第43話

41
1,872
2021/05/22 00:40
結局、その後みんなで廻ることになった




途中、甘露寺先輩に会った




全員何かを察して、わざと2人とは分かれた




下で盆踊りが始まったらしい




僅かに音割れした音楽が聞こえてくる




くじ引きで貰った手のひらサイズの猫の人形を抱いて歩く




だけど………




みんな……ペースが早いんですよ…
あなた

(あれっ……あの人がしのぶだよね…?
いやでもあんな色の浴衣だっけ………)

あなた

(………あ、実弥は発見。
無一郎があれで……待ってなんか置いてかれてない……?)

あなた

はぁ……これだから大人数は………

あなた

ちょっと待って

不死川実弥
不死川実弥
あ?おう
足が痛い




靴擦れしたかな………




紐と足の間に指を入れて、少し隙間を作る




一瞬だけどだいぶ楽だった
不死川実弥
不死川実弥
……靴擦れか?
あなた

たぶん……ちょ、肩貸して

不死川実弥
不死川実弥
お前……血出てんの気づいてんのかよ
あなた

え?………あ、ほんとだ

不死川実弥
不死川実弥
はぁぁ……おら、脱げ
あなた

言い方

不死川実弥
不死川実弥
……下駄を脱げ
あなた

外ですけどここ……

端によって下駄を脱ぐ




すると、ひょいと実弥に横に抱かれていた
あなた

はっ!?ちょっ…

不死川実弥
不死川実弥
暴れるんなら下ろすぞ?
あなた

全然いいけど下ろしてもらって!?

不死川実弥
不死川実弥
…………暴れんな
そのまま神社の石段をゆっくり引き返し始めた




石段の脇に、ベンチがあるスペースがある




段々畑の跡らしい




灯篭がひとつしかない暗い空間




人は寄り付かない




ベンチにそっと下ろされる
不死川実弥
不死川実弥
足見せろ
あなた

はい

不死川実弥
不死川実弥
お前な………ほら、これ貼っとけ
あなた

絆創膏……女子か

不死川実弥
不死川実弥
(デコピン)
あなた

いっ…

不死川実弥
不死川実弥
弟たちがしょっちゅう怪我するから持ち歩いてんだよ悪いか
あなた

……悪いとは言ってない

不死川実弥
不死川実弥
ふん…
あなた

(うわっ……ここ蚊が多い…………)

あなた

(………今日実弥大人しいな……)

実弥は隣に座りながらも




膝に頬杖を着いてそっぽ向いてる




口元は手で、目元は髪で隠れていて見えない




現時刻、7時半




あと30分で花火だ




……父さんと母さんとお兄ちゃんで、何度も見た花火




毎年の恒例だった




小さいため息と共に、視線を落とした




猫の人形の目元は、オレンジ色に反射している




頭を思わず撫でる




人形の頭を撫でるのが、昔は大好きだった




幼い頃、お人形遊びが特に好きだった




両親が亡くなってから、しなくなったけど




目頭が熱くなる




何回目かの小さなため息




実弥に聞こえないよう気をつけた……はず




頭の上に、重みも温もりが降ってきた

プリ小説オーディオドラマ