真緒と中島・小夜ちゃんが南雲家に行った日。
私は何をしていた?
それはね、初恋の相手とデートです!
電車で会ったあの人は何と!
江藤圭の友達でした。
この前、大学へ行った日に声をかけられこれまたビックリ!
そして、その人と今日はお出かけです!
念願のデート!
ひとり待ち合わせ場所で妄想を膨らませていると
「あ、杏美ちゃん。もう来てたんだね早いな~」
「あ、はい!楽しみすぎて早く来てしまって~っては!」
何この服装!
イケすぎでしょ!
春に合うその色。
そよ風に揺れる茶色の髪。
背も十分に高くて頼もしい背中。
最高すぎる…
「あ、そういえば杏美ちゃん」
「は、はい?」
「どこ行きたい?まだ場所までは決めてなかったよね」
「あ、それもそうだったような…どうしましょーか」
「「MMCのCDがある!」」
と私たちの周りにいた女の子達が騒いでいた。
最近、流行りのバンドMMCのCDが今日発売…!?
「たたた、(猪又)巧さん!あの店行きましょう!」
「MMCのCDだって!やば…」
と巧さんも興奮気味だった。
「巧さんも好きなんですか?MMC」
「ああ、なんか歌詞が良くてハマってんだよな~」
「わあ!偶然!私も最近ハマってて大好きなんです。」
「お、まぢ!じゃ、行こうか?」
「はい!」
巧さんと趣味が被ってて嬉しいな~。
えへへ。
「「うっわー!限定盤!」」
私と巧さんの言葉が被った。
(どど、どうしよう!買おうかな!?でも、今月お小遣いピンチー!うわぁ…毎回コンビニでチキン買ってるからお金が…とほほ)
「俺、買おうかな~杏美ちゃんは?」
「わ、私は、今月ピンチで…欲しいけど買えない…」
そしたら巧さんは少し考えてそのCDを取り言った。
「じゃあさ貸そうか?俺、CDを携帯とかに移せるんだけど?」
「え!ほんと!いいんですか!」
「ああ、杏美ちゃんも好きなんだろ?だから、いいじゃん」
「巧さん神!」
そして、そのCDを巧さんが買ってすぐにカフェに行き、パソコンでやってくれた。
「巧さんってどうしてパソコン持ち歩いてるんですか?」
「…あ、ああ。これね彼女からもらった大切なものなんだよ」
「か、彼女?巧さんって彼女いるんですね」
愕然とした。
ついさっきまで楽しかったものが硝子のように砕けて…
「…でも、もういないよ」
「…え?」
巧さんはうつむいて言った。
「亡くなったんだよ。事故で。」
「じ、事故…?」
「そ。ほんとなら一命を取り留めてたはずなんだ。でも、彼女は昔から身体が弱くてね、それで亡くなったんだ。」
「…ご、ごめんなさい。変なこと…」
「嫌いいんだよ。彼女は最後に言ってくれたんだ。『幸せになれ』って。」
「……ッ」
私バカだった…
自分だけ浮かれて…
巧さんはその彼女さんのことを誰よりも思ってる…私じゃ適わないよ…
後編へ続く。
~読者さんへ〜
ぜひ、真緒の親友の杏美の恋を応援してください!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!