖精の気配を辿れるらしく、僕のところにも悪魔はやってきた。

──これは運命のいたずらか。僕を狙ってきた悪魔は知能が高く、そして歪んだ趣味嗜好を持っていた。

悪魔は僕のところへ来たが、僕はそんな存在知らなかったため悪魔に狙われていることにも気付かない。

悪魔の話は、魔神が封印され1000年、2000年が立つとともに人々から忘れ去られていたのだ。僕も例外ではない。

悪魔は僕を付け回していて気付いたのだろう、僕を単に殺すよりも妹に手を出したほうが余程ダメージが入る、と。

僕の大事な大事な宝物。その妹に取り憑き、長く苦しめ、辱めて殺すことで、僕は深く傷つき、壊れることに気付いたのだろう。

そしてそんな狂った僕をすべてを打ち明けて殺すとき、どんな顔をして絶望するのか。それが想像するだけで興味が湧いたのだろう。



悪魔は僕に気付かれないまま妹の魂の奥底に入り込んだ。

勿論妹の自我はそのままに、それでも妹の行動が悪魔の予想通りになるようにした。

そして敢え無く妹は誘拐され、辱められ、僕のところに転がり込み、また消えることで僕は悪魔の思うとおりに苦しんだ。

毎晩毎晩、また誘拐させてしまった妹に懺悔する僕を見て嘲笑っていたのか。



ここに来て、悪魔はもっと面白いことに気付いてしまった。

僕が初家庭教師として目をかけていた第三皇女。

今度はその皇女を壊すのではなく、皇女から嫌われるよう仕向けたらどうか、と。

僕にとっては、愛すべき妹が消えた時点で、皇女殿下はどこか心の支えにもなっていたのだ。

ところが皇女殿下には皇家の神聖な血が流れているため、悪魔は取り憑くことができない。

ならば僕自身を操ればいいと企んだのだ。

僕の魔力は土の魔力と比較的相性がいい。

あの時、宮廷魔法士が皇女殿下に土の壁を見せていた時。

僕はなぜかそれに興味を持って、近くでこっそりそれを見ていた。

思えばあの時から僕があそこに行くよう仕向けられていたのだ。なぜ気付かなかったのか。

悪魔は妹から離れ、魔法実演が行われている土に混じっていた。

僕が何かおかしいと思ったときにはもう遅かった。

宮廷魔法士が土の壁を作り上げた時に発現した土の魔力。それが僕の魔力と共鳴し繋がったのだ。

宮廷魔法士は悪魔などのことには疎い。気づかなかったのも無理はない。

悪魔は土から宮廷魔法士の魔力に乗り、そこから繋がった僕の魔力を通って僕に『入った。』

一瞬身体がふらついた。それ以外には何もない。

『僕だったモノ』は両手の拳を握り締めて、にやりと口角をあげた。



───────────────────────

どうだった?僕が乗っ取られた理由。これで分かるだろう?

勿論、僕には乗っ取られているときにも感覚がある。

本当は奴隷なんて嫌いだった。妹は奴隷にされたから。

悪魔はきっと、そこまで見越していたんだ。

僕が奴隷を厭わしく思っていることを知っていて、わざと『奴隷』と連呼した。

皇女殿下は僕と同じく奴隷に良い印象を持っていなかった。

僕が嫌がる言葉を僕の体で連呼し、それによって皇女殿下にも嫌わせる。一石二鳥とはよく言ったものだ。

ついに皇女殿下は僕の授業を休み始めた。

あぁ、もう嫌われた。もう、僕の信頼は地の底か。

考えただけで頭が痛くなる。妹の次は、皇女殿下。

僕の周りの『タカラモノ』達は、皆僕から離れていった。

怒りはない。悲しさもない。そこにあるのは、ただの孤独。喪失感。

心に大きな穴が空いた気がした。

悪魔は満足したのか、それとも妹の臨月が近いのを知ってか。いつしか僕から離れていった。

ついに悪魔にも見放された。本来ならば喜ばしいはずのそれも、なんだか心苦しくなった。

もう戻れない。壊れた僕の関係は、僕を巻き込んで崩れていく。

涙が出た。どうしようもないほど溢れた。

子供みたいに、声を上げて。

僕が何をしたっていうんだ。式典に参加しなかったから?あの日森に行ったから?悪魔の存在に気付けなかったから?

なんで、なんで。なんで?

もう考えることも億劫で。皇女殿下が授業を再開する、といった日まで、僕は一睡もせず、ベッドの上に足を畳んで座り込んだまま。

近所の優しい人が、たまに食料を差し入れてくれた。

お腹が減って限界が来たら、機械のようにパンや果物を貪った。

元々痩せにくく太りにくい体質だった。

運動量が減って、食べる量も頻度も減っても。シルエットは、シルエットだけは健康のまま。

これが妖精になったからなのか。もとからなのか。もうわからないし、考えられない。

目に見えて青白く、目には濃い隈ができた。

食料をくれる隣人も、僕のことを心配してくれた。

なんて言ってたっけ。思い出せないや。

そして皇女殿下との久しぶりの授業。ある程度教材ややることをまとめて、家を出た。

周りの人は少しぎょっとした視線を向けて、そそくさと離れていく。

あぁ、皆。やっぱり皆離れていく。



ドアを開けた。皇女殿下の部屋のドア。

すれ違う兵士やメイドも皆一様に同じ反応をして離れてく。

僕と目を合わせた皇女殿下もぎょっとした様な顔をした。

また、逃げられるかな。離れられるかな。

頭を不安が覆い尽くした。

思っていた反応と違った。

皇女殿下は僕のところに駆け寄ってきて、無理矢理寝かせようとした。

逃げないの?離れないの?

聞きたいことはたくさんあった。

目の前の小さな命は、「今日の授業は寝ることだ」と頻りに言う。

その時自分が何を言っていたのかははっきり言って覚えていない。

記憶力、良い方なんだけどな。

無理やりベッドに押さえつけられる。

皇女殿下の匂い。あれ、ベッドってこんなにふかふかだっけ。

皇女殿下の姿を久しぶりに見たせいか、心の穴が少し埋まった気がした。

少し安堵した途端迫りくる睡魔に耐えきれず、僕はそこで意識を落とす。



朝に起きれば見慣れた皇女殿下の顔。

そこからは皆知っていると思う。

あの後、妹にあった。

妹に憑いていた悪魔は、専門職の人間が払ったという。

悪魔は知名度が無いとはいえ、神職の人間は存在を知っている。

久しぶりに見た妹。あぁ、なんだか久しぶり尽くしだな。

妹は少しは良くなったが未だ隈も青白さも無くなっていない僕を見て、ひたすら頬や額を触ったりして心配してくれている。

妹にも今までの記憶があるらしい。

宮廷魔法士は空気を読んで、感動の再会の邪魔をしないよう部屋を出ていった。

あの人、空気読めたのか。そんな的はずれな疑問が頭をかする。

妹は強かった。僕が思うより何倍も。

妹は僕を見て未だ心配そうな顔で接してくる。

そんな顔をしないで。どうして僕を心配するの。ほんとに苦しかったのは貴女の方じゃないか。

そう言うと、妹は笑って言った。








「苦しかったのはお互い様よ。」