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第81話

仕事の合間に一休みしました
どうもみなさん。最近休みが増えて嬉しいです。僕です。

さて、僕は今どこにいるでしょう?

正解は…ベランダです。

いや、正確にはベランダではなく、窓から外を覗いているといったほうが正確だな。

仕事が少し一段落ついたので、ちょっと外の空気を吸いたかったんだよね。

ちょうどこの位置は今の時間日陰になるから日光に当たって肌がダメージを受けることもないし。

僕はたまに仕事が落ち着けばここでこうして風を感じていることがある。

木々の深緑を抜けて頬を掠める、爽やかな風の心地が妙に癖になってしまった。

実際前世では持っていなかった自分の白い長髪が風に揺らめくのを肌で感じてみるのも少しの楽しみだったりする。

僕は窓の縁に腕を置いて、縁の凸凹で腕が痛むのも知らないふりをしてただ瞳を閉じる。

こうしていると、まるで自分が森の一部になったように感じるから。

まぁ本当はこの近辺に森などないのだが、わずかに残る木々の森の空気が僕に癒やしを与えてくれる。

それに…この空気は、前世の家裏の森の空気にとても似ている。

僕ももう14。あと数ヶ月もすれば15になる。

でも、どれほど時間が経っても。たとえ前世にいた人々のことをほぼすべて忘れてしまっていても、僕の感覚に残った懐かしさは消えないものなのだ。

もう何も思い出せない。家裏の森で何をしていたかも、友達がどれくらい居たかも、両親の顔すらも。

不思議なものだ。考えてみれば、今世で生きた時間より前世で生きた時間のほうが数年長いのに。

一番身近なはずの家族すらも思い出せなくて、それでいてこういう片田舎の懐かしさはしっかり憶えている。

ゆっくりと、かすかに聞こえる帝都の喧騒に耳を傾ける。

ワイワイ、ガヤガヤと、何を言っているかはわからないが、民衆の楽しそうな笑い声混じりの喧騒は鬱陶しくなく、むしろ心地よいほどだ。

口には出していない筈なのだが、僕の考えに同意するように一陣の少し強い風が僕の頬を撫でる。

風は友人のようなものだ。

僕に特別な力があるとかではない。ただ、何かわかるのだ。時々僕と会話するように意思を伝えてくる風が、自我を持っているように思えてならない。

もしかしたら近くに風の妖精でもいるのだろうか。いるのなら、少し会ってみたい気もする。

妖精とはどんなものなのか。小さいと聞いた。それだけだ。

暫く風に当たって気分が落ち着いたところで、レーナがまた仕事を持ってきた。

…やれやれ、これは今日中に終わるかな。

机に積まれた今にも崩れ落ちそうな書類の山とそれを運んてきて汗だくなレーナを見遣って、そう苦笑する。

窓を閉じる瞬間、緑と赤が視界の端に写った気がした。