プログラム前半の最後は綱引きやった。
俺は出ないからカメラ構えて座って応援。
ーせーのっ!せーのっ!
赤が優勢やけど白も負けてへん!
なんて応援してたら、
ードタッ
鈍い音が響いた。
音がした方見たら、必死に引っ張ってたしげが転んでしまってた。
しげの後ろにいた望が、心配そうにしゃがむ。
しげは上手く後ろに倒れられなくて背中を強打してしまったみたいで、痛がっている。
しげを支えてこっちに来る望に、
なんてしげが言って、
なんて頭叩かれてしげもてへっと舌出して笑ってて、場の空気も緩んでみんなも笑った。
しげを隣に座らせて綱引きは再開。
背中をさすりながら聞くと、しげは笑顔で頷いた。
しげは筋肉も骨も人より弱いから、ちょっと転んだだけでも大けがになってしまうことがあるって言ってた。
やから心配やった。
そう言って顔を覗き込むと、しげは「大丈夫やで~」って笑う。
しげが腕に引っ付いてそんなお願い。
ほんまは無理させたくないねんけど、せっかくしげの出られる競技やったからそう言うと、
と僕の腕を引っ張った。
結局1番後ろでしげの後ろに俺、という形で参加した。
勝敗は赤の勝ち!
なんて流星や淳太君、神ちゃんに怒られた(笑)
そんな3人見て、
なんてはしゃいでるしげに、照史は爆笑してた。
そういえば、しげと会ってからずっとこうだ。
しげは何かあっても、僕らが心配するよりも前に笑わせてくれて、しげの方が先に笑顔になって、安心させてくれる。
ちょっとおちゃらけたような表情に、さっきのはなんだったんや!って、
調子いい奴やなぁ、って、
笑ってまうけど。
本当は違うのかもしれない。
淳太君をひとしきりいじった後、しげは自分の飲み物が置いてあるところに戻って背中をさすってた。
誰にもばれないように。
しげは、僕が思ってるよりもずっと大人で、
色んなことをちゃんと分かってるのかもしれない。
そんなしげの隣に座って、背中をさすってあげた。
しげは、「大丈夫」とは言わなかった。
ただ、「ありがとう」って微笑んでくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。