第67話

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2022/10/23 09:00
テヨン



涙を流すジョンウに、俺は何を言える?



ジョンウが泣き始めて、5分程たっただろうか

泣いている理由も話さず、ただ涙を流すだけ



DY「ジョンウ、ちょっとずつでいいから、話してみてほしい、」



座るジョンウを、さらに下から伺うドヨンがそう言っても、ジョンウは首を振るだけだ



JH「ジョンウ、言ってくれないと分からないよ」



WW「辛いこと、あった?」



みんなが不安な表情で見守る



LC「マーク…!ジョンウヒョンどうしたの、」



MK「お、俺にも分かんないよ、!」



何とかしないといけない

けど、何をしたらいい?



「…ジョンウ、話せない事…?

俺達は超能力とか持ってないから、ジョンウの言葉で言ってくれないと分かってあげられないよ、」



JW「…分からなくて、いいです」



一気に突き放された言葉に、心臓が痛む



今は、俺が寄り添いたいという気持ちも
ジョンウにとっては必要のないものなのか

だとしたら、俺はもうどうしたらいいんだ



JH「ジョンウ、俺達は分かりたいんだよ。

これからずっと、メンバーとしてやっていくんだから。こんな所で躓いていられないんだ」



ジェヒョンが、ジョンウの涙を見ながらそう力強く言い放った



JH「これからジョンウは、もっとたくさんの悩みを持つようになるけど
その時もこうやって、自分の中に隠し持っていくの?

それは、いつまで続くかな」



俺達はジョンウの気持ちを知りたいんだ

メンバーってそういうものでしょ?
たくさんの険しい山を、このメンバーで超えていかなきゃいけない。



自分の気持ちをさらけ出すのがどれほど難しい事なのか
デビューする前の自分、練習生になった時の自分はどうだっただろう



きっと俺も、ジョンウみたいに自分の中に仕舞い込んでしまうタイプだ



「ジョンウが、言いたくないのなら無理に聞いたりしない。

だけどこれだけは知っていて

俺達はジョンウを分かろうとしたって事。
ジョンウを知りたいと思った事。
そして、これからもそのつもりだって事。」



なんだって受け入れてあげる

みんな、あなたがいる状況も受け入れてきたんだ
今ではみんながあなたを必要だと思っているけど
最初からそうだった訳じゃない。

戸惑い、悩み、躊躇った

そんな俺達だからこそ
今をこうやって幸せに生きていると思うんだ。



JW「…嫌だ

こんな自分が嫌だ。」



そう言って、ポツリポツリと話し始めた



JW「僕が想像してたデビューは、こうじゃなかった。ボーイズグループに女の子が1人いるのも、そこに自分が入るのも

ヒョン達も弟達も大好きだけど、それだけが僕の中で引っかかってる。」



ジョンウの言っている事は間違いではない

このグループは、根本的におかしいって事は分かってる。



だけど、自分があなたを必要としているからこそ
ジョンウのその言葉には、心が痛んだ



JW「そんな事を思っちゃう自分が嫌なんだ。

そうやって思っている自分は結局、あの子を批判する世間と何ら変わりないんだと感じるから。

僕が意見できる立場ではないし、事務所に抗議なんて出来ないけど
あの子を避けちゃうんだ。」



ジョンウには、俺達の無意識的な言葉が
色濃く聞こえていたかもしれない。

俺達があなたを必要だと言うほど、そう感じているジョンウにとっては追い詰められていたのかも。



「…みんな、同じだったよ。」



でも、みんな同じだったんだ
過ごしていく中で慣れてしまったけれど、これは普通じゃない。

そして、普通じゃないものや飛び抜けているものに嫌悪感を抱くのは人間の汚いところであり、人間らしい部分



「俺だって、最初は受け入れられなくてマネージャーと言い合ったりした。

俺達もそうだけど、なによりもあなた自身の人生を狂わせてしまうかもしれないと思ったから。

ドヨンもジェヒョンもウィンウィンもマークも、みんな戸惑ったし
ジョンウみたいに、嫌だ無理だって思ったこともある。」



あなたが嫌なんじゃない

無理難題を押し付ける事務所が嫌なんだ



JH「すぐに慣れなくていい。
俺だってデビューして数ヶ月はあなたから目を背けてたし。

だけど、ここに入ったからには受け入れることしか出来ないんだ。

変に綺麗な言葉で繕ったりしない。
俺達は、受け入れる選択肢しかないんだよ。」



言葉だけを並べる事は簡単だ。
そんな事なら小学生でも出来る

どの言葉がジョンウに響くかは分からない。
結局俺も、自分の気持ちを言うしかない



DY「正直、俺は今、あなたのせいで自信をなくしてるところだよ。」



JW「…なんで?」



DY「カムバックショーで、あなたの歌声を生で聞いた時
俺よりも遥かに綺麗で高い音を、簡単に出すあなたを見てまだまだだなって。

男の俺と女のあなたじゃ音域が違うのは当たり前だって思うでしょ?
でもその当たり前にも悩んじゃうんだよな」



ドヨンがそんな事思ってたのには驚いた



DY「俺は今まで歌をたくさん練習してきたし、一応ここではメインボーカルとしてやらしてもらってる。

よく考えたらさ、そんな俺に羨ましいと思わせるあなたが凄いのかもしれないんだよね。」



自信満々に聞こえるその言葉だけど、声色は悔しそうだった。



俺達は、今までした努力をも謙遜するほど出来た人間じゃない。

しんどかったし、大変だったし、辛かった
そんな出来事がある度に頑張って乗り越えてきた。
その甲斐あってデビューしたんだし、自分の得意を伸ばすことも出来た。



ドヨンは決して上からものを言っているんじゃない
あなたを自分と対等に見ているのだ



JH「上手くいかないと思うじゃん、俺も思ってたし。

でも、なんだかんだ今までやってるんだよね。
ファンもしっかりついてきてる

それが何でかって言うと、俺達以上にあなたが頑張ってくれてるんだよ。」



あなたからすれば
男しかいない所にほおりこまれて
右も左も分からないまま世間の目に晒されたんだ



そんな状況で今までやってこれたと言うことは
俺達も頑張ったけど、それ以上にあなたが身を削る思いでやってるんだと思う。

まあそれも、今の俺だからこそそう思うのだけど



「無理に話そうとしなくてもいいし、無理に受け入れようとしなくてもいい。

…残念な話だけど、今なら多分、デビュー降りるのも間に合う。

その選択はジョンウ自身がする事だ。
もうこの際避ける意識も捨てちゃえばいいと思う」



今までがどうであろうと
今俺達があなたを必要としている事に変わりはない
上の人や、ジョンウがなんと言おうとも、だ。



JW「…きっと、いっぱいいっぱいだったんだ

急な環境の変化に着いて行けなくて、自分の余裕もなくなってた。

でも、今明確に分かりました。
僕はここでデビューしたいです。」



ジョンウの中で、覚悟が決まった
正直、押し付けちゃった部分があるのかもしれない

それでもジョンウはとりあえず受け止めてくれたから、これも時間の問題だと思う。



ジェミンみたいになるジョンウを想像したら、面白くて口角が上がる



DY「何笑ってんの、」



そんな俺をドヨンが怪奇そうな顔で見る



「いや、もう既にあなたを可愛がるジョンウが見える気がして」



MK「若干、本当に、ジョンウヒョンはそのタイプだと俺も思ってる」



JW「そう、かな」



MK「うん、あなたは本当にかわいいから

写真見せてあげる!」



そうやって始まった、あなたの写真披露会

ジョンウも笑ってて、安心した。






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