結局、その後みんなで廻ることになった
途中、甘露寺先輩に会った
全員何かを察して、わざと2人とは分かれた
下で盆踊りが始まったらしい
僅かに音割れした音楽が聞こえてくる
くじ引きで貰った手のひらサイズの猫の人形を抱いて歩く
だけど………
みんな……ペースが早いんですよ…
足が痛い
靴擦れしたかな………
紐と足の間に指を入れて、少し隙間を作る
一瞬だけどだいぶ楽だった
端によって下駄を脱ぐ
すると、ひょいと実弥に横に抱かれていた
そのまま神社の石段をゆっくり引き返し始めた
石段の脇に、ベンチがあるスペースがある
段々畑の跡らしい
灯篭がひとつしかない暗い空間
人は寄り付かない
ベンチにそっと下ろされる
実弥は隣に座りながらも
膝に頬杖を着いてそっぽ向いてる
口元は手で、目元は髪で隠れていて見えない
現時刻、7時半
あと30分で花火だ
……父さんと母さんとお兄ちゃんで、何度も見た花火
毎年の恒例だった
小さいため息と共に、視線を落とした
猫の人形の目元は、オレンジ色に反射している
頭を思わず撫でる
人形の頭を撫でるのが、昔は大好きだった
幼い頃、お人形遊びが特に好きだった
両親が亡くなってから、しなくなったけど
目頭が熱くなる
何回目かの小さなため息
実弥に聞こえないよう気をつけた……はず
頭の上に、重みも温もりが降ってきた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!