「え〜てか私それじゃとばっちりだよね?本来なら私はこのハチャメチャな世界で愉快なゆるゆる転生ライフ送ろうと思ってたのに!!」
いや皇女に生まれちまった時点でそれは無理なんじゃねぇのか?
「うるせぇやい 私は第三皇女だから皇位継承権限りなく低いんだよ。だから生活に不自由しないまま気楽に暮らせるかな〜って。ここ前世より快適だし?」
は?お前前世覚えてないんじゃねぇの?
「う〜ん、前世のことは相変わらず何も分かんないんだけど、なんかそこで私すごい生きづらかった覚えがあるんだよね。もう自分が男性だったのか女性だったのかさえも分かんないけどさ。いや、もしかしたらその両方でもなかったのかもね。」
ふ〜ん…。やっぱ覚えてねぇの。
「てかさ、お前私が“魅入られてる”つってたけど、お前はもう狙われてねぇの?」
や、俺も狙われてるぞ。なんなら一時期常に神のささやき声聞こえてた。
「いや言えよ。…はぁ〜神だの何だのいちいちスケールがデケェんだよ…最初はただの誘拐犯とかだったのに…いつの間に…」
もうそれはお前が転生したときから仕組まれていたことだから、今更どうにもできねぇよ。諦めるんだな。
「ちくしょ〜…」
まぁこれが大体の顛末だ。俺が神に狙われて、前世親友だったお前も道連れにされた。その結果、俺よりお前に執着してしまった。友引とは全くよく言ったもんだよ!俺が友達の葬式行った直後にこれだもんな!坊さんが別の日にしてくれって半泣きで言ってたのはこういうことだったか!
「お前だけで話を進めないでくれ。お前が連れ去られた日、お前の友達の葬式だったのか?」
あぁ、そうだよ。『友引』。この日に葬式をすると友人に連れ去られちまうんだよ。魂をな。俺の親がなまじ権力者だったせいで、無理やりその日に強行されちまったんだよ。その時の母ちゃんも父ちゃんも、まるで──何かに取り憑かれたみたいだった。
「お…おいおい、怖いこと言い始めないでくれよ。」
あぁそうそう!いいこと教えてやるよ!その友人さぁ…─────お前だよ。坂神涼真。お前が俺を、ここに呼んだんだ。
「は?おいそれ、どういうことだよ。お前は神隠しにあったってさっき──」
じゃあな!お前に話せることはそれだけだ。俺はとっととおさらばするとするよ。
だってお前は、覚えちゃいないんだろ?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。