「ふぁ~…眠い…」
朝、日曜日。
朝食のトーストを食べている。
「明日、学校に行ってその次が卒業か…はやいな~」
ピンポーン
「…誰。」
私がドアを開けると
「よ!真緒…って、なんだその格好…」
「…竜一か」
私は起きたばっかりでまだ髪もボサボサ、パジャマ姿だった。
「何か用なの?日曜日に」
「俺さ、親に言ったよ…。大気が亡くなったんだって」
「…は?」
突然のことに私は玄関で固まった。
「と、とりあえず、中に。」
「おう」
リビングの机に置きっぱなしの朝食を食べながら竜一に聞いた。
「…おばさんにどうやって言ったの?」
「あーうん。実はね」
南雲家。
『大気ー朝ごはんよ。私、今日パートに行かなきゃいけないのよ。』
「え?そーなの?」
『うん、だから皿洗いよろしくね』
「はー、だりぃ…」
『……ねえ』
「何?」
俺は朝ごはんを食べながら聞いてた。
『竜一…』
「…へ?」
『竜一が亡くなって結構経ったけどあんた、竜一にそっくりね。』
「ほりゃ~、ふはごはし?」
口にいっぱい詰め込んで言葉がなごむ。
『双子ね~。前はこんな似てなかったのに…大気、竜一にそっくりだわ。』
…なんだよ。
「俺、大気じゃねーし!竜一だし!」
『…は?』
「…てな感じで。」
「そうなんだ…」
少し呆れた…。
なんで、そこで意地張っていたのか分からないけどそれ言った後、おばさんがパートにすぐ行くとか。
(大気君…)
「まあ、そんな感じだったんだ。」
「そう。」
「なあなあ、真緒!」
「ん?」
「学校行きたい。学校に行って剣道してー。」
「いいんじゃない?行く?」
「え?まぢで?」
「うん、だって鍵預かってるし…ほら」
すぐ側にあった鍵を見せた。
そしたら、竜一がキラキラした目でこちらを見てきた。
(…犬みたい)
「じゃあ、いこーぜ!」
「はいはい。ちょい、着替えてくるわ。待ってて」
「は~い」
そして、着替えた後私達はさっそく学校へと向かった。
「うぉー!ちょう久しぶりだあ」
テンションが上がっている竜一は手招きして剣道部の部室へ行った。
「あ、俺の竹刀」
「あ、うん。竜一の竹刀、飾ってるんだよ。」
「そ~なんだ。すっげー!」
私、ここで小夜ちゃんから聞いたんだっけ?
『江藤先輩に電話で呼び出されてた』
「…あれ?」
どうして、竜一は先輩から呼ばれてるの知ってるはずなのにあの日、自分が出なかったの?
竜一は、誰かと待ち合わせとかしてると絶対にそれを破らない。
なのになんで…
「みろよ!俺のロッカー!汚ぇ」
「ずっと、そのままだったからね」
私はその事を聞こうとしたのをやめた。
なんでって?
いま、その話をしたら竜一はまた暗い顔になる。
今は、楽しい時間を大切にしてほしいし。
だから、私はその事に関してのことを言うのをやめた。
- 卒業まで残り1日 -
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。