3人と解散し、1人家路に着いていた
私は突如、違和感を感じ、坂道を一旦止まった
右手には神社がある小さめの山
おかしい、何かが………そうだ…
気づいた瞬間、坂道を走り出した
いつも聞こえるはずのツクツクボウシの声も聞こえない
夏の夕方は、とにかく暑い
朱色の光が射し込む坂を、死ぬ気で走った
そして石段を駆け上がり、見た光景は……
神社の奥の方からのぼる、黒煙だった
私はカバンをその場において、引っ張られるように歩を進めた
行かなくちゃ……それだけだった
あなたが放った言葉
"あれは私と実弥の思い出の刀なの"
驚きのあまり、手の力が抜けた
まさか……思い出したのか?鬼殺隊の頃の記憶を
俺は今世で、あの刀は見てない
だから、今のアイツと俺の間には、刀の思い出なんかねえはずだ
近所の人が集まってきて、騒ぎになっていた
やべえ、アイツまじで行きやがった…!
そう気づいた時には、もうあなたは、建物に入った後だった
突如として、頭に映像が流れてきた
実弥、私思い出したよ
私は、鬼殺隊妖柱
無惨との最終決戦で、命を落とした
最終決戦の直前まで、私と実弥はあれで真剣勝負をしてたよね
金盞花の飾りも、くれたよね
あれは、私の勲章であり、生きた証だった
それが、炎に飲まれていいはず無かった
実弥が大好きなのは、今も昔も一緒
だから──────
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!