入学式30分前。
代表者控え室で、ラルサとリリアンは出会った。
「シャーラ、…もう1人の方は?」
「まもなく到着されるかと。」
「違うの。どんな方なのか教えて欲しいのよ。」
「ラルサ…ラルサ・シャーリスさんです。」
「シャーラが様付けじゃなく、さん付けなのは珍しいわね…」
「あの…申し上げにくいのですが…」
「…?」
「あまりラルサさんとお関わりにならぬほうが良いかと…。」
「…どういうこと?」
「ラルサさんは…その…リナスの身分でして…」
「…そう。それがどうかしたの?民あっての王国じゃない。」
「失礼致しました。どうかお許しを…」
「いいのよ、シャーラ。」
ラルサについての会話を終了した直後、扉から“コンコン”と聞こえてきた。
「来られたようね、お入りになってください。」
「…!」
「あなたがラルサ様ね。初めまして。私はリリアン。リリアン・メリアイネス。王室第3王女…だけれど、気にせず接してくださると嬉しいわ」
優しく微笑むリリアンに、ラルサは言葉を失った。
「…っも、申し訳ありません。王室王女様とは知らず、無礼を致しました。入学生徒代表挨拶、男子代表のラルサ・シャーリスと申します。」
「お気になさらないでください、代表に選ばれたということは、さぞ優秀な御成績なのでしょう?」
「…とんでもございません。私は…リナス…の身分でございます。ただ…駆け回り、体力をつけ、親から少し学んだだけで…」
「まぁ!謙遜なさらないで!自分から学んでいるだけでも素晴らしいわ!私なんて嫌嫌ですもの」
ラルサの言葉を遮るように、リリアンはクスクス笑った。
その光景を見て微笑んでいたシャーラは、
「ご歓談の最中申し上げにくいのですが、まもなく入学式でございます。入場位置への移動を…。」
「あら、シャーラ、ありがとう。ラルサ様、行きましょう。」
「は…はい…。さ、様は付けなくて結構です…!」
「あら…なら、ラルサと呼ばせてもらうわ!あなたもリリアンと呼んでくださいね」
微笑むリリアンの隣で小さくなりながら歩くラルサを見て、ほかの入学者達は凄く不思議な感情を抱いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。