第68話

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2022/10/31 09:00
チソン



「さむ、」



あなたの部屋に入ると、外と同じような気温にびっくりする



「なに?」



「暖房くらい付ければ…?」



「いや、いいよ」



おまけに窓まで空いている
それなのにあなたは平気な顔をして机に向かっていた



「何してんの?」



「見ないでよ」



「いいじゃん」



外の明かりも遮断され、お昼だと言うのに間接照明が灯るこの部屋
人間の部屋だとは思えない…

冬なのに暖房も付けないで窓まで開けて
外の光を受け付けずいつになっても夜のよう



まぁ、だからこの真っ白なんだと言われれば納得もいくけど



ただ夏は逆に冷房ガンガンで、寒いのは変わらなかったな

マネヒョンがあなたに光熱費がどうのこうの言ってたけど、冬は暖房使わないから夏だけ許してと
持ち前の愛嬌(本人無意識)で黙らせていた



あなたに光熱費どうこう韓国語で説明したってきっと分かりやしないのに…










「何しに来たの」



僕はいつの間にか、あなたの許可なしにして部屋に入れるようになっていた。

本当、昔では考えられないよな



「ただ、ゴロゴロしに」



「自分の部屋でしなよ…」



そして、こうやってあなたのベッドに寝転ぶ事も出来る



いつこんな事できるようになったのかは分からないけど

それ程、お互い心を許し会えてるのかなって



ただ、これ以上許してしまうと
もうどうにも出来なくなる気もする。

どうにかしようとか、そう言うんじゃないけど



自分が男として見られなくなるのが嫌なのか
それともあなたを女として見れなくなるのが寂しいのか



でも、こうやって勝手に部屋に入って、勝手にベッドに寝転んでいる僕に対し
何も言わず机に向かい続けるあなたを見て、そんな考えはもう手遅れなのかもしれない。







辛うじて傍に置いてあるスマートフォンは、ビクともしない

あのスマホもあまり触ってるところを見ないし、マネヒョン買った意味あったのかな

いや、そんな事言ったらあの人が可哀想だ



今はチョンロもこっちにいるけど、宿舎に来てすぐに「あなたの返信が遅い」と言っていた
チョンロもそれなりに連絡してるらしい

その場では「もっと見るようにするよ」と流していてあなただけど

あれじゃ直ってないな










クリスマスツリーに着いていた赤い飾りを、あなたの耳にかける

ちょっとイヤリングっぽくて女の子感出るかなと思ったけど失敗した。



髪色は暗くなったし襟足もスッキリしてしまった
なんだかな、どうしたもんかな

オーバーサイズのカーディガンを着てるはずなのにそれでも女の子には見えない




事務所や世間はこれで落ち着いているのかもしれないけど、やっぱりふと本当は女の子なのになと思ってしまう。

もういい加減くどいだろうし、僕にはどうも出来ないんだから考えるだけ無駄なのだが…



「いたっ、」



「あ、ごめん」



耳元でこうじゃないああじゃないといじっていたら
耳を隠しそうな髪の毛に飾りが絡まってしまった



「待って取れない」



「もう、何やってんの…

ヌナー、助けて、」







あなたがヒョンって呼ぶのも、ヌナって呼ぶのも慣れてしまった。
だけど今スタイリストさんを呼ばれては怒られてしまう



「待って待って」



よく見て見てもどこがどうなって絡まっているのかさっぱり分からない

あぁ、これはもうダメかもしれない…



案の定駆けつけたスタイリストさんに文句を言われ
セットで遊ぶなと怒られた



「撮影の時に私に触るの禁止ね」



「えっ、なんで、?!」



「あのね、チソン。

チソンはね、チソン自身が思っているよりもきっと不器用だよ。

それはチソンの良いところでもあるけど、今みたいな事があると困るでしょ。」



そうやって、真面目に僕を説得してくる



でも、僕らの生活は撮影が結構な割合を占めていて

その中であなたに触れられないのは…なんだか嫌だ



僕だって僕が不器用な事は分かりきっているし
キッチン立ち入り禁止も納得いくけど

こればっかりは、



「ごめん…

でも、次は絶対迷惑かけないから」



その言葉に、僕の目をじっと見るあなた

僕もなんだか目が離せなくて、必然と見つめ合っていた



「…いや、いいや

チソンからかけられる迷惑は、私にとって迷惑じゃなかった」



「え、?どういう事、」



「いいよ、私にならいくら迷惑かけたって。

でもここだけで終わる話にしてね。スタイリストさんまで手を煩わせちゃダメだよ」



不思議と、僕にとってのあなたは、あなたにとっての僕なのかもしれない。
お互い、考えている事も似てきてるのかもしれない。



やっぱり君は、僕にとって唯一無二の存在なんだ








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