第47話

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2021/06/05 07:39
あなた

ただいまー

錆兎
錆兎
おう、おかえり
お祭りから戻ると、いつも通りお兄ちゃんがいた




畳の匂いが鼻をくすぐる




下駄を脱ぐと、足がかなり楽になった
錆兎
錆兎
楽しめたか?
あなた

……うん、楽しかった

錆兎
錆兎
そりゃよかったな
錆兎
錆兎
風呂沸いてるから、入ってきていいぞ
あなた

そうする

帰ってまず、洗面所に向かう




帯を解くと、呼吸がすっと通る感覚がした




髪飾りも取り、髪ゴムとタオルだけ持ち込む




熱いシャワーが心地いい




鏡が徐々に曇っていく




それを見て、ふと思い出した




……今日という日を、忘れていたのだ




すっかり、頭から抜け落ちていた




鼻の奥がツンとしてくる




目の奥が熱い




だけどそれ以外の感覚は全て、シャワーに持っていかれる




シャワーを止め、シャンプーを手のひらにとる




案外直ぐに泡が立つ




シャンプーを洗い流す頃には、さっきまでの感覚は消えていた




泡が鏡を伝って落ちる




そこだけが曇っておらず、鏡の自分を目が合う




その目には、何かが宿っているようだった
















あなた

お風呂上がったよ

錆兎
錆兎
お前のスマホ、なんか通知来てた
あなた

あれ、ほんと?

見ると、スマホには確かに通知が来ていた




しのぶからのメールだった




今日の写真が複数枚、送られてきていた




その中には、私と実弥のツーショットもあった




それは、しのぶが不意打ちで撮ったものだと思い出した




2人とも何とも言えない顔をしていて、思わず吹き出す
あなた

(何この顔……変なの)

私は『ありがとう』とだけ返した




部屋で髪を拭きながら、スマホを触る




机の上には、水の入ったヨーヨーが転がっている




揺れる度たぷんと音がする




その時、またメールの通知が来る
美亜
美亜
《暇だからグループ通話しよ!》
和華奈
和華奈
《しよしよー》
日葵
日葵
《私かけるねー》
なんか話が進んでいたので、私も参加することにした
美亜
美亜
『あなた来た!』
和華奈
和華奈
『やほやほ!』
あなた

やほー

日葵
日葵
『てか今日神楽神社夏祭りだったでしょ?』
あなた

うん、実家で祭りとか勘弁

美亜
美亜
『行きたかったー!
うちら遠いから行けないのよねー』
あなた

そっか、3人は電車とバス乗り継いで来てるんだっけ

和華奈
和華奈
『しかもうちの塾さっきまで模試やらされて最悪』
美亜
美亜
『てかさ……私明日提出の宿題ほとんど終わらせてない…』
日葵
日葵
『やばいじゃん!
私も数学まったくやってないけど』
和華奈
和華奈
『あなたは?』
あなた

終わってるけど

美亜
美亜
『教えてください!!』
あなた

いいよ

美亜
美亜
『神様仏様あなた様だわ』
日葵
日葵
『終わったら寝落ち通話しよ』
和華奈
和華奈
『先に充電死にそうなんだけど』
美亜
美亜
『それはおつ』
あなた

で、美亜何が終わったの

美亜
美亜
数学は最初の2問解いた
あなた

…………徹夜覚悟

結局1時半まで通話は続いた

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