あの後ひとしきりはしゃいでもうすぐ6時になるからって望と流星と神ちゃんは3人そろって帰ってった。
4月の終わりから入院になったしげは、来週には退院できるらしく、プログラム眺めて嬉しそうだった。
でも、僕と二人になってしばらくすると、しげはいつもよりどこか元気がないように見えた。
そう聞くと、しげは「え!?」と驚いてた。
しげは僕の言葉に少し考えた後、うん、と頷いた。
ベッドのすぐ隣に椅子を動かしてしげを見ると、しげは困ったように頭を掻いた。
”検査”
その言葉に先生の話がよぎった。
ー「痛みは半端じゃなくてね、その時ばかりは大毅君も泣いてるんや」
響いた言葉に、顔を上げた。
初めて聞いた。
しげの口から、
”怖い”って言葉。
そう言いながらも首を傾けて笑うしげの手は、布団をぎゅっと力強く握ってた。
そんなしげの手を、握ってあげた。
気付けばそう言ってた僕に、しげは「え・・?」と僕をじっと見た。
そう言って、手を強く握った。
顔を上げて、うるうるした瞳で見つめてくるしげに、大きく頷いた。
しげが苦しかったり辛かったりするなら、
そばにいつもいてあげたい。
もっと、
怖いとか、辛いとか、
そんな本音を言ってくれる人になりたい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。