「じゃあ…少しまとめて見るね。」
「うん…」
杏美と中島君が同時にうなずいた。
・ 竜一は前日の部活で早く帰った。
・ その時、自分の携帯を見て急いで帰った。
・ 手紙に書いてあった謎の " E K " のアルファベット。
「これが今、分かっていること。他に何かある?」
「あ…俺。帰りに南雲先輩見ましたよ。」
「…は!?」
杏美が中島君の言葉に動揺して叫んだ。
「その時、部活着じゃなくて私服でした。」
(え…?じゃ、じゃあ、竜一は一旦家へと帰ったってことになる…?)
「南雲は1回家に帰ってから誰かと学校で待ち合わせてたとか?」
杏美が言った。
確かに。
その言葉はあっているかもしれない。
だとしたら…
「竜一は学校の方へ戻って行ったの?」
私は中島君に聞いた。
「はい、西の方向へ行ったので多分そうだと思いますよ。」
そうか…
キーンコーンカーンコーン
学校の朝のチャイムが鳴った。
「あちゃ~、そろそろ戻らないとね」
杏美が残念そうに言った。
「そうだね。この事は絶対に誰にも言っちゃダメだよ?」
「はい。俺は、南雲先輩が殺されたのなら絶対にそいつを捕まえる!」
「…な、中島君」
嬉しいな。
竜一にはこんなに良い後輩がいるんだな。
(まあ、私の後輩でもあるんだけどね)
今日の朝はそんな風に始まった。
そして、昼休み。
私と杏美が教室でお弁当を食べていると中島君が来た。
「先輩ー!」
って。
私と杏美は顔を合わせて中島君のところへ行った。
そして私達は学校の屋上へと移動した。
「どうしたの?中島君」
「実は、南雲先輩が放課後誰に呼ばれたか分かりました。」
「…は!?」
私と杏美は驚いて大声を上げてしまった。
「い、一体どうやって?」
「剣道部のマネージャーの同じクラスの伊野です。」
「え?小夜ちゃん?」
伊野 小夜ちゃん。
私とおんなじで剣道部のマネージャー。
人懐っこくて可愛いんだよ。
「はい。
いつもの部活で皆が練習している時、伊野がロッカーの掃除をしていたそうです。
その時、南雲先輩の携帯が鳴ったそうで気になってみるとある人からの着信でした。」
「その、ある人って?」
「南雲先輩の先輩。江藤 圭先輩です。」
「…え?江藤先輩…?」
「え?え?だ、誰それ?」
私はすぐに誰かが分かった。
でも、杏美は誰かわからないみたい。
江藤 圭 先輩。
私と竜一の剣道部の元先輩で今は大学生のはず。
「…元先輩?嘘でしょ?そいつがやったの?」
「分かりません。」
中島君がうつむきながら言った。
(そっか、江藤先輩の事は中島君知ってるんだ。)
じゃあ、江藤先輩が…?
あの優しい先輩…が…
- 卒業まで残り27日 -
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。