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第228話

番外編
1,689
2023/01/18 14:32





とある日のこと──────────





"もしも〜し!!雪ちゃんだぞ!"

『その歳で自分にちゃん付けやめて…』

"も〜ノリ悪いなぁ…ね!ね!!
今日〇〇ってスタジオ来てくれない!?"

『なんでお母さんオフの日把握して話してるのさ…』

"え〜もちろん京治くん情報に決まってる♡"

『…何させるつもりよ』

"撮影に決まってるでしょ〜もー!"

『はぁぁ!?!?何言っ…』

"ツーッ……ツーッ……"


き、切られた…。
無茶振り久々…
お母さんが日本にいる時少ないし…
仕方ないかな…







『…こんにちはー』

「わ!!あなたちゃんじゃないっ!!」

『前原さん(カメラマンさん)お久しぶりです』

「今日雪ちゃんがどうしてもって〜
私もそろそろあなたちゃんの撮影したかったんだけどね!
えぇー何年ぶり!?こんなに美人になっちゃって〜」

『…相変わらず口がお上手で』

「え"…冗談だと思ってるの??」


こちらを見て話しながら、
カメラ、機材の角度の修正や
ライト調整をする前原さん。

あまりにもシゴデキすぎる…。

え、手元見ずにだよ??


「じゃあ、撮影衣装は控え室に置いてあるから!
楽しみにしてるね〜!ゆっくりで良いよ!」

『はい』


母の影響で幼い頃から足を運んでいた現場。
もちろん、控え室の場所だって分かる。
目的地までの間で昔お世話になった人にも沢山会った。

私も少し、この現場の空気感が好きだったりする。


『嘘…これは…』


言われた通り控え室に足を運び、
掛けられている衣装を見る。

張り紙にある名前も間違ってないから、
きっと私はこれを着なければならないのだろう…。










「かっわ!!!!!!」
「え!本当にドール!!!!」
「DOLLのイメージモデルにピッタリ…っ」

『普段こういう感じの可愛いお洋服は着ないので
なかなか恥ずかしく思っちゃいますけど…』

「髪も巻いたんだ…っ!可愛い〜!!」

『はい、スタイリストさんが巻いてくれて…』


用意されていた服は、
レースがあしらわれて、
何段にも連なるフリルのある、
DOLLというお人形さんのような
可愛らしい服、というのをテーマにしたブランドの

いわゆる、ロリータファッション。


「いいねいいね!そこの椅子に座っちゃって〜!」
「表情がない方がいいかも!」
「軽く目、閉じてみて〜!」
「そうそう!いい感じ〜!」
「ぬいぐるみ持ってみて〜!」


なんて条件を呑みながら、
カシャカシャと鳴り響くカメラの音に
少し懐かしさを感じる。











『って!!!表紙になるとは聞いてないっ!!』











後日談。

私の撮影された写真は
ファッション雑誌の表紙になった。

"数年ぶりに天使、舞い降りる"

そんな大きな見出しを目にして目眩がした。



想像通り、周りからの視線が痛かった。
バレー部のみんなはどこで嗅ぎつけたのか、
及川先輩なんて雑誌を学校にまで持ってくるし。

…でも、たまには良いかな、なんて。










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