第31話

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2021/04/18 07:18
次の日もまだ微熱があって、学校を休んだ




あの変な夢は見なくなったけど……




やっぱり、気になって




神楽神社の本殿へ向かった
あなた

……相変わらず不気味…

奉納された2本の刀




と、藤の花




なんでも、鬼が苦手だったらしい




どこまで鬼狩り伝説を引っ張ってくるのか……




藤の香りが、花をかすめる




確実に、何かを感じた




覚えてる、懐かしい




手前の折れた方の刀を抜く




血で錆びた白刀に、反射した自分が薄く映る
あなた

………教えて…これは誰の記憶?

柄にもなく、映る自分に語りかける




が、当然の様に返事はない




と思われた時だった




藤の香りが消えた




足元に咲き誇るのは、真っ赤な彼岸花




足元から視線を前に移すと、ひとりの女性が佇んでいる
あなた

『だ れ』

声が出ない




だが、相手には届いたかのように、その女性は振り向く




その人は、私とそっくりの顔立ちで……




違うのは、服装と瞳の色だ




黒い詰襟の服、レースのような羽織




組紐でひとつに束ねた焦げ茶色の髪




そして、血の色ような瞳




無機質な表情だった
???
……それ
???
私の刀
あなた

『だれ?何者なの』

???
……今のあんたは、
思い出したところで無意味
???
ただ傷つくだけ
あなた

『何言って……!』

???
彼岸花が満開になった頃
あなた

『えっ……!?』

その時だった




地面がぽっかり空いて、その穴に落ちていった




真っ黒な空間に吸い込まれていく




消える瞬間、その女性と目が合った




諦めたような、悲しいような、呆れたような




そんな複雑な笑顔を向けていた




『頼んだよ』




口パクだったけど、確かにそう言われた



















あなた

っ………!!!

体が大きく跳ねる




周りを見ると、本殿だった
あなた

何今の………てか…誰?

手には相変わらず刀




白刀に、私の青い瞳だけが映る




さっきのと、何か繋がる




青……青い……………彼岸…花




……………青い…彼岸花
あなた

………何それ……彼岸花は赤色でしょうが

〜♬.*゚
あなた

(電話……)

画面に表示された名前を見て、少し出るのを躊躇する自分がいた




このアイコンに、名前……




カナエ先輩だ

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