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第43話

僕が見た夢は悪夢でした
僕があれほど緊張して臨んだ式典も無事に終わり、あれからもう一週間が経とうとしている。

別に僕が六歳になったからと言って生活に大きな変化は無かった。

強いて言えば最近毎日のように見る『夢』くらいだろう。変化点は。


僕が式典の途中に見た三人の人影。最初は幻覚だと思ったけど、やけに頭から離れなくてずっと考えていた。

そのせいか知らないが、式典があった日の夜、疲れ果ててベッドに沈み込み、そのまま服も脱がずに眠りに落ちた時にあの三人の夢を見たのだ。

そもそもあの人影たちが人間なのかは知らないが。人形だったし多分人間かそれに準ずる何かだろうと思う。

夢の内容といえば、式典で見た幻覚と大して相違はなかった。

ただ周りの時間が、全てが止まって。辺りは白に包まれて、そこに逆光で顔の見えない、でも表情は笑っているのが分かる3つの人影がこちらを見ている。

違うところ…そうだ、一つだけある。

三人の影たちは、僕が夢を見ているとき、手を振っているのだ。

親しい友人に向けるような、仲の良い家族に向けるような。そんな優しさのこもった表情で、優しく手を左右に振って、まるで「さよなら」とでも言うかのような。

でもさよならではない。だってあれから毎日、代わり映えのしない同じ内容の夢を見るのだ。

僕が思うに、あの三人は多分神が何かだ。

いや、さっきバリバリ『人間』っつったけどね?『教会』『三柱の神』『三つの人影』『式典』…こう来たら、もう神と思う他ないだろう。だって凄い神々しかった。

それにしても、もし神ならばなぜ僕の前に姿を表したのだろう。

別にあの三神と僕にはなんの接点もないはずだ。いや、『魔法神シフカ』とは関係あるか。

でも、僕と同じ『魔法士』とかいくらでも居るし。なんなら姉も才能あふれる『魔法士』だし。

だから多分『魔法士』はそれほど関係ない。

でもそれだと何があるのだろうか。

レーナに聞いても「三神の幻覚?そんなものを見た人なんて聞いたことがありませんが。」と、本当に知らないような顔をして答えられてしまった。

なんだろう。僕と周りの人の相違点。

元精神病持ち…?

精神年齢20歳超え…?

いや、どれもいまいちピンとこない。

そもそも僕はなぜ精神年齢20歳超えなのか…

あっそうだ。思い出した。僕は転生者だ。

確か前世、『急性心不全』で死んでここに転生してきたんだ。すっかり忘れてた。

自分がXジェンダーってこともすっかり忘れてたな。まぁ、それはもう解決してたし。僕は今、正真正銘女の子だ。

前世の記憶…碌なものがないが、もしかしてこれが『三神』が僕の前に来た理由?マジか…

あれ、そういえばおにぎり神がいない。

あのおにぎりの姿をした神。

名前聞いてなかったけど…
転生神
転生神
〚相っ変わらず失礼じゃのう、お主。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
うわっ
えっなに、なん…え?今、脳内に声が…
転生神
転生神
〚わしじゃ、わし。神じゃよ。思い出せ〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
ちょっと…急に話しかけないでくれませんか?心臓に悪いです。早死させる気ですか。
レーナ
レーナ
…?皇女様?
やっべレーナが独り言言う僕にびっくりしてこっち来た
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚頭の中でも意思疎通できたりして…〛
転生神
転生神
〚できるに決まっておろう。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚うっわできてるすごっ〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚まぁいいか。ねぇ神様、あなたほんとに神ですか?〛
転生神
転生神
〚はぁ?何かと思えばいきなり不躾な…正真正銘の神に決まっておろう。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚だってこの国であなたのような神様聞いたことありませんもん。〛
転生神
転生神
〚そりゃそうじゃ。わしはライサスやアラム、シフカのような低級神では無い。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚神にも階級とかあるんですね。〛
転生神
転生神
〚当たり前じゃろ。この世界の住人は知らんことだがな。〛
転生神
転生神
〚一つの世界を治める神、またその神から生まれた神は『低級神』と呼ばれる。
低級神を束ね、動向を監視する神は『中級神』と呼ばれおる。
そして全ての上の生みの親が『上級神』じゃ。
そして、命の輪廻。転生を司る神というものがおっての。それがわし、『生命神』じゃ。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚ふーん…まぉどうでもいいですけど。〛
転生神
転生神
〚なんじゃ、せっかくわしが教えてやったというのに。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚だって、神について知って、それが生きるのに必要ありますか?この世界の人間もその神のシステムを知らないのなら、知ってても意味ないじゃないですか。私は神じゃないんだし。〛
転生神
転生神
〚…お主、少し大人になりよったな…〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚そりゃそうでしょう。私もうとっくに成人済みですよ。〛
転生神
転生神
〚まぁよい、どうせ今回来たのもただの気まぐれじゃ。それではわしは執務があるゆえ。〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
〚仕事あるんならそっち優先してくださいよ。〛
転生神
転生神
〚フホホホホホホ…〛
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
…ホント急に来るよなあの神様。
おっと、大事なことを聞き忘れた。

