木造建築の神社、火の回りは当然早い
腕で口元を覆い、壁に反対の手を付いて、姿勢を低くする
煙で目が痛い
皮膚の表面がヒリヒリ熱い
ここに来て、私は重大な事を忘れていた
本殿には、普段鍵をかけているということ
鍵を取りに行く暇はない
何より、鍵を保管している部屋に続く廊下は天井が落ちてしまっていた
だから、近くに飾ってあった陶器で鍵を壊すことにした
ガシャン!と音を立てて、割れたのは陶器だった
割れた破片で、手や腕に傷ができる
次に私が手に取ったのは、何やら文字が書いてある紙が入った額縁だった
幅1m程の額縁の角で、今度は木造の扉を壊す
何度か叩くと亀裂が入り、人が通れるほどの隙間が生まれた
中には、変わらず刀が2本
鞘から抜いて中身を確認すると、近くの布に包んで持ち出した
その時、一気に絶望が押し寄せた
壁を破壊するのに時間がかかりすぎた
腕時計の時間では、もう20分が経過していた
でも、戻らなくちゃいけない
刀を持ち直し、ハンカチで口元を覆う
煙が目に染みて痛い
30cm前はもう見えない
壁を伝って、記憶を頼りに進むしかない
でも…………おかしい
さっきからずっと記憶でここがどこか分かっていたのに
ここがどこで、どう行ったら外なのかが分からない
一酸化炭素中毒か………頭がぼーっとしてきた
とにかく、どこでもいいから火の手から逃げないと
近くの角を曲がってみる
ミシ…ピキ、パキ………
………嫌な音が聞こえたと思うと、すぐそこの壁が倒れ…
私は足を挟まれ、動けなくなった
もはや、声を出すこともできなくなっていた
そしてさらに、頭上から嫌な音が聞こえた
メキッ……バキバキ!!ドサッ!!!
私はそこで、意識を失った────
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。