第51話

何故か二人が仲良くなりました

2021/01/04 14:09

どうもこんにちは皆さん。実況を務めさせていただきます、僕です。

え〜いま僕の部屋、僕の目の前で二対の瞳がバチバチと音をたてる勢いで睨み合っております。

僕から見て左手におりますのがついこの前やってきた不審者こと『赤ずきん』選手。

僕から見て右手におりますのがサイコパスな帝国の第三皇子こと『セイレン』選手。

以前冷戦が続いております。

セスト(セイレン)

…誰、お前

赤ずきん

は？てめぇこそ誰だよ。

セスト(セイレン)

僕はこのシャンドール帝国第三皇子、セイレン・ティラ・シャンドール。
今僕らのいる部屋の主、シャンドール帝国第三皇女のオルガリネ・シューニ・シャンドールの兄だ。

で？お前は一体誰なんだ？ここが皇女の部屋と知ってこのような不法侵入じみたことをしているのか？

不敬罪に処してやってもいいんだぞ

赤ずきん

おやおやこれは。かの有名な大国シャンドール帝国の第三皇子殿下であらせられましたか。
ですが俺にはそんなこと関係ないね。
大体俺はオーネにこの部屋に入る許可もらってるし。
残念でした

赤ずきん

てかお前こそ妹の部屋で何してんの？
俺はオーネにあいに来ただけなんだけど。
この国の第三皇子ともあろうものが第三皇女の部屋にこっそり入って目的は何なんですかねぇ？

セスト(セイレン)

は？ふざけるなよ。僕はオーネの様子を見に来ただけだ。
お前のような不審者が「オーネにあいに来た？」頭の病院なら帝都にあるぞ。
お前の目的はなんだ？誘拐して金でも漁るか？

お〜っとこれはめんどくさiゲフンゲフン
口論に発展してしまいましたね

とりあえず画面の前のみんなにはきっとわけわかめ状態なってると思うから僕が事の発端を説明しましょうか

───────────────────────

事の発端は数分前。最早窓侵入常習犯と化した赤ずきんとセイレンが偶然同じ日の同じ時間にばったり鉢合わせてしまったところから始まる。

運がいいのか悪いのか、二人とも別の窓から入ってきたため侵入してから知らない人間がいることに気づいたようだ。

最初二人は頭に？を10個ほど浮かべて30秒ほど見つめ合っていたんだけど、そこから相手が僕を狙う不審者なのではという結論に二人とも落ち着いてしまって今に至るというわけだ。

てか赤ずきん、お前この国の皇子のことも知らなかったのか？僕のことは知っていたくせに。

下手したら皇女より皇子の方がよっっっっっぽど知名度高いぞ。

世間知らずか？世間知らずなのか？？

僕の名前と肩書だけ覚えてきちゃったのか？？

そうだこいつ他国民だわ

いやそれでも覚えとけよアホかテメー

とりあえず目の前で？少しヒートアップしてそろそろ外の護衛にバレそうな声量だし今夜だから寝たいので止めるとしよう。殴り合われても困るし。立場的な意味で。

オーネ(オルガリネ)

とりあえず双方黙れください

セスト(セイレン)

言葉大丈夫？

オーネ(オルガリネ)

ネットスラング(?)

セスト(セイレン)

は？

赤ずきん

オーネ、お前こんなシスコンが兄でいいのか？さっきの口論途中から妹自慢と化してたぞ。

セスト(セイレン)

それは僕の台詞だ。何なんだ口論の途中で急に「オーネの前世は〜」だとか意味不明な…

赤ずきん

は？知らねぇテメェが悪いんだろ

セスト(セイレン)

あ"？お前よほど臓物を引きずり出されたいようだな？

オーネ(オルガリネ)

兄よ、言うなら普通に「殺されたいようだな？」とかそこら辺にしてください。私六歳。『臓物』とか教育に良くないです。

赤ずきん

言われてんぞ兄

セスト(セイレン)

うるせぇ黙れ

セスト(セイレン)

で、オーネ。こいつなんなの？

オーネ(オルガリネ)

あ〜、そいつは『赤ずきん』。私の友達(?)みたいなやつですね。

セスト(セイレン)

オーネに友達？？嘘だろ？？

オーネ(オルガリネ)

兄よそれさらっと私のことぼっちって言ってます？

オーネ(オルガリネ)