結局なぜ僕の前にあの人影が現れるのか、まだ謎は解けていない。

恐らく僕が転生者だからなのだろうが。だとして僕に接触して相手側にメリットはあるのか?

…はぁ、これじゃ如何せん情報量が少なすぎる。

こんな情報だけでどうしろと言うんだ。

毎日毎日夢の中に出てきてなんの代わり映えもしない。
…まさか一生夢に出てくる気じゃあるまいし…

だけど、もしかしたらただの考えすぎによる夢かも…

いや、そんな訳がない。もうかれこれ一週間だぞ?式典の日の夜だけならなんとか説明がついたものの…
…よし、今日夢で問いかけてみよう。
──夢の中──
…………

きた。またあのときと同じ、真っ白な風景。

夢の中だ。

というかこういうの、明晰夢っていうんだっけ。まぁそんなことはどうでもいい。

しばらくするとまた三神が現れ、そしてまた手を振り始める。もう何回も見たこの光景。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
、あの。
返事はない。ただずっと笑顔を貼り付け続ける。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
…三神様…で合っていらっしゃいますか?
『三神様』

その言葉に、真ん中の『主神ライサス』と思われる人影の方が少しだけ震える。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
…合っているんですね。なぜ、毎日私の夢の中に?
何も言わない。答えない。先程反応を示した主神でさえも、またもとに戻って手を振り始める。
オーネ(オルガリネ)
オーネ(オルガリネ)
聞いていますか?…人間風情が烏滸がましいとは存じ上げておりますが、私は謎が知りたいのです。
何を言っても、反応は無い。止まない僕の言葉に苛つく様子も怒る様子も見せずに、ずっと同じことを繰り返す。


──ふと、それが怖くなった。

ずっと変わらない、貼り付けただけの笑顔。何を言っても、反応一つしない。異常だ。

ここに居てはならない。直ちに逃げないと。そう全身が警鐘を鳴らすが、体はいつの間にか金縛りにあったように動かない。

頬を一筋、汗が伝った。

気付けば三神は、手を振るのをやめている。

無表情で、少しの恐怖も感じるほどの虚無で、僕をじっと見つめている。

相変わらず顔は分からない。分からないのに、表情は分かる。

普通ならありえないそのことに、全身の毛が逆立って恐怖が僕を包む。

──主神が、動いた。

本当に一瞬だったのだ。一瞬で主神がこっちに来て。その尖った爪が、僕の眼前に迫る。

あぁ、もうだめだ、死ぬ。僕は恐怖で真っ白に染まった頭の中で、何故か冷静に、そう思えた。

頭の中は真っ白で、冷静で。死を受け入れた。受け入れようとした。

その瞬間は、いやにスローモーションで見えて。

爪が僕の皮膚を、肉を、骨を切り裂く、痛みのない感触を知覚した直後。





僕は自室で目が覚めた。

体はびっしょりと汗をかいていて、少し肌寒い。

汗だけではない悪寒に不快感を覚えつつも、僕はゆっくりベッドから身体を起こす。

確かに切り裂かれた。感触があった。痛みは無かったけど。爪が、肉に食い込み骨を砕く感触が、確かにあった。あったんだ。

普通なら発狂しているだろうその事象を、いやに冷静に理解できていた。

実際顔にはなんともないし、なんなら先程までの汗や悪寒も嘘かと思うほどに引いている。













───その日から、僕は三神の夢を見ることはなかった。