第29話

彼の元へ-視点終-
27
2021/02/20 05:30

「じゃあ気をつけて帰れよ〜」

先生の声が教室に渡る。
早く真叶君に会いたいなぁ……あ、そっか、今から会えるんだった。
熱があるせいか頭が回らない。
心配されないようにしないとな…

2組の今日へ行き、教室を見渡す
遥斗「お、野山さんじゃん」
千世「ぁ、鎌田君」
千世「真叶君は?」
鎌田君は少し眉を下げて、「来てない。」と、顔を背けて言った。



_______ガタッ

瞬間、私は走り出していた。

頭は冷めていた


"一瞬にね"


"バイバイ"
嫌な妄想が頭をよぎる。
足取りがフラフラする。
上手く走れない、なんで昨日あのまま保健室で大人しくしていなかったんだろう。

いや、もうこの際、熱なんてどうでもよかった。

ただ、彼に逢いたくて。
これは熱だから寂しいとか、悲しいとか、そんなモノじゃない。
ドテッ

千世「いっ…ッッ」


痛い。


千世「っはぁッッ」


痛い。







足を引きずって走る。

物理的痛みなんて脳に刺激しない。





千世「はぁっはぁっ……ハッ」

元々、運動は得意じゃなかった。

息切れも早い。止まってる暇なんてないのに、足は段々と遅くなっていく。


真叶君の家はもうちょっと。
足が遅くなるにつれ、熱のダルさが襲ってくる。
体は正直だけど、心は頑固だ。


そんなモノも無視して無我夢中で走った。


歩くのも、止まるのも自分が許さない。
だから、遅くても走るんだ。それが1秒でも早いように。





プリ小説オーディオドラマ