とにかく、赤ずきんはヤバくないから安心してください。

オーネ(オルガリネ)

信用のおける人物です

赤ずきん

だってよ

セスト(セイレン)

お前は口を開くな

セスト(セイレン)

でもまぁ…オーネがそういうんなら。

オーネ(オルガリネ)

とりあえず二人とも『窓から夜にやってくる』っていう共通点のせいで今回の事故が起こってんのよ。

セスト(セイレン)

何その嬉しくない共通点。

オーネ(オルガリネ)

兄様私の台詞奪わないで

セスト(セイレン)

ごめんよ

赤ずきん

とにかく、そういうことなら俺ら共通点のあるマブダチだな！

オーネ(オルガリネ)

赤ずきん、お前さては陽キャだな？

赤ずきん

よく分かったな

セスト(セイレン)

僕を差し置いてよく分からない会話繰り広げないで？

赤ずきん

すまないと思っている

オーネ(オルガリネ)

以下同文

セスト(セイレン)

謎に息ピッタリじゃん

オーネ(オルガリネ)

私もなんで息が合うのか分かりません

赤ずきん

以下同文

オーネ(オルガリネ)

パクんな

赤ずきん

めんご

オーネ(オルガリネ)

捻り潰してやろうか

赤ずきん

オーネそれさっき自分が兄に言ってた「教育に良くない」っていうセリフにブーメラン入ってるの分かってる？

オーネ(オルガリネ)

わからないもう私は何もわからない

セスト(セイレン)

ちょっと男子ぃ〜！オーネ狂っちゃったじゃん！

赤ずきん

あっはは！兄意外にノリいいねぇ！

セスト(セイレン)

君たちのノリを分析した

オーネ(オルガリネ)

さすがの天才肌

赤ずきん

これには誰も抗えない

セスト(セイレン)

さぁ跪くがいい

オーネ(オルガリネ)

なんかスピードで仲良くなってんじゃん

赤ずきん

これが陽キャの底力だわ

セスト(セイレン)

陽キャ？？？

赤ずきん

たまに謎に社交性高いやついるだろ、ああいうのだ。

セスト(セイレン)

なるほど、僕じゃん

オーネ(オルガリネ)

なにそれウケる

赤ずきん

ここ陽キャしかいないねぇ

オーネ(オルガリネ)

陰キャに厳しい世界

セスト(セイレン)

陰キャ？？？

赤ずきん

たまに角っこで本とか読んでる暗いのいるだろ、ああいうのだ。

セスト(セイレン)

なるほど、いないじゃん

オーネ(オルガリネ)

即答

赤ずきん

なんかこういう掛け合い、ネット以外であんまりやんなかったからリアルで、異世界でやるのってなんか新鮮だなぁ

オーネ(オルガリネ)

それな〜

セスト(セイレン)

え？ネット？

赤ずきん

兄よ、人には触れてはいけないものがある。

セスト(セイレン)

ｱｯﾊｲ

セスト(セイレン)

ていうか、いつまで僕のことを『兄』って呼んでんのさ。僕赤ずきんの兄じゃないし、そもそも見るからにお前最年長だろ？

赤ずきん

あれバレた

セスト(セイレン)

なんでバレないと思った

赤ずきん

ならなんて呼んだらいい？

オーネ(オルガリネ)

てか思ったんだけどさ、このメンバーのときあだ名で呼び合おうよ。赤ずきんはそもそもあだ名だし。

セスト(セイレン)

え、赤ずきんってあだ名だったの。安直。

オーネ(オルガリネ)

兄様までそれをいうか。

赤ずきん

ならこのメンバーでは年齢差きにせずにワチャワチャしようか

オーネ(オルガリネ)

私の中の理性が一瞬「それでいいのか第三皇女」って言った気がしたけどまぁいいよね

セスト(セイレン)

仕方ないね、にんげんだもの。

オーネ(オルガリネ)

なんでそのネタを知っている？？

セスト(セイレン)

や、なんか脳内に…

赤ずきん

意味不すぎる

オーネ(オルガリネ)

で、あだ名どうする？

赤ずきん

オーネはオーネのままで良くないか？

オーネ(オルガリネ)

それもそうだね

セスト(セイレン)

賛成

オーネ(オルガリネ)

で、赤ずきんも赤ずきんのままでいいとして…残るはセイレン兄様だね

赤ずきん

良しじゃあセイレンも含めてみんなで一斉に候補を言うぞ。せーの！

セスト(セイレン)

天才

オーネ(オルガリネ)

サイコパス

赤ずきん

陽キャ

オーネ(オルガリネ)

うっわ見事にバラバラ

セスト(セイレン)

待って？？なんで僕サイコパス呼ばわりされてんの？

オーネ(オルガリネ)

この世界にもサイコパスという言語があったことに驚きを隠せない

セスト(セイレン)

僕が社会不適合者だって？？こんなにもバリバリに社交性のある天才陽キャの僕が？？？

赤ずきん

怒涛の自画自賛

セスト(セイレン)

事実じゃん

オーネ(オルガリネ)

事実だけども…

赤ずきん

てか見事にあだ名の元が性格から出てるんだが

オーネ(オルガリネ)

だってさ、私が名前をもじったあだ名、赤ずきんが見た目からのあだ名ときたら残ったのは性格じゃん？

セスト(セイレン)

確かに

赤ずきん

でもはっきり言ってセイレンのこと呼ぶときに「天才〜！」だとか「陽キャ〜！」だとか「サイコパス〜！」だとか呼ぶのやなんだけど

オーネ(オルガリネ)

確かに…

赤ずきん

…ジーニアス、とか？

オーネ(オルガリネ)

何それ？

赤ずきん

ラテン語で『天才』って意味なんだよね

オーネ(オルガリネ)

よく知ってたねそんなの

セスト(セイレン)

ラテン語？聞いたことない言葉だな。

オーネ(オルガリネ)

そりゃそうだわな。

赤ずきん

でもいちいち「ジーニアス」ってよぶのめんどいな。長い。

オーネ(オルガリネ)

セイレン…清廉…正直…？

セスト(セイレン)

ホネストスとか？

赤ずきん

え、何それ

セスト(セイレン)

いや、ラテン語なんて知らなかったから他に「ジーニアス」で「天才」を意味する言葉脳内で漁ってみたら見事に太古のもう滅びた国ティムの言葉に類似してたからさ。

セスト(セイレン)

それでその国の言葉で「正直」翻訳したら「ホネストス」だなーって

オーネ(オルガリネ)

ティム…ラティウム…？

赤ずきん

まじかよおい…

赤ずきん

ていうかお前なんで亡国の言葉知ってんだよ

セスト(セイレン)

暇だから覚えた

オーネ(オルガリネ)

さすがの天才

赤ずきん

セイレン+ホネストス…

セストで良くないかもう

セスト(セイレン)

気に入った、採用

オーネ(オルガリネ)

これにてあだ名付け面接を終了します

赤ずきん

いつの間に面接が始まっていたんだ？

セスト(セイレン)

じゃあこれから、この三人で集まるときは
「オーネ」
「赤ずきん」
「セスト」
で呼び合うよ。

赤ずきん

なんか俺とオーネは呼びなれてるし呼ばれ慣れてるから問題ないけどセイレンがセストってのは慣れるの大変かもな

オーネ(オルガリネ)

まぁなんとかなるわよ。

セスト(セイレン)

セスト…セストか。

セスト(セイレン)

いい名だね。多分。

赤ずきん

なぜ最後に多分をつけた

オーネ(オルガリネ)

余計な一言

セスト(セイレン)

てへぺろ☆

赤ずきん

野郎のてへぺろ☆ほど気持ちの悪いものは無いんだなって思いました

オーネ(オルガリネ)

美少年だから許された

オーネ(オルガリネ)

美少年じゃなかったら殴ってた

セスト(セイレン)

なにそれこわい

オーネ(オルガリネ)

じゃあ今日はもう寝ようか。

赤ずきん

次待ち合わせする？

セスト(セイレン)

しようか。

オーネ(オルガリネ)

明後日の夜とか？

セスト(セイレン)

そうしようか。

赤ずきん

了解

オーネ(オルガリネ)

じゃ、おやすみ〜

オーネ(オルガリネ)

気をつけて帰れよ

セスト(セイレン)

じゃーね〜

赤ずきん

また明後日〜

信じられるか？この一連の流れ、小一時間で起きたんだぜ？

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第52話カールの昔話を語りました(第一部)

青い牛タン

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編集部コメント

主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした！<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。