「じゃあ気をつけて帰れよ〜」
先生の声が教室に渡る。
早く真叶君に会いたいなぁ……あ、そっか、今から会えるんだった。
熱があるせいか頭が回らない。
心配されないようにしないとな…
2組の今日へ行き、教室を見渡す
遥斗「お、野山さんじゃん」
千世「ぁ、鎌田君」
千世「真叶君は?」
鎌田君は少し眉を下げて、「来てない。」と、顔を背けて言った。
_______ガタッ
瞬間、私は走り出していた。
頭は冷めていた
"一瞬にね"
"バイバイ"
嫌な妄想が頭をよぎる。
足取りがフラフラする。
上手く走れない、なんで昨日あのまま保健室で大人しくしていなかったんだろう。
いや、もうこの際、熱なんてどうでもよかった。
ただ、彼に逢いたくて。
これは熱だから寂しいとか、悲しいとか、そんなモノじゃない。
ドテッ
千世「いっ…ッッ」
痛い。
千世「っはぁッッ」
痛い。
足を引きずって走る。
物理的痛みなんて脳に刺激しない。
千世「はぁっはぁっ……ハッ」
元々、運動は得意じゃなかった。
息切れも早い。止まってる暇なんてないのに、足は段々と遅くなっていく。
真叶君の家はもうちょっと。
足が遅くなるにつれ、熱のダルさが襲ってくる。
体は正直だけど、心は頑固だ。
そんなモノも無視して無我夢中で走った。
歩くのも、止まるのも自分が許さない。
だから、遅くても走るんだ。それが1秒でも早いように。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